富裕層増税。賃貸物件を売った大家にも、上乗せの税金がかかる?
「所得の多い富裕層には、最低限の税負担を求める増税が始まった」という話を聞きました。
不動産の売却益は税率が低いと聞いていたので安心していたのですが、まとまった物件を売ると、この増税の対象になってしまうのでしょうか?
不動産の売却益も富裕層増税の対象。現行では約10億円、令和9年分からは約3.4億円超の売却益から追加課税のリスクが生じます。
結論から言うと、不動産の売却益も対象には入っています。
ただし、実際に追加の税金がかかるのは、ごく一部の超高額な売却に限られます。
多くの大家さんにとっては「知っておけば十分」な話です。
ただし、立地のよい土地をお持ちの地主さんは、他人事とは言い切れません。
■ そもそも、どんな制度?
ざっくり言うと「所得が極端に大きい人には、最低限これくらいは税金を負担してください」という上乗せのルールです。
令和7年分(2025年分)から始まっています。
その年の所得(基準所得金額)が3億3,000万円を超える部分について、22.5%で計算した金額と、通常どおりの所得税額を比べます。
そして、前者のほうが大きければ、その差額だけを上乗せします。
つまり「3.3億円を超えたら即課税」ではなく、比べてみて足りない分だけ追加する、というイメージです。
■ ポイントは「不動産の売却益も土俵に乗る」こと
土地や建物の長期譲渡所得(所有期間5年超の物件を売った利益)は、通常およそ15.315%という低めの税率で済みます。
「税率が低い=負担が軽い」わけですが国が今回ねらっているのは、まさにこの「低い税率のままで済んでいる超高額の利益」です。
ですから、法律には対象となる所得として不動産の長期譲渡所得がはっきり書き込まれています。
「不動産だから対象外」とは言えないのです。
■ では、いくら売れば追加課税されるのか
財務省の説明では、不動産の売却益だけで考えるとおおむね10億円を超えるあたりから追加の負担が出てくるとされています。
たとえば売却益が8億円なら、(8億円-3.3億円)×22.5%=約1億575万円。
通常の税額は8億円×15.315%=約1億2,252万円。
通常の税額のほうが大きいので、追加課税はありません。
これが売却益12億円になると、(12億円-3.3億円)×22.5%=約1億9,575万円。
通常の税額は12億円×15.315%=約1億8,378万円。
今度は判定額のほうが大きく、差額の約1,197万円が上乗せされます。
■ 注意したいのは「立地のよい土地を持つ地主さん」
「10億円なんて、うちには縁のない話」と思われたかもしれません。
ですが、売却益が10億円というのは、地価の高いエリアでは決して非現実的な数字ではありません。
注意したいのは、先祖代々の土地を持つ地主さんのケースです。
何代も前から所有している土地は、取得費がはっきりせず、売値の5%(概算取得費)でしか計算できないことが珍しくありません。
つまり、たとえば都心や駅前の好立地で土地が11億円で売れたとすると取得費はわずか5,500万円。
差し引き10億円超がまるごと売却益となり、この制度の射程に入ってしまうのです。
■ 判定は「利益」で見る。「売値」ではない
売った値段そのものではなく、取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いたあとの利益で判定されます。
ただし、取得費が乏しい古くからの土地では、「売値」と「利益」がほぼ同じになってしまいます。
だからこそ、地主さんの大型売却は注意が必要となるのです。
なお、居住用財産の3,000万円特別控除などが使える場合は控除後の金額で判定します。
■ 今後は基準が厳しくなる
令和8年の税制改正で、この制度はさらに強化されることが決まっています。
控除額が1.65億円に引き下げられ、税率も30%に引き上げられます(令和9年分の所得税から適用の見込み)。
基準が下がるということは、これまで「うちは大丈夫」と思っていた地主さんもより対象に入りやすくなるということです。
■ まとめ
不動産の売却益も、富裕層増税の対象には含まれています。
大きな土地の売却をお考えの方は、いざ売る前に必ず一度ご相談ください。
事前の試算とタイミングの工夫で、負担が変わってくる場合があります。
2026/09/04
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士