大家が亡くなった際によくあるトラブルと相続対策
日本の高齢化が進むなか、最近徐々に増えていると感じるのが賃貸経営の相続に関するご相談です。
ちょうど、不動産投資のブームにのって投資をされた方たちの相続が起き始めていて、賃貸経営が何もわからない相続人の方々が奔走するケースも少なくありません。
そこで本シリーズでは、賃貸経営の相続で実際に起こるトラブルや対処法、事前対策などについて解説していきたいと思います。
初回となる今回は、賃貸経営をしている方、オーナーが亡くなられた直後、相続人の方が直面する問題と対処法について解説します。
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賃貸経営者が亡くなったら相続人がすべきこと
賃貸経営をしている方が亡くなられて相続が発生した場合、相続人の方が早急にやらなければならないのが以下の2点です。
- 相続人の調査
- 相続財産の確認
相続に詳しい方であれば、普通の相続もそうでしょ、と思うかもしれませんが、賃貸経営者が亡くなられた場合は通常よりもこの手続きを早く進める必要があります。
相続放棄するか早期判断が必要
賃貸経営者が亡くなられると、毎月入金になる家賃の管理や諸修繕の手配、賃貸募集などさまざまな手続きについて相続人は早急の対応を求められます。
ただ、亡くなられた方に多くの借金が見つかって債務超過となるようなケースについては、相続をせず相続放棄の手続きをとる必要性が出てくるのです。
相続放棄の手続きは相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所で行えばよいのですが、相続人の方が賃貸経営の業務などを暫定的に行っていると、場合によってはそれらの行為の一部が「単純承認」とみなされて、相続したと債権者から指摘される可能性があります。
そのため、相続が発生したらまずは亡くなられた方の負債を徹底的に確認して、相続放棄の必要性があるかどうかについて、早急に判断することが大切です。
銀行口座凍結で生じる問題とは
ご家族が亡くなられたことを銀行に連絡すると、亡くなられた方の銀行口座は遺産分割が完了するまでの間凍結され、原則として出金や入金ができない状況になります。
ここで問題となるのが家賃の振込先です。
家賃の集金代行を管理会社に委託していない場合、大家の口座凍結とともに賃借人からの家賃の振り込みが受けられなくなってしまうのです。この場合、賃借人が振り込みをかけてもエラーになってしまいます。
そのため、賃貸経営者が亡くなられたらその旨を賃借人に通知するとともに、口座凍結により従来までの銀行口座には振り込みができなくなる旨を事前に伝えなければなりません。
賃貸経営に慣れていない相続人の方の場合、そこまで頭が回らず賃借人から家賃が振り込めないとの指摘を受けてそこで状況を理解するというケースがよくあるので気をつけましょう。
遺産分割終わるまで家賃をどうする?
口座が凍結されてから遺産分割が確定するまでの間、実質的には家賃を受けるべき振込口座がない状況に陥ります。
この場合、解決策としては以下の2つがあります。
相続人の代表者の口座へ入金
相続人が複数いる場合は、代表者を決めてその口座に家賃を入金してもらうようにします。
また、相続人の勝手な使い込みを防ぐために、通帳やキャッシュカード、暗証番号などを別々の相続人で管理するやり方も有効です。
管理会社と集金代行契約を締結する
管理会社と契約を結んで、賃借人から家賃を口座引き落としなどで集金してもらい、遺産分割が確定した段階でまとめて相続した相続人の口座に入金してもらいます。
相続人の方が賃貸経営初心者の場合、知り合いの不動産会社にこの方法で依頼するケースがよくあります。
遺産分割までの家賃は誰のもの?
賃貸経営の相続で起きるもうひとつのトラブル、それは家賃の分配です。
相続開始後から遺産分割が確定するまで、長ければ数年かかるケースも決して珍しくありません。
そうなると、その間に生じる家賃総額というのはかなりの金額になります。
遺産分割が確定すると「その効果は相続が開始した時に遡る」ため、単純に考えると賃貸物件を相続する相続人のものになると思っている方が多いのですが、実際はそうではありません。
確かに遺産分割協議が確定すると効果は相続開始まで遡るのですが、家賃については分割単独債権として各相続人が法定相続分に応じて取得して遺産分割の影響を受けないのです。
遺産分割が終わるまでの確定申告に注意
上記のような最高裁判例があることから、各相続人は遺産分割協議が確定するまでの間、法定相続分に応じた家賃を受け取っているとして不動産所得の確定申告をしなければなりません。
このことを知らずに申告をしないでいると、相続税申告の時に税務署から無申告の指摘を受ける可能性がありますので注意しましょう。
相続人が家賃を渡さない場合はどうなる?
代表者の口座に家賃を入金させていたものの、その相続人が家賃を使い込んでしまうというケースも少なくありません。
このような場合は、使い込まれた相続人が使い込んだ相続人に対して、不当利得に基づく返還請求を行って法定相続分相当額を取り戻すことになります。
遺産分割協議がもめてしまうようなケースでは、その間の家賃の管理について細心の注意を払うよう気をつけましょう。
まとめ
賃貸経営者が亡くなられて相続が発生すると、通常の相続とは違い賃借人への対応や家賃の管理など、適切に対処しなければならないポイントが多々あります。
初めての相続で賃貸経営を承継する場合は、できるだけ専門家である弁護士、税理士、行政書士などに相談したほうがよいでしょう。
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