不動産投資コラム

高利回りでも避けたい物件とは?ココに要注意!

不動産鑑定士堀田 直紀
高利回りでも避けたい物件とは?ココに要注意!

利回りについて、そもそも「利回り」とはどういうことなのかということ、前編では計算方法や計算例、「投資家調査」などについてご紹介しました。

前編の記事はコチラ

アパート経営、マンション投資の利回りの相場とは

後編となる今回はたとえ利回りが高くても避けたい物件、また物件購入の際のチェックポイントなどについて解説いたします。

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高利回りでも避けたい物件

借地権付き建物

借地権付きの建物は分かりやすくいうと、土地は借りていて、建物は自分で所有しているという形態の物件です。

借地権に関する法律には、借地法(旧法)と借地借家法(1992年8月1日施行)があります。旧法では借地人の権利が強く、一度貸したら、正当な事由がないとなかなか返還されないなど地主に不利なものであるといわれています。

土地の賃借人にとっての借地権付き建物のデメリット

他方で、土地の賃借人にとっても、所有している場合と異なり、いくつかのデメリットがあります。
建物を売るとき、所有している場合ですと、自由に土地建物を売ることができますが、借地の場合、借地権も同時に売ることになるのですが、地主の承諾が必要になってきます。
その場合、譲渡承諾料というものを支払うことが慣例となっています。譲渡承諾料は契約書に定めのない場合も多いのですが、借地権価格の10%程度が目安になってくるでしょう。

また、借地契約期間が満了して更新する場合にも更新料として、更地価格の5%程度の一時金を要求される場合があります。
さらには、借地契約書には、通常「増改築禁止特約」という条項が明記されます。これは、借地人が借地上の建物を増改築する場合、あらかじめ地主に承諾を得る必要があるといったものです。この場合にも、増改築の程度や内容にもよりますが、更地価格の3%程度が必要になってくる場合があります。

借地権付き建物
このほか、上記の普通借地権とは別に、定期借地権というものがあります。これは、契約期間が満了したら、契約の更新がないというものです。この定期借地権の場合は、残りの契約期間が何年あるかによって物件の価格が変わります。通常更地にして地主に返還しなければならず、建物の利用期間も限られますので、契約期間が残り少ない場合には特に要注意です。

このように借地権付きの物件には、色々なデメリットがあることから、一般に金融機関からの融資を受けにくいともいわれています。
借地権付き建物の場合、土地が所有権の物件に比べ利回りが高いことが多いですが、反面、思わぬ費用がかかってしまったり、売却するときに苦労したりするということもありますので、十分に検討することが必要です。

再建築が困難な物件

現状では賃貸経営がうまくいっていて、収益が確保されている物件でも、建物が古く、既存不適格物件になっている場合は注意が必要です。

既存不適格とは、建築時には適法に建てられた建物であって、 その後、法令の改正や都市計画変更等によって現行法に対して不適格になっている建物のことをいいます。

既存不適格建物の場合、建物を再築しようとなったとき、現状と同等の建物が建たず、賃貸面積が少なくなってしまう可能性があります。また、最悪の場合、再建築自体が不能になってしまうこともあります。

このような場合は、賃貸収益を上げることができず、利用価値がない不動産になってしまいます。したがって、そうならないためにも、法律上、現状と同程度の建物が最低限建てられるかどうかを調査することが必要です。

物件を検討する際にはここをチェック!

物件購入時

賃料は適正であるか?

新築プレミアム賃料

分譲にしても賃貸にしても新築の建物というのは人気があります。当然、その分、中古の物件に比べ、価格や賃料が高くなることはご理解いただけるかと思います。
賃貸物件について言いますと、新築もしくは築年数の浅い物件では、新築当初の高く設定された賃料(新築プレミアム賃料)で入居者が入っていることが多く、賃料収入も多く取れているといえます。

しかし、よく考えてみてください。新築というのは一度きりですので、入居者が退去してしまうと、その部屋は新築ではなくなってしまいます
そして、新築プレミアム賃料とよばれる高い賃料では、次の入居者に貸すことは難しくなります。築年数が経過するにつれて、 一般的に賃料は下がっていくものですが、新築であるか、そうでないかによって、賃料は大きく開いていることが多いです。したがって、築年数の浅い物件を購入する時には、現況の高い賃料ではなく、周辺相場をよく調査して、標準的な賃料を想定するようにしましょう。

長期入居者

新築プレミアム賃料のほかに、同じ入居者が長期間にわたって入っている部屋が多い物件も少し注意が必要です。賃料は徐々に下がっていくことが一般的なので、長期間賃料改定が行われていない場合、その入居者が退去してしまった場合、受け取れる賃料の下落幅が大きくなることが予想されます。売主側から提示されるレントロール(テナント賃貸借契約状況一覧)やヒアリングによって確かめるようにしましょう。

修繕積立金は十分か?

区分所有マンションを購入しようとするとき、管理費や修繕積立金の滞納がないかというのは当然調べると思います。
それに加え、マンション全体の修繕積立金が不足していないかどうかもチェックが必要です。

各戸の修繕積立金が安すぎる場合、大規模修繕を行う場合に費用が不足することが考えられます。大規模修繕を実施するタイミングで、急に一時金を用意しなくてはならないということも考えられますので、売主側に購入しようとしている物件の修繕計画などをみせてもらい問題がないかを見ておきましょう

賃貸需要のあるエリアか?

日本では都心部及び一部の県を除き、人口が減少に転じているのはご存知のことと思います。
これは不動産投資においてとても重要なことです。不動産投資は長期間に及ぶことが多いので、長い目で考えなくてはなりません。人口が減少するということは賃貸住宅にとっては入居者の獲得が厳しくなっていくことになります。

そして、空室の増加、賃料の下落は賃貸収入に直結します。また、入居者獲得のためには、広告宣伝費(AD)を多く支払ったり、リフォームして貸室を魅力的に見せたりする必要が出てくることになりますが、これはいずれも費用の増加につながっていきます。

前編でご説明した投資家調査で、地方都市の利回りが都市圏の利回りに比べ高くなっていることはこのような賃貸需要のちがいによるものと考えられます。
人口の減少の著しい都市においては、投資対象として大丈夫なのかを考える必要があるでしょう。

まとめ

利回りは投資判断の重要な指標です。しかし、高い利回りには必ず理由があります。物件の購入には、ご自身の投資計画において、どの程度のリスクまでなら容認できるかを考えて、ご検討いただけたらと思います。

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堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

不動産鑑定士試験合格後、民間最大手の大和不動産鑑定株式会社にて約11年間、収益物件をはじめとした鑑定評価業務に従事。平成29年10月、ミッドポイント不動産鑑定株式会社を設立。

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