[大家さんの確定申告] ② メリットとデメリット
不動産投資を始めると、必ずしなければならないのが「確定申告」です。
たとえサラリーマンであっても、給与以外に「家賃」という収入が発生するため、その所得に応じた確定申告が必要となります。
2回目の今回は青色申告のメリットとデメリットを解説いたします。
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2.青色申告のメリット
前回は、確定申告をすることにより不動産所得が赤字となっている場合には赤字分を給与所得と合算給与として損益通算でき、所得税還付や住民税を節税できるようになること解説いたしました。
今回は青色で申告することによる個別のメリットに焦点をあててくわしく見ていきましょう。
2-1青色申告特別控除がうけられる
青色申告をすることによるメリットの一つが「青色申告等別控除」です。
不動産投資の規模によって控除額は変わりますが、一般的な確定申告である白色申告には控除がないことに比べると大きなメリットであることは間違いありません。
青色申告特別控除では、所得が最大で65万円控除されます。
65万円が所得から減額されることで、65万円にかかる税金を節税することができます。ただ、65万円の青色申告特別控除を享受するためには、次の条件を満たす必要があります。
・不動産投資が「事業的規模」となっていること
・取引を「発生主義」に基づき「正規の簿記」で記帳をすること
この2つの条件は不動産投資における青色申告において、非常に重要なポイントになるので、一つずつ細かく見ていきましょう。
・不動産投資が「事業的規模」であること
不動産投資においての事業的規模はどこからなのかということですが、一応の目安があります。
一般的には、5棟10室以上だといわれており、アパートなどの共同住宅であれば10室以上、一戸建て賃貸であれば5棟以上であれば、原則として事業的規模と認められるようです。
・取引を「発生主義」に基づき「正規の簿記」で記帳すること
「発生主義」と対比して「現金主義」があります。現金の入出金が基準となるのが「現金主義」です。不動産事業では家賃が入金されることで収入とし、経費は支払った時点で費用とします。
青色申告特別控除を享受するためには家賃の入金ではなく発生日を基準とする「発生主義」で記帳します。また費用の支払いも実際の支払いではなく、発生日として請求された期日を基準とします。
その他、減価償却費の扱いや小口現金の扱いなど、さまざまな経理処理をしなければなりません。
2-2.身内に給与を支払い経費にできる
不動産投資を事業的規模で青色申告特別控除を利用できるようになると、家族などの身内に給与を支払って経費とすることができます。
経費が増える分、節税効果があがるため、不動産投資を青色申告できる人は、青色申告事業専従者給与を活用することをおすすめします。
これを「青色申告事業専従者給与」といい、青色申告においてのさらなるメリットとなります。
ただし、誰でも専従者とすることはできません。
専従者となるためにはいくつか条件があります。
不動産事業が事業規模であり、「青色申告事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署長に提出していることが必要となります。
専従者となる家族などの身内は、1年間で6ヶ月以上、または事業に専念するうちの半分以上において、専ら専従者として従事しなければなりません。
「専ら従事」の判断基準は主に業務時間になるようにで、他に仕事をしていたり学生であったりする場合には認められないことがありますので注意しましょう。
2-3.赤字を繰越できる
不動産投資で青色申告をすると、赤字を繰越することができます。不動産投資が事業的規模と認められる場合、事業として継続性があると考えられるため、赤字の繰越が認められているのです。
ただし、繰越ができるのは不動産所得で発生した赤字がそのまま繰り越せるわけではありません。
サラリーマンであれば、不動産所得から発生した赤字を会社からの給与所得と合算してマイナスになった場合です。
そのため、サラリーマンで給与所得があれば赤字を繰り越すことはないと思いますが、他のケースでは赤字の繰越が重宝する場合もあるでしょう。
3.デメリットと注意点
さて、ここまでは青色申告をすることによるメリットを中心に触れてきましたが、最後にデメリットや注意点についても触れていきたいと思います。
3-1.青色申告には手間がかかる
青色申告のデメリットとしては白色申告に比べて手間がかかるといわれています。
青色申告の届出書を提出することや、正規の簿記による記帳、さらに貸借対照表や損益計算書の作成と提出が必要となります。
たしかに、経理の手間を考えると一般的な白色申告の方が楽であることは間違いありません。
ただし、冒頭部分でもお伝えしたように、現在では白色申告であっても帳簿付けや書類の保存などが義務化されたため、手間がかかることにそこまで変わりはありません。
正規の簿記で正しく記帳をして、貸借対照表や損益計算書を作成していくことは不動産投資において決して悪いことではありません。
事業の継続や拡大をしていくためには、有意義なことであるともいえるでしょう。
3-2.期限を過ぎてしまったら
翌年の確定申告で青色申告をするためには、原則としてその年の3月15日までに青色申告承認申請書を所轄の税務署長に提出しなければなりません。
その期日を過ぎてしまった場合には、白色申告で申告するしかなく、翌々年の確定申告から青色申告となります。
うっかり提出を忘れてしまうと、青色申告によるメリットを受けられませんので注意しましょう。
3-3.確定申告の必要書類について
不動産投資で確定申告をする際には、申告書のほかにも提出書類があります。
サラリーマンが不動産投資をして確定申告をする際には、会社から発行される源泉徴収票が必須となります。
また提出はしなくても、帳簿作成に必要な書類として、下記はそろえておかなければなりません。
- 購入時の売買契約書
- 火災保険の領収書
- 管理会社からの明細
- 固定資産税の通知書
- 経費の支払い時の領収書
領収書などの経費を証明できる書類は、必ず保管しておきましょう。
まとめ:確定申告は不動産投資家にとって必須
いかがでしたか?
通常、サラリーマンは会社が年末調整をしてくれるため、確定申告をする必要はありません。ですが、不動産投資を始めた場合は会社から発行される源泉徴収票を提出書類として、毎年確定申告が必要となります。
確定申告は不動産投資家にとって、義務であるとともに、多くのメリットも伴っていますので、今回ご紹介した知識についてはぜひ覚えておきましょう。
次回は、確定申告の具体的な方法について解説していきたいと思います。
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- 第1回:[大家さんの確定申告] ① 必要性とメリット
第2回:[大家さんの確定申告] ② メリットとデメリット
- 第3回:[大家さんの確定申告] ③ 申告スケジュール
- 第4回:[大家さんの確定申告] ④ 必要書類
- 第5回:[大家さんの確定申告] ⑤手続き方法
- 第6回:[大家さんの確定申告] ⑥ 記入方法