台風被害…大家の賠償責任は?火災保険Q&A
ここ数年、全国各地で大規模な自然災害が頻繁に発生している印象があります。
最近はとくに、台風や集中豪雨による甚大な被害が起こっています。
そんななか、2019年10月11日土曜日から10月13日月曜日にかけて日本列島を通過した台風19号(通称:ハギビス)によって、千曲川や九十九川など現在確認されているだけで59の河川が決壊し甚大な被害がもたらされました。
今回は、賃貸物件において台風による被害が生じた際に、どこまで保険で補償がされるのか、また大家の責任は問われるのかなど、具体例をあげながら解説していくとともに、大家としてとるべき対策について、全2回に分けて考えていきたいと思います。
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自然災害と保険について
今回のような超強力な台風が日本列島を通過すると、不動産投資家としては自宅だけでなく保有している投資物件の被害状況が気になるところかと思います。
台風による被害は「自然災害」なので、損害が発生したとしても自然相手に賠償請求はできないので火災保険に加入していなければ復旧費用は原則として実費負担です。
被害状況によっては復旧にかなりの費用がかかるため、これからの賃貸経営については火災保険の加入が必須といっても過言ではないでしょう。
ちなみに、投資物件にかけた火災保険料については不動産投資の経費として計上することが可能です。
ゴルフ練習場の鉄塔が倒れてきても賠償請求できないの?
今回の台風19号の被害をニュースで見て印象的だったのが、ゴルフ練習場(いわゆる打ちっぱなし)のネットを支えている鉄塔が台風の風で倒れて、付近の住宅を押しつぶしている状況です。
この映像を見た方の中には「もし自分の家や投資物件が同様の被害を受けていたら、損害賠償はどうなるんだろう」と思った方も少なくないのではないでしょうか。
これから経営者側と被害者側で話し合いがもたれることが予想されますが、一般論としてこのような状況が発生した場合、住民側は経営側に対して損害賠償請求できるのかが重要な論点です。
自然災害か瑕疵か
実はゴルフ練習場の鉄塔問題は、ほかの台風被害における損害賠償問題すべてに通じる重要な問題です。
結論からいうと、鉄塔の倒壊が台風によるものなのか、それとも経営者側の「過失(落ち度)」によるものなのかによって賠償責任は大きく異なってきます。
台風のような自然災害については、原則として誰に責任があるという問題ではないので基本的には被害者自身が加入している火災保険の範囲で補償を受けるしかありません。
また、鉄塔の老朽化や強度不足など何らかの過失があったとすれば、鉄塔が倒れたことについて経営者側にも責任が発生するため、損害賠償請求が認められる可能性が出てきますが、過失を立証することは簡単ではないですから、裁判をするとしてもまずは自身の保険で対応することになるでしょう。
このように、台風被害は大原則として「自然災害」なので復旧費用は自分自身の火災保険で対応しなければならず、ほかに賠償を求めることは極めて難しいのです。
こんな場合に保険はきく?台風被害と保険Q&A
台風被害における火災保険の重要性がわかってきたところで、具体的にどんな場合に保険が適用できるのかについて解説していきたいと思います。
ただし、保険適用の最終的な判断は保険会社各社によって異なりますので、あくまで一般論として捉えていただき、個別の案件については直接保険会社にお問い合わせください。
東京でも世田谷区を中心に床上浸水被害が多数発生していることからも、保有している物件が1階や地下、半地下の場合は床上浸水によるリスクが高いといえます。
賃貸物件で床上浸水した場合、大家はどこまで賠償しなければならないのでしょうか。
A.原則として入居者に対して賠償責任はなく、修理費用は自身の火災保険か実費負担になります。
床上浸水すると床や壁紙を張り替えるまでは、まともに寝泊まりすることができなくなります。
また、賃借人の家財についてもほとんどが水没してしまうため、大家に対して補償を求めてくる入居者も少なくありません。
この場合、考え方としては冒頭でお話ししたゴルフ練習場の鉄塔と同じで、基本的に自然災害のため大家に責任はなく、入居者の家財やホテル代などについては入居者自身が加入している火災保険を適用してもらうことになります。
ただし、保険会社によって水災による家財の補償については、限度額の10%程度までしか出ないといった制限がかかるケースもあるため注意が必要です。
火災保険で手厚い補償が受けられないと、賃借人から費用を負担してほしいなどの相談をされることもありますので、賃貸借契約を結ぶ際には、賃借人に災害リスクに対する補償内容がよい保険に入ってもらうとよいでしょう。
また、床や壁紙の張り替え費用については、オーナー自身で火災保険に加入していれば補償対象となるケースが多いですが、無保険の場合はほかに適用できる保険がないため、オーナー自身が復旧費用を実費で負担する必要があります。
投資用の区分マンションで雨漏りが発生した場合、雨漏りの復旧工事費用や濡れた家財、壁紙等の補償はどうなるのでしょうか。
A.復旧費用は管理組合、もしくは管理組合が加入している保険で補償されます。
マンションで雨漏りというとあまりイメージが湧かないかもしれませんが、見た目は頑丈に見える区分マンションでも屋上防水については劣化しているケースがよくあるため、今回のような台風で大雨が降ると階下に雨漏りすることがあるのです。
雨漏りの復旧費用については、区分所有者全員で組織する管理組合の管轄である「共用部」に該当するため管理組合の負担によって復旧工事を行います。
入居者の家財の被害については、基本的に入居者自身の家財保険から賠償を受けることとなり、壁紙の張り替え費用については管理組合、もしくは管理組合が加入している火災保険から補償が受けられる可能性が高いです。
下記に詳しくまとめてみました。
入居者の家財の補償…入居者自身の火災保険
壁紙の張り替え費用(専有部)…管理組合又はその火災保険
このように区分マンションで雨漏りが発生した場合、すぐに修理をして雨漏りが改善すれば基本的に大家の実費負担となる項目は原則としてありません。
ただし、雨漏りの改善が遅れると賃借人から賃料の減額などの相談をされる可能性がありますので、雨漏り発覚後はできる限り早く直してもらうよう管理組合に働きかけることが重要です。
風速が強い台風が来ると、マンションのベランダに飛来物がぶつかって窓ガラスが破損するケースが多々あります。
では、窓ガラスの張り替え費用はどのように補償されるのでしょうか。
A.大家の火災保険で補償されます。入居者の保険は使えません。
台風の飛来物によって窓ガラスが破損した場合は、大家自身が加入している火災保険によって修理費用が補償されます。
なかには入居者の火災保険を使って修理をしようと考えている方もいますが、入居者の火災保険で補償されるのは「入居者の家財」であり、窓ガラスは家財ではありませんので補償されません。
よって、大家自身が火災保険に加入していなければ窓ガラスの張り替え費用は実費となります。
飛来物の所有者を特定し、さらに過失を立証して損害賠償請求することは極めて難しいので、現実的には火災保険に加入してリスクヘッジしておくことをおすすめします。
後半 では、大家としてやっておくべき台風対策などについてお話しします。
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