不動産投資コラム

「マンションは管理で買え」は投資にも当てはまる?

行政書士棚田 健大郎
「マンションは管理で買え」は投資にも当てはまる?

マンションを購入する場合に、よく「マンションは管理で買え」というフレーズを耳にします。

管理はマンションの「資産価値」にもつながる大事な要素ともいわれますが、不動産投資目的でマンションを購入する際には、管理のどういったことに注目すればいいのでしょうか。

そこで今回は、エントランスやゴミ置き場などの目に見える部分の管理はもちろんのこと、管理組合の経営面(長期修繕計画や修繕計画積立金)のポイントまでわかりやすく解説します。

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「マンションは管理で買え」の意味とは

マンションを購入する際には、物件価格や間取り、導入されている設備などについては細かくチェックしますが、「管理」の部分に着目して購入している人は、そんなに多くないのではないでしょうか。

ですが、マンションの資産価値を決定づけるのは、購入前のこれらの要素よりも、購入後の「管理の質」の方が大きく影響するといわれています。

これは、マイホームとしてマンションを購入する場合に限らず、不動産投資目的で購入する場合にも当てはまります。
マンションの「資産価値」は、管理の質次第で上がることもあれば、下がることもあるのです。

不動産投資における「資産価値」ってそもそも何?

マイホームにおける「資産価値」というと、マンション自体の住み心地や住環境などを総合した価値を意味することが多いですが、不動産投資におけるマンションの資産価値はもっと単純です。

不動産投資におけるマンションの資産価値とは、ズバリ「賃料」及び「売却価格」とイメージするとわかりやすいでしょう。いくらの賃料が取れるのか、売ろうと思ったらいくらで売れるのか、この2つのポイントが不動産投資における「資産価値」を決定付けます。

例えば、同じ築30年のマンションでも、30年間どのような管理をしてきたのかによって、見た目も収支も大幅に異なるため、取れる賃料も違えば、売却する時の査定額も違ってくるのです。
では、「管理の質」とは具体的にどのような部分に着目して考えればよいのでしょうか。

マンションの資産価値を左右する「管理の質」に迫る


マンションの資産価値に大きく影響する「管理の質」とは具体的にどのようなことを指しているのでしょうか。
ここでは、「物理的な管理の質」と「経営的な管理の質」の2つに分けて解説していきます。

物理的な管理の質とは?

マンションという建物を向こう何十年もの間維持していくためには、物理的な劣化に対して適切な管理をしていく必要があります。
「物理的な管理」とは、具体的に言うと以下のとおりです。

・共用部分(エントランス・階段・廊下)などの日常清掃
・ゴミ置場の整理清掃
・マンション敷地内の清掃

これらは、いわゆるマンションの管理人が行う日常業務と言ってもよいでしょう。
日々、管理会社が派遣した管理人が、どの程度丁寧に整理清掃しているかによって、管理の質は大きく違ってきます。
物理的な管理の質が高ければ高いほど、住みやすいマンションであると言えるでしょう。

経営的な管理の質とは?

分譲マンションは戸数が非常に多いため、マンションを適切に維持管理していくためには、所有者全員で組織する「管理組合」によって、マンションを「経営」していく能力が問われます。
とはいえ、管理組合は不動産の専門家ではないので、実際は管理会社が経営面を全面的にサポートするため、実質的な経営力を問われるのは「管理会社」と言えるでしょう。

「経営的な管理の質」が問われるポイントは以下のとおりです。

・定期総会の開催
・理事会の運営
・長期修繕計画の立案
・大規模修繕工事の実施

マンションの維持に必要な修繕積立金についても、管理組合で話し合って決めていくため、管理組合をどう運営していくのかは、管理の質に直結すると言えます。
マンションを維持していくために必要な費用は、無限にあるわけではありません。
限られた予算を、適材適所に振り分けて、より良い状態でマンションを残していくことが、「経営的な管理の質」と言えるでしょう。

適切な管理会社を見極めるには?

2種類の管理の質については、お分かりいただけたでしょうか。
では、それぞれの管理の質の高さの見分け方について見ていきましょう。

物理的な管理の質の見極め方

物理的な管理の質については、マンションの現地を見学することでおよそ見極めることが可能です。不動産投資の場合は、現地を見ずに購入する人もいますが、物理的な管理の質を見極めるためには、やはり現地で直接自分の目で見てチェックする必要があります。

特に、共用部分であるエントランスや廊下、階段、ゴミ置場などの清掃が行き届いているかどうかは、初めて見てもおよそ見極められるでしょう。
以下のようなマンションであれば、物理的な管理の質が高いと言えます。

・共用部分にゴミが落ちていない
・ゴミ置場のゴミの分別が徹底されている
・駐輪場の自転車が整理して置かれている
・集合郵便受けからチラシが溢れていない

これらが徹底されているマンションについては、物理的な管理の質が高い管理会社が管理していると考えてよいでしょう。

経営的な管理の質の見極め方


経営的な管理の質を見極めるためには、現時点におけるマンションの経営状態を確認することがとても重要です。

管理組合が定期的に行っている総会の議事録を閲覧すれば、現状の管理費会計や修繕積立金会計がわかるため、現時点における収支の状況が適切であるかどうかがわかります。
※総会議事録や収支報告書は、管理会社から取り寄せることが可能です。

ここでチェックすべきは、マンションの現状と修繕積立金残高の「バランス」です。

例えば、マンションが大規模修繕実施前で、外壁などに劣化が見られる場合でも、大規模修繕を実施できるだけの修繕積立金残高があれば、管理の質としては問題ありません。
注意しなければならないのは、大規模修繕実施前にも関わらず、十分な修繕積立金が貯蓄されていない場合です。

修繕積立金は、毎月所有者各自が一定額を負担して管理組合の口座に貯蓄していきますが、修繕積立金をいくらに設定するのかについては、管理組合が管理会社のアドバイスに基づいて決めるため、同じ築年数でもマンションによって修繕積立金の貯まり方に違いが出るのです。

見極めの目安となる情報について

管理の質を見極める目安については、国土交通省のサイトから参考になる情報を得ることができます。

・修繕積立金の目安

修繕積立金の目安については、国土交通省の下記サイトにて「専有床面積あたりの修繕積立金の額」のガイドラインが公開されています。

「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」について

ガイドラインを確認すればマンションごとの適切な修繕積立金の金額がおよそわかります。基準よりも低い金額が設定されているマンションを購入する際は、今後値上がりしていく可能性があるため、そのことも踏まえて利回り計算をする必要があります。

・管理会社の見極め方

平成28年に国土交通省が実施した「マンション管理業者への全国一斉立入検査」の結果が、下記サイトに公開されています。

マンション管理業者への全国一斉立入検査結果(平成28年度)概要

検査の結果によると、是正指導が多かった項目は以下のとおりです。

・重要事項の説明等
・契約成立時の書面の交付
・財産の分別管理
・管理事務の報告

これらの項目については、一部法令に違反していた管理会社があったようです。
また、是正よりも重い行政処分を受けた管理会社については、下記サイトで確認できますので参考にしてください。

マンション管理業者に対する監督処分等情報

まとめ

「マンションは管理で買え」は、マイホームの場合はもちろん、不動産投資でマンションを購入する際にも、同じことが言えます。
不動産投資の場合は、管理の質が投資利回りに直接影響を及ぼすため、質の良いマンションを購入することが非常に重要です。
マンションを購入する際には、売買価格や間取り、設備だけではなく、今回ご紹介した「管理の質」についても必ずチェックしましょう。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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