不動産投資コラム

登記簿謄本で不動産投資のリスクが分かる!/後編

司法書士宮﨑 辰也
登記簿謄本で不動産投資のリスクが分かる!/後編

後編のこの記事では、登記事項証明書(登記簿謄本)の読み方と、不動産投資のリスクを回避するために注意するべきチェックポイントをご紹介します。

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登記事項証明書(登記簿謄本)には何が書いてあるの?

不動産登記は、次のように分かれています。
売買契約書等に不動産を表示する場合は、この表題部を記載します。

【表題部】

表題部には、不動産を特定したり、その不動産がどこに所在しているのか、大きさや構造、使用目的などの基本的な情報が記載されています。
表題部にする登記を、「表示に関する登記」と呼びます。

土地であれば、その所在、地番、土地の現況や土地の面積

建物であれば、所在、地番、家屋番号、種類、構造や床面積などが登記されています。

また、マンションなどの区分建物については、その建物の敷地に関する権利(敷地権)が併せて記載されている場合があります。
この敷地権についての権利関係は、区分建物の登記記録に同時に記載されるようになっています。

【権利部】

権利部には、不動産の所有者の氏名、住所、抵当権や根抵当権の権利などが記載されており、さらに甲区と乙区に分かれます。

権利部の甲区欄には、所有者に関する事項が記録されています。
その所有者は誰で、いつ、どのような原因(売買、贈与、相続等)で不動産を取得したかが分かるようになっていて、共有者がいる場合にはその方の持分も記載されます。
つまり、現在の所有者を確認するには、この権利部の甲区欄を見れば分かります。
さらに、差押え・仮差押えの登記も甲区欄に記載されます。

権利部の乙区欄には、抵当権、根抵当権や賃借権など所有権以外の権利に関する事項が記録されています。
たとえば、住宅ローンを組んでいて、抵当権が設定されていれば、この乙区欄を見れば、誰が債務者で、どこから、いくら借りているのかが分かります。

【共同担保目録】

権利部の下に、共同担保目録という欄が記載されていることがあります。

この共同担保目録には、当該不動産以外の不動産も同じ抵当権等で担保されている場合に、その担保されているすべての不動産が表示されます。
これを確認することにより、抵当権等の担保権を抹消するときに、抹消すべき物件の漏れを防ぐことができます。
法務省HP(様式例:1土地・2建物・3建物(区分))

こんな場合は要チェック!

購入を検討している不動産の登記事項証明書を確認したときに、次のような文言が記載されている・状況である場合には、特に注意が必要です。

1.売主が相続した不動産の名義が、亡くなった方のままの場合

不動産の所有者に相続が発生した場合、不動産を引き継ぐ方の名義に変更する登記手続きが必要になります。
たとえば実家を相続したが、相続人はすでに自分の家を持っていた場合、使い道がないから実家の売却をしたいと思う方も少なくありません。
しかし必要な手続きをせずに、名義がそのままになっているということも多々あります。
第三者に売却する場合には、亡くなった方の名義のままでは売却できませんので、必ずいったんは相続人名義に変更する必要があります。
そのため、購入したい不動産の名義人が亡くなった方のままだった場合、きちんと相続登記の手続きをしてもらえるのか確認が必要です。

2.差押・仮差押の登記

不動産に対する差押・仮差押の登記とは、不動産の所有者が住宅ローンや税金等の支払いを滞納した場合、その債権者が第三者に売却されるのを防ぐため、または競売の申立てをした際になされる登記です。

差押・仮差押の登記がされた不動産をそのまま購入すると、売主が債権者に滞納金を全額返済しなければ、最終的にその不動産は強制的に売却され、自分の名義に移したとしても取得した所有権を失うことになります。
そのため、差押・仮差押の登記を事前に抹消できるのか、もしくは売却代金で滞納金を支払い名義変更の登記と同時に抹消できるかの確認が必要です。

3.買戻特約の登記

買戻特約の登記とは、売買契約にもとづく所有権移転登記と同時になされる登記です。
あらかじめ定められた買戻期間内に、買戻代金と契約費用を買主に支払うことによって売買契約を解除し、不動産を買い戻すことができるという制度です。
この買戻特約の登記を抹消せずに所有権の移転登記を受けた場合、買戻特約の権利を行使されてしまえば、せっかく取得した所有権を失ってしまいます。

4.仮登記

「全部事項証明書(抹消された事項を含む、これまでの登記の履歴すべてが記載された登記事項証明書)」の甲区欄に、「所有権移転請求権仮登記」や「条件付所有権移転仮登記」といったような仮登記がなされていることがあります。
これは、登記申請の時点ではまだ、ある条件が整っていなかった場合や、将来の本登記の順位を保全するためにあらかじめしておく登記のことをいいます。
ご自身が所有権の移転を受ける前に、すでに第三者の仮登記がなされている場合、仮登記権利者が権利を行使した場合や条件が整った場合には、仮登記の方が優先され、所有権を失うことになりますので、注意が必要です。

まとめ

以上のように、購入や売却を検討している不動産がある場合には、大きなお金が動きますので、事前に登記事項証明書などを調べておく必要があります。
登記事項証明書を確認することにより多くの情報を得ることもできます。
ただ、登記事項証明書も見ても見方が分からなかったり、難しい権利が記載されていたりする場合もありますので、その際にはぜひ専門家に問い合わせてみてください。

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宮﨑 辰也

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宮﨑 辰也

司法書士

平成28年、フロンティア司法書士事務所を開設。不動産に関する登記から家族信託、相続手続き、会社登記に至るまで幅広い分野に迅速丁寧に対応。

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