危険!やってはいけない譲渡所得の節税策
前回、譲渡所得の節税策の大枠について説明しました。
今回は、譲渡所得の節税策のうち間違った節税策を解説していきます。
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同族間の取り引きには注意
譲渡所得は、譲渡収入-(取得費+譲渡費用)の算式で計算していきます。
譲渡収入は、売却金額なので決まった金額が入ります。
取得費は、購入金額から減価償却費累計額を控除したものなので、こちらも決まった金額が入ります。
残るは、譲渡費用です。
この金額を増やせれば、譲渡所得は減ることになります。
しかし、譲渡費用は、譲渡に直接要した費用です。
仲介手数料、売買契約書の印紙代などです。
そこで、自分で会社を立ち上げて、その会社が売却コンサルティング費用を徴収するということで譲渡費用を大きくしようと考える方がいらっしゃいます。
これは危険なやり方です。
所得税や法人税には、「同族会社の行為計算否認」という規定があります。
簡単に説明すると、同族間の取り引きは、関係者同士が金額や内容をいかようにも調整できるので、それによって所得税や法人税が不当に減少する場合には、税務署が否認できるというものです。
絶対に否認されるということではありませんが、少なくとも下記の立証でできないと譲渡費用にするのは難しいです。
・その成果物を提出することが可能か。
・その対価が世間一般から見て妥当かどうか。
・同族会社でなくても、その費用をかけて依頼するものか。
リスクが高い節税策…同族法人に安く売ればいい?
所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得として39.63%の税率で課税されます。
短期譲渡所得を免れたいといって、同族法人に対して低い金額で売却をしてもよいですか?
という質問を受けます。
「時価の2分の1以上で売却すれば問題ないと聞いた」という声もよく聞きます。
これは正しいのでしょうか?
個人→買主という取り引きを個人→法人→買主
という売買をするということを考えているわけです。
個人から法人への売買金額を少なくすれば、短期譲渡所得は少なくなります。
法人から買主への売却で税金が取られても、法人税率が、個人の短期譲渡の税率よりも低いことで節税ができるということです。
個人の課税と法人の課税で整理してみます。
個人への課税の検討
所得税には次の規定があります。
著しく低い価額の対価として次の額による譲渡(法人に対するものに限る。)により個人の有する譲渡所得の基因となる資産などの移転があつた場合には、その者の譲渡所得の金額などの計算については、その事由が生じた時の時価相当額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
次の額とは
その資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする。
つまり、売買金額が時価の2分の1以上であれば、その金額で売却したとしても、譲渡税は発生しないのが原則になります。
しかし、気をつけなければならないのが、前述した「同族会社の行為計算否認」の規定です。
時価の2分の1以上の対価による法人に対する譲渡であっても、その譲渡が「同族会社等の行為又は計算の否認」の規定に該当する場合には、時価で売却したものとみなして課税されることになるのです(所基通59-3)。
時価以下で売却した場合には、否認されるリスクがあるということです。
法人への課税の検討
法人の課税は、有償又は無償を問わず、利益を得たものに課税がされます(法人税法第22条第2項)。
時価よりも低い金額で購入した場合には、(時価金額-売買金額)に相当する金額が法人が利益を得ているということで、その金額を受贈益と認識して、課税が行われます。
通常、第三者間との取り引きの場合、その売買金額を時価と考えるので、受贈益を認識することはほとんどないのですが、同族関係の場合には、売買金額を容易に調整できる点を鑑みて、厳しく時価との乖離がないかを見られるのです。
つまり、時価以下で売却したとしても、時価との差額に対して、法人税が課税されることになります。
ただし、この場合、法人から買主に売却(転売)する際には、時価と転売金額との差額にのみ法人税がかかることになります。
また、法人の株主が、売り主個人以外に存在する場合には、受贈益が認識されることによって、売り主以外の株主の株価が上昇することがあります。
その場合、売り主個人から、売り主以外の株主に贈与があったものとみなして、贈与税課税が行われる可能性があります。
時価以下で売却しても、法人税や贈与税が課税されるリスクがあるということです。
結局課税されるのであれば、同族会社へ売却する意味がないですし、登記費用や不動産取得税が無駄になってしまいます。
まとめ
- 同族法人を使った節税策は危険!
- 同族会社だからできる行為や金額は否認のリスクあり!
- 同族会社への売却は時価が鉄則!
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