不動産投資コラム

建ぺい率10%加算 角地緩和・防火地域の耐火建築物

2018/12/17
不動産鑑定士堀田 直紀
建ぺい率10%加算 角地緩和・防火地域の耐火建築物

前回 は、建ぺい率と角地緩和の内容について解説いたしました。
今回は具体的な「角地緩和」の事例を紹介いたします。

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練馬区の建ぺい率の緩和の事例

東京都の場合は、23区それぞれが特定行政庁となっています。
ここでは、練馬区の場合の建ぺい率の緩和の条件を見てみましょう。

練馬区建築基準法施行規則(建ぺい率の緩和)
第21条 法第53条第3項第2号の規定

区長が指定する敷地は、その周辺の3分の1以上が道路または公園、広場、川その他これらに類するもの(以下この条において「公園等」という。)に接し、かつ、つぎに掲げる敷地のいずれかに該当するものとする。

(1) 2つの道路(法第42条第2項の規定による道路で、同項の規定により道路境界線とみなされる線と道との間の当該敷地の部分を道路として築造しないものを除く。)が隅角120度未満で交わる角敷地

(2) 幅員がそれぞれ8メートル以上の道路の間にある敷地で、道路境界線相互の間隔が35メートルを超えないもの

(3) 公園等に接する敷地またはその前面道路の反対側に公園等がある敷地で、前2号に掲げる敷地に準ずるもの

共通事項
  • a、bが道路、公園などに接する長さは、それぞれ2m以上必要
  • (a+b)の長さが、(a+b+c+d)の1/3以上必要

上記の規則を図解すると以下のようになります。
練馬区の場合の建ぺい率の緩和

練馬区建築基準法施行規則(平成5年8月31日規則第55号、角地緩和について)

この条件を満たした場合には、建ぺい率が10%加算されます。

そのほかの「角地緩和」の事例

すみ切り

また、特定行政庁によっては、幅員の狭い道路に面する場合であっても、角地にすみ切りを設けることによって、角地緩和を受けられる場合があります。
神奈川県の例を挙げておきます。

すみ切り

神奈川県建築基準法施行規則

風致地区内

風致地区
都市計画法における風致地区内においては、条例で建ぺい率の上限が定められていて、角地緩和の適用ができない場合が多いようです。
風致地区は都市に残された貴重な自然環境を守り、風致を維持するための地区ですので、通常よりも制限を厳しくしているからです。
 
角地緩和はやや条件が複雑ですが、角地であれば、すべてが緩和の対象となるわけではなく、道路に接する長さや道路の幅、すみ切りなど細かい条件があるということを覚えておきましょう。

そして、条件は特定行政庁によって異なりますので、ホームページや担当窓口で「建築基準法施行規則」や「建築基準法施行条例」を調べて確認するようにしましょう。

そのほかの建ぺい率緩和の条件

ここまでは、一定条件を満たす角地には、建ぺい率が緩和されるという話をしてきました。しかし、そのほかにも建ぺい率が緩和される条件があります。

それは、防火地域(市街地における火災の危険を防除するため定める地域)内に存する耐火建築物である場合です。

その根拠は、前回 のコラムに載せた建築基準法第53条第3項の規定によるものです。

都市計画で定められる防火地域内において、耐火建築物を建築する場合は、同計画で定められた建ぺい率に10%を加えることができるとなっています。

要するに、建ぺい率の限度が80%とされている地域以外で、防火地域内にある耐火建築物では、建ぺい率が10%加算されるということです。
さらに、上記の特定行政庁が指定した角地内にある建築物では、もう10%が加算されるということになります。

なお、建ぺい率の限度が80%とされている地域で、防火地域内にある耐火建築物については、建ぺい率の上限はありませんので、敷地いっぱいに建てることができます。

耐火建築物
建築基準法第2条第九号の二

次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。

(1) 耐火構造であること。
(2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあっては、(ⅰ)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
(ⅰ) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ⅱ) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

なお、2018年6月27日に公布された「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」により、建築基準法が改正され防火地域内だけではなく、準防火地域の耐火建築物、準耐火建築物も建ぺい率を10%緩和すると改正されました。

こちらの交付はまだですが、2019年の夏前には運用が始まる見通しです。

関連記事準防火地域の建ぺい率10%緩和へ/建築基準法改正

まとめ

今回は建ぺい率という制限の簡単な説明と、建ぺい率が緩和される場合の条件を見てきました。

特に緩和が受けられる角地の定義については、特定行政庁によって扱いが異なりますので、よくチェックして、間違いのないように利用していただければと思います。

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堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

不動産鑑定士試験合格後、民間最大手の大和不動産鑑定株式会社にて約11年間、収益物件をはじめとした鑑定評価業務に従事。平成29年10月、ミッドポイント不動産鑑定株式会社を設立。

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