不動産投資コラム

木造?鉄骨?RC?構造別のお金の特徴

2020/03/09
行政書士棚田 健大郎
木造?鉄骨?RC?構造別のお金の特徴

前回は、構造上のメリット・デメリット について解説してみました。
構造については、それぞれメリットとデメリットがあるため、不動産投資で考えた場合は、自分自身の「投資スタイル」によって、選ぶべきものが変わってくるでしょう。

そこで第2回目では、投資スタイルとのマッチングを検討する際に重要となる、構造ごとの「金銭面の特徴」について解説していきたいと思います。

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金銭面における特徴

構造ごとの金銭面における特徴をまとめると、以下の通りです。

木造の特徴

やはり他の構造に比べると、圧倒的に「価格が手頃」という点があげられます。
サラリーマン投資家でも手軽に1棟ものの大家になることができます。
戸数に対する費用対効果がよいため、価格が高い分譲マンションのワンルームに投資するよりも、一気に投資規模を拡大することが可能です。

安く購入できるということは、安い家賃で貸せるということでもあるため、夏場など入居者が決まりにくい時期に、思い切って家賃を値引きするといった対策も立てやすくなるでしょう。

また、法定耐用年数が22年と非常に短いため、「減価償却のスピード」が早く、短期的には節税効果が高くなります。

鉄骨造の特徴

価格については、木造には劣るものの、「プレハブ工法」や「ユニット工法」によって工期を短縮できるため、ある程度のコストダウンが可能です。減価償却のスピードも、木造と鉄筋コンクリートの中間で34年と、シミュレーションを組みやすい点も魅力でしょう。

また、鉄骨であれば賃貸募集をする際に「マンション」と表記できるため、マンション限定で探す人が多い昨今においては、客付に大きくプラスとなります(軽量鉄骨の場合はアパートやハイツと表記する場合もあります)。

鉄筋コンクリート(RC造)の特徴

一番コストがかかるものの、耐用年数が47年と非常に長く、地震や火事などにも強いため、投資物件として非常に安定している点が特徴です。ゆっくり減価償却が進むため、中長期的な目線で物件を保有しやすいというメリットもあります。

建築コストだけで考えれば、ほかの構造よりも高いのは当然ですが、その分メンテナンス費用や修繕費用などについては、抑えられる可能性があります。

また、最近は地震が多いこともあり、賃貸募集の際に「鉄筋コンクリート」のマンションを希望する人が増えているため、木造よりも家賃が割高だったとしても、客付がしやすく空室が生じにくいという面もあるでしょう。

減価償却が投資スタイルに与える影響とは?

どの構造の物件に投資するのか判断する際に、とても重要なポイントになるのが「減価償却」です。先程も少し触れましたが、投資スタイルに大きく影響するため、もう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。

木造の減価償却スピードについて

木造の法定耐用年数は22年と、鉄骨の34年、鉄筋コンクリートの47年に比べると非常に短いです。法定耐用年数が短いということは、それだけ減価償却のスピードが早いということでもあります。

具体例

例えば、同じ1億円の物件を購入した場合の、年間の減価償却費をシミュレーションしてみます。

木造の場合:
 1億円×0.046(木造の減価償却率)=460万円

鉄筋コンクリートの場合:
 1億円×0.022(鉄筋コンクリートの減価償却率)=220万円

このように同じ1億円の物件を購入したとしても、年間で経費として計上できる減価償却費は、木造のほうが倍以上に大きいのです。さらに、中古の木造物件となると、さらに減価償却期間が短くなるため、短期での償却が可能になります。

計上できる経費が大きいということは、その分、家賃収入による不動産所得を圧縮することができるため、大きな「節税効果」があるのです。
よって、木造の場合は、短期的なキャッシュフローは黒字になりやすいというメリットがあります。

減価償却期間は短いほうがよいのか

減価償却は短いほうがよいのか
木造は減価償却が早いため、減価償却費が計上できる間については、キャッシュフローが安定して黒字になる可能性が高いのですが、反対に減価償却が終わってしまうと、一気に経費がなくなってしまうため、いきなり高い税金が課税されてしまう可能性があります。

例えば、新築で木造アパートを購入した場合、減価償却期間は22年です。
よって、築22年まではそれなりの減価償却費を経費として計上できるため、不動産所得を抑えることができ、キャッシュフローが安定します。

ところが、23年目以降になるとそれまで計上できていた減価償却費が突然0になるため、一気に高い税金が課税されてキャッシュフローが赤字になるリスクをはらんでいるのです。

そのため、木造物件を運用する場合については、減価償却が終わる年を事前に確認して、それまでに売却して再投資するなどの「出口戦略」を先に固めておく必要あります。

反対に、鉄骨や鉄筋コンクリートであれば、短期での減価償却費は低くなるものの、長期的に安定して減価償却ができるため、長く保有を考えて投資をする場合に向いていると言えるでしょう。

構造を選ぶ際の判断基準:向いている投資家のタイプとは

さて、それぞれの特徴がすべてわかったところで、最後にどんな投資家がどの投資に向いているのかまとめてみました。

木造に向いているタイプ

  • 一気に保有戸数を増やしたい
  • 短期的に経費が欲しい
  • 減価償却が終わる前に売却を考えている
  • 賃貸管理を管理会社に委託する予定である

鉄骨に向いているタイプ

  • ある程度の予算がある
  • 将来的に大規模なリフォームを考えていない
  • 中期的な保有を視野に検討している

鉄筋コンクリートに向いているタイプ

  • 区分マンションの購入を検討している
  • ワンルームマンション投資をしてみたい
  • 減価償却が終わる前に売却を考えている

およそこのようなイメージになります。
あとは、構造上の特徴も含めて自分の好みにあった物件を購入すればよいでしょう。

おわりに

今回は、全2回に分けて構造ごとの特徴について、構造面と金銭面の2つの角度から検証してみました。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、どの物件に投資をするのかについては、今回ご紹介した情報を総合して決定することが重要です。

特に減価償却については、あまり不動産会社が教えてくれないため、キャッシュフローをシミュレーションする際には、税金も考慮に入れたうえで赤字にならないよう十分注意しましょう。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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