不動産投資コラム

希望通りのリフォームができるか?を見極めるコツ

一級建築士市村 崇
希望通りのリフォームができるか?を見極めるコツ

リフォームやリノベーションを前提に、既存住宅を購入するケースでは、購入時に「希望通りの工事ができるか?」が住宅購入のキーポイントになります。

実際の家を見てから購入意思決定ができる既存住宅ですが、「見るポイント」を逃すと、のちに工事費用が高額になったり最悪なケースでは希望通りの工事ができない…という事態も発生しますので注意が必要ですね。

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「リフォーム」と「リノベーション」の違いとは

話を進める前に「リフォーム」と「リノベーション」の違いを説明しておきます。

一般的なリフォームはReFormですから、“形を戻す”つまり壊れたものを直すことを指します。また、壁紙を張り替えたり、設備を一式交換する(例えばキッチンを交換)などもリフォームです。言い換えれば、「お化粧直し」の意味でも使われます。

一方、最近耳にする「リノベーション」は、建物の性能向上を図るために実施します。
例えを言えば、断熱性能を良くするということでしょうか。

こちらは建築全般の幅広い知識やスキルが求められる「建築行為」ですから、依頼先をきちんと選定しないとトラブルに発展することが多いですから、気をつけましょう。

「リノベーション」で間取り変更できる?

リノベーションでの要望で多いのは間取り変更です。
「壁をとって1部屋にしたい!」といったものですね。

構造的な話では、柱で建物を支える方式か、壁で支える方式かの2種類があります。
木造住宅で言えば、「軸組工法(在来)」「壁式工法(ツーバイ)」ということです。

基本的には、間取り変更は「軸組工法」のほうに対応力があり、ツーバイは取れない壁が存在すると言われていますが実際はどうでしょうか?

昔ながらの在来工法は現在では少なく、多くはツーバイと同じような構造をしています。具体的には「耐力壁」という強い壁を配置し、地震や風圧などの水平力に抵抗するように考えられています。耐力壁は撤去できませんから、一概に軸組工法が有利とはいえません。

特に品確法※制定後の、耐震等級2や3などでは壁量がかなり多くなりますから、簡単には撤去できない壁が多いと考えたほうが良いでしょう。

※品確法:住宅の品質確保の促進等に関する法律のことで、住宅性能に関する表示基準や評価制度、住宅紛争時の処理体制を整備、また新築住宅の請負契約・売買契約における瑕疵担保責任について特例などを制定し、住宅の品質確保と購入の促進、紛争時の迅速で適正な解決を図ることを目的としている。

構造の図面ですが、着色されている壁は耐力壁で撤去できない

マンションでも同様なことが言えます。
RC(鉄筋コンクリート)造では、柱の形がわかるものと、柱がない見取り図がありますね。
柱がない建物は、壁で構造を考えていますから、こちらも壁撤去は難しいと考えたほうが良いです。

柱で支えるタイプの建物

壁で支えるタイプの建物

水回りのリフォームやリノベーションはどこまでできる?

水回りリフォームに重要な配管
もう一つの要望でよくあるのは、水回りのリフォームやリノベーションですね。
マンションでは、管理規約に水回りの配置を変更してはいけない(理由は、下の階への排水音対策です)というケースがありますので、規約の確認が必要です。

また、排水管は水勾配と言って、流れる方向に配管を傾けなくてはいけませんから、極端な位置変更も厳しいケースが散見されます。
このあたりのジャッジは専門的な知識がないと判別がつきづらいので、物件購入の前にきちんと専門家に確認を取ることを推奨します。

戸建てのケースでは上記のような規約はないですから、ある程度自由に位置変更は可能ですが、木造住宅の場合水回り周辺の構造劣化が予想されます。
特にタイル貼りの昔のタイプの浴室は、水や湿気が壁の内側に入り込み、構造が腐朽していることも珍しくはありませんから、このような場合では予想以上の費用がかかってしまいます。

雨漏れしていないかも要チェック

雨漏りしていないかも要チェック
また、雨漏れしていないかどうかも費用増に直結します。

被害が甚大な場合には構造を取り換えなくてはいけません。当初予定していた費用では足りずに思わぬ出費になりますから、雨漏れ有無を確認することが重要です。
一般の方では、なかなか判別がつきづらいので一番いいのは専門家に相談するのが近道です。

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市村 崇

一級建築士

市村 崇

一級建築士

10年間で500棟以上の施工管理を行う。現在は(社)住まいと土地の総合相談センター代表理事として、多数のクライアントの相談に乗り厳しい目で現場を検査・インスペクションしている。

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