不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

大規模修繕費(外壁、屋上防水)は、修繕費と資本的支出のどちらになる?

所有マンションの(外壁、屋上防水)大規模修繕(築14年)を予定しています。

約1200万円で銀行借入を予定。

この費用は現況回復ということで一括償却可能と認識してよろしいでしょうか?

実質的に維持管理のための支出なのか価値を増加するものなのかによって変わります。

支出した工事が修繕費に該当すれば、その年に全額必要経費になります。

しかし、資本的支出に該当すればその年に全額必要経費にすることはできず、工事した資産(例えば建物)と同じ耐用年数で支出した年から減価償却することになっています。

修繕費とは、通常の維持管理や修理のために支出されるものです。

資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価額を増加させたりする部分の支出は資本的支出とされ、修繕費とは区別されます。

支出する金額で判断するものではありません。

したがって、工事費用で1,200万円かけたとしてもその金額だけで修繕費か資本的支出かを判断せず、実質的に維持管理のための支出なのか価値を増加するものなのかを検討する必要があります。

1.外壁塗装工事について

通常の外壁塗装は、それだけで当初の耐用年数を延長させたり、資産の価値を増加させたりするものではないと考えられます。

外壁塗装工事は、建物の通常の維持または管理に必要な修繕そのものか、その範ちゅうに属するものであるから、修繕費とするのが相当である。
また、外壁天井防水美装工事は修繕工事に伴う補修面の美装工事であって、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではないことが認められることから、これに要した費用も修繕費とするのが相当である。

平成元年10月6日採決事例

したがって、塗装材として特別に上質な材料を用いていなければ、修繕費に該当するものと考えます。

ただし、外壁をタイル張りにするなどを行った場合の工事費用は通常の維持管理を超えるものになるため、その部分の工事は資本的支出になると考えます。

2.屋上防水工事について

屋上防水工事については外壁塗装工事と比べて、修繕費に該当するか資本的支出に該当するか微妙な判定になることが多いです。

屋上防水工事をするにあたり、雨漏りがあってそれを補修するために行ったものであれば、修繕費に該当する可能性が高くなります。

本件工事は、屋上部分に漏水が発生するなどしたことから屋上全体に防水工事を施工したものであるが、一般的に鉄筋コンクリート造等の物は雨漏りがいったん発生すると木造の建物と異なり雨漏りの経路が分かりにくく完全に修理することは困難だといわれており、また本件工事が建築から22年経過して初めて施工された防水工事であることを考慮すると、請求人が本件工事を屋上全体に施工したことは本件建物の維持管理のためやむを得ない措置であったと認められる。
平成11年10月15日裁決

つまり、雨漏りの経路が特定しにくく完全に雨漏りを防止するためには、屋根全体に行った防水工事をする方法以外ない場合には、修繕費と判断できる場合があるということです。

なお、雨漏りの補修するために行った工事であっても、物理的に付加した「屋根カバー工法」による工事が資本的支出と判断された裁決(平成13年9月20日)がありますので、注意してください。

雨漏り補修をするために防水工事を行ったものでなければ、その工事をすることで(当初の)耐用年数が長くなったり、価値が増加したりしたかどうかです。

3.区分が不明なものについて

判断がつきにつくいのであれば、下記の形式基準を使う方法もあります。

「区分不明なものは、60万円未満または取得価額の10%以下ならすべて修繕費」

これは、実質的に修繕費か資本的支出かが判断できない場合は、金額で判定することが認められています。

支出した金額が、60万円未満又はその固定資産の前期末時点の取得価額の10%以下である場合には修繕費に該当することになります。

前期末時点の取得価額とは、取得時の取得価額に前期末までの資本的支出の金額を合計した金額になります。

2020/01/09

不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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