不動産投資コラム

登記簿謄本で不動産投資のリスクが分かる!/前編

2018/08/16
司法書士宮﨑 辰也
登記簿謄本で不動産投資のリスクが分かる!/前編

相続で不動産の名義を変更する場合や、投資用不動産やマイホームを購入する際に不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を見る機会があります。
この登記簿謄本には何が記載されていて、その内容からどんなことが分かるのでしょうか?そして、どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか?
今回は、不動産投資の際に注意すべきポイントを交えて解説します。

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不動産登記の役割

不動産の名義変更登記(不動産登記)は、大切な財産である土地や建物の所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載します。
これを一般に公開することにより、権利関係などの状況が誰にでもわかるよう、取引の安全と円滑をはかる役割をはたしています。

MEMO
「登記事項証明書」と「登記簿謄本」は何が違う?

かつて、不動産の登記簿は管轄法務局内に紙で保管されていました。法務局は請求のたびにその内容をコピーし、法務局の認証文を入れたものを発行していて、これを「登記簿謄本」と呼んでいました。
しかし、コンピューター化によって、現在では不動産の登記簿も紙ではなくデータとして保存されており、その内容が紙に印刷される形で発行されます。
こうして発行される証明書を正式には「登記事項証明書」と呼びます。しかし、現在でも「登記簿謄本」と呼ばれることが多く、我々司法書士の間でも通常は「登記簿謄本」と呼んでいます。

不動産登記のタイミング

不動産登記は、建物を新築した時はもちろんですが、それ以外にも登記されている内容に変更が生じた場合には変更の登記手続きが必要になります。

登記手続きが必要な例

・不動産を購入した場合
・金融機関の住宅ローンを完済した場合
・住所を変更した場合
・贈与や相続によって不動産を取得した場合

不動産登記には、その不動産の所在や大きさなどの基本情報が記載されている「表題部」と所有権や抵当権などの権利が登記されている「権利部」があります。


法務省HP(様式例:2建物)

表題部に関しては、建物が建った後1ヵ月以内に表示に関する登記をしなければなりません。つまり、表題部の登記は義務です。
これに対し、権利部に関する登記は、義務ではありません。そのため、登記を怠ったとしても罰則を受けるものではありません。
ただし、登記をしておかないと自分が不動産の所有者であることを第三者に主張することができず、第三者に売却したり新たに担保に入れることができなかったりといったさまざまな問題が起こります。
義務でないとはいえ、やはり手続きはしておいたほうがいいでしょう。

登記事項証明書(登記簿謄本)を取得するには?

登記記録のコンピューター化によって、どこの法務局でも全国の不動産の登記事項証明書を取得することが可能となりました。
そのため、わざわざ不動産の所在地を管轄する法務局へ行く必要がなくなり、ご自身の最寄りの法務局に行けば、調べたい物件の登記事項証明書を取得することができます。

コンピューター化されたとはいえ、紙で保管されていた頃の情報がすべてデータ化されたわけではなく、コンピューター化される以前の古い登記記録は紙のまま保管されていることがあります。
そのため、不動産の古い情報を確認するためには、もともとの紙で保管されている情報を管轄法務局から取り寄せる必要があります。

登記事項証明書の取得方法としては、法務局の窓口で取得する方法とオンラインで請求する2つの方法があります。

法務局の窓口で取得する方法


現在、登記簿がオンライン化されていますので、最寄りの法務局で全国の不動産の登記簿を取得することができます。
窓口に備え付けられている請求用紙に不動産の所在・地番・家屋番号等を記入し、受付窓口に提出して取得します。
また、多くの法務局でタッチパネル式の証明書発行請求機が設置してあります。
画面の指示にしたがって必要事項を入力していくことで登記簿を取得することができるうえ、タッチパネル式の機械で請求したほうが紙で請求するより早く発行してもらえます。
窓口で登記簿を請求する場合の費用については、1通600円となります。
その他、現在の所有者などの権利関係だけ知りたいという場合は、登記事項要約書というものがあり、こちらは1通450円となります。

オンラインで請求する方法

法務局の窓口で取得するほか、ご自宅や会社のパソコンからインターネットを利用してオンラインで登記簿を請求することができます。

<登記・供託オンライン申請システム>

オンラインで請求する場合、郵送で証明書を受け取る場合は1通500円、オンラインで請求し最寄りの法務局で受け取る場合は1通480円と、窓口で請求するより安くなっています。
手数料は、インターネットバンキングやATMで納付することができます。
画面の操作に従って必要事項を登録することにより、電子署名も要せずに登記事項証明書を請求することができます。

上記のオンラインで登記事項証明書を請求する以外に、土地・建物の登記内容だけ確認したいという場合に、登記情報提供サービスを利用することもできます。

<登記情報提供サービス>

これは、オンラインで請求し、そのままプリントアウトするという方法です。
一時利用として登録すれば、登録してすぐに利用することができますが、複数の登記事項証明書を取得しようとする場合は、一回一回登録し直さなければなりません。継続利用として登録する場合には、IDを発行してもらう必要があり、利用できるようになるまで時間がかかります。
手数料も1通335円と安くなっておりますが、法務局の証明印がなく、提出先によっては、登記情報ではなく登記事項証明書を要求される場合もありますので注意が必要です。

後編では、登記事項証明書(登記簿謄本)の読み方と、不動産投資の際に注意するべきチェックポイントをご紹介します。

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宮﨑 辰也

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宮﨑 辰也

司法書士

平成28年、フロンティア司法書士事務所を開設。不動産に関する登記から家族信託、相続手続き、会社登記に至るまで幅広い分野に迅速丁寧に対応。

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