不動産投資コラム

生産緑地とは?2022年問題とメリット・デメリット

2018/08/03
行政書士棚田 健大郎
生産緑地とは?2022年問題とメリット・デメリット

2020年の東京オリンピック前後に地価の変動があるのではとの声が一部でありますが、さらにその2年後の2022年、ちょうど今から4年後にあたる、サッカーのワールドカップがカタールで開催される年に、もっと大きな地価変動が生じる可能性があることをご存知でしょうか。

その理由には「生産緑地」という制度が大きく関わっています。
今回は、あなたの資産にも影響するかもしれない「生産緑地」の2022年問題を2回にわけてお話しいたします。

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「生産緑地」がもたらす2022年問題とは?

生産緑地と聞いても、不動産会社や農家の方でなければほとんどなじみがないのではないでしょうか。
そこで、まずは「生産緑地」とはどんな土地のことか、ポイントを解説したいと思います。

生産緑地って何?

生産緑地とは、簡単に言うと都市環境を考えて、都市にある緑地のうち、農地として管理することを義務化した緑地のことです。

生産緑地法という法律ができた昭和49年頃は、日本がめまぐるしく都市化を進めている時代で、都市部にある農地がどんどん宅地化されていきました。そこで、一定の緑地については「生産緑地法」のもと農地として保全していくこととしたのです。
ただ、それでも農地の宅地化が止まらなかったため、平成3年に生産緑地法が改正され、市街化区域にある農地については、次の2種類に区分されました。

  • 生産緑地・・・農地として保全する農地
  • 宅地化農地・・・宅地化を進める農地

生産緑地とは、300m² 以上(以前は500m² 以上)の面積のある農地などのことで、宅地化をせず、農地として保全するために都市計画によって指定を受けた緑地です。
生産緑地の指定を受けた農地は、固定資産税などの税金が非常に低い金額に抑えられるよう優遇されます。また、相続する場合についても、納税猶予を受けられます。
その代わりに農地の所有者には、生産緑地を農地として「30年間」管理しなければならないという「営農義務」が課せられます

ここが、今回の「2022年問題」のポイントです。

生産緑地として30年の営農義務が始まった1992年、全国にあるほとんどの生産緑地はこの年に指定を受けました。
つまり、そこから30年目が2022年なのです。2022年になると現在生産緑地に指定されている多くの農地の営農義務が終わり、宅地化が可能になるのです。

現在生産緑地の指定によって、固定資産税で大幅な優遇を受けている農家は、2022年を境にこの優遇がなくなり、宅地並みの高い固定資産税が課税されることになります。
これにより、農家をやめて宅地化を決断して、賃貸アパートなどを建てて賃貸経営を始める可能性が考えられるのです。

生産緑地ってどれくらいあるの?

2022年問題が「生産緑地の宅地化による地価変動」であることはお分かりいただけたかと思います。では、生産緑地に指定されている農地の面積はどれくらいあるのでしょうか。

国土交通省の調べによれば、生産緑地は全国に約13,442万m² (平成27年時点)あり、そのうちの57%が一都三県に集中していて、東京都だけで25%もの割合を占めています。
不動産投資として人気の高い「東京都23区」に絞ってみてみると、東京都都市整備局の調べによれば、428万m² 、実に東京ドーム91個分に相当する広さの生産緑地があるとのことです。

地価変動について

都心部にある多くの生産緑地が、2022年を境に宅地化し始めた場合、地価変動を起こすのでしょうか?考えられる影響について、不動産投資の目線でメリットとデメリットに分けて考えてみましょう。

メリット

都心部の生産緑地の所有者は、2022年以降、高い税負担を免れるために、農地を不動産業者などに売却していく可能性が考えられます。
もしも23区にある428万m² の生産緑地の多くが、不動産市場で売買されることとなれば、供給過剰によって土地値が下がる可能性が考えられます。

土地値が下がり始めると、生産緑地に関わらず、近隣地域の投資物件の価格にも影響が出てくることが予想されるため、投資家としては物件を安く購入できるチャンスが出てきます。

デメリット

生産緑地が多い地域で投資物件を所有している場合は、生産緑地が宅地化されることで、住宅が供給過多となるリスクが考えられます。

目先の利益を優先する不動産業者が、生産緑地の所有者に節税対策としてアパート経営を勧めると、需要を無視した大量の賃貸物件が供給され、多くの空室を招くことが懸念されます。
投資しようと思っている地域、すでに投資物件をもっている地域にどれくらいの生産緑地があるのか、確認してみることをおすすめいたします。

いかがでしたでしょうか。
今回は、生産緑地について、メリット・デメリットを説明しました。
後編で生産緑地の問題で2022年に地価は影響をうけるのか、関連の法制度改正なども含めて解説いたします。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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