不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

定額制修繕サービスを利用。月々支払う費用は、全額経費でよい?

定額制修繕サービスをよく見かけるようになりました。
大規模修繕を毎月定額払いにできるようです。
このサービスによって月々支払う費用は、全額経費計上できるのでしょうか?

定額制修繕サービスとは、15年程度の期間の修繕計画を立てて、その総額を毎月分割して支払う仕組みです。

15年間の期間の最終で実施した修繕工事と支払い総額が一致することになっています。
サービス提供をしている会社の中には
「月々支払う費用は全額経費として計上することができます。」
と言っているところもあります。

私の個人的な見解としては、「経費にならない」と考えます。

会計上のルールに「発生主義」というものがあります。

これは、『金銭のやり取りに関係なく取引が発生した事実に基づいて、その事実が発生した時点で収益と費用を認識する』という考え方です。

発生主義では、実際に修繕が発生していないのに費用計上することはできませんし修繕が発生したにもかかわらず、費用計上しないこともできません。

もし支払金額が経費計上できてしまうと、容易に経費計上の時期がコントロールできることになってしまいます。

恣意的に節税することも可能になってしまいます。

したがって、支払金額を前払金(資産)として計上し工事を実施した都度、実施した工事費用分を修繕費(経費)に振り替えることになろうかと考えます。

また、「経費計上できる」という見解ではメンテナンスは実施しており、メンテナンスの範疇で修繕を行っているためメンテナンス費用として経費計上できると言う方もいらっしゃいます。

しかし、メンテナンス費用と修繕費の金額の比率を考えると修繕費の部分が圧倒的に多く占めると思います。

実際にメンテナンスをしているのであれば、その部分の金額を区分できれば、区分したメンテナンス費用を経費計上することは可能かと思います。
しかし、区分ができなければ難しいと考えます。

ただし、定額制修繕サービスの中には先行して工事を実施してくれるところもあります。

この場合には、実施した修繕費を未払金(負債)に計上し毎月の支払う費用を、未払金を消し込む(負債の減少)ことになると考えます。

毎月支払う費用以上に経費計上が可能になるため、メリットもあります。

今のところ絶対に経費にならないとは言い切れないです。

しかし、国税庁などが「経費計上が可能」という見解が出るまでは、支出分を経費計上することはリスクがあると考えます。

2023/02/24

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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