不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

建物を売却する年の減価償却をせずに譲渡所得の計算は可能?

2年前に購入したアパートが高値で売却できるということで、売却を検討しています。
短期譲渡になるため、かなり税金で取られてしまうと思います。少しでも譲渡所得が低くなるようにしたいと考えております。

売却する年の減価償却費を計算せずに、譲渡所得の計算をすることは可能でしょうか?

売却する年の減価償却は、原則しないことになっています。有利不利の判断基準は税率です。

譲渡所得の計算

譲渡所得 = 譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

取得費とは

取得費とは、建物などの減価償却資産の場合、購入金額から減価償却費相当額を差し引いた帳簿価額(簿価)になります。
つまり、購入した金額から過去の減価償却した分を引いた金額になります。

売却する年の減価償却は自由

売却する年について、1月1日から売却するまでの期間の減価償却をするのであれば不動産所得の経費になり、しないのであれば譲渡所得の経費(取得費)になります。

売却する年 経費
減価償却する 不動産所得の経費
減価償却しない(原則) 譲渡所得の経費(取得費)

減価償却とは、その年12月31日において有する減価償却資産について行うこととされています。
つまり、年の途中で売却し、12月31日まで保有していないものについては、減価償却しないことが「原則」になります。

ただし

年の中途で譲渡した減価償却資産の譲渡までの期間に係る減価償却費については、譲渡所得の計算に含めずに、不動産所得などの必要経費に算入しても差し支えないものとする
所得税法基本通達49-54

と規定されています。

つまり、原則は減価償却せずに譲渡所得の取得費になるけれども、減価償却して不動産所得の経費にすることもできることになります。
どちらでも自由に選択できることになりますので、有利な方を選択すればよいことになります。

有利不利の判定は、実際に計算して判断

短期譲渡所得は所得税・住民税あわせると39.63%です。
不動産所得を含む総合課税の税率(超過累進税率)が、39.63%以下であれば、減価償却しない方がよいということになります。

なお、長期譲渡所得は、所得税・住民税あわせて20.315%なので、減価償却して不動産所得の経費にした方がよいという選択になる可能性が高くなります。

2018/11/18

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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