未登記の建物も相続登記の義務化の対象になる?
相続登記が義務化され、3年以内に登記しないと過料がかかると聞きました。
未登記の建物があるのですが、この建物も相続登記の義務の対象になるのでしょうか。
何をすればよいのか教えてください。
未登記建物は相続登記義務の対象外ですが、より厳しい「1か月以内の表題登記義務」があります。放置リスクが高いため早めの手続きが必要です。
1.未登記建物は「相続登記義務」の直接の対象ではない
登記記録そのものがない建物(=完全な未登記建物)は、相続登記義務の直接の対象ではありません。
というのも、相続登記義務を定めた不動産登記法76条の2は、「所有権の登記名義人」がいる不動産を前提にした条文だからです。
そもそも所有者の登記がない建物には、「名義を移す」という手続自体が存在しません。
とはいえ、「義務の対象外だからそのままでよい」ということではありません。
未登記建物には、建物表題登記 → 所有権保存登記 という別ルートの手続が必要になります。
しかも、表題登記には「取得から1か月以内」という、相続登記よりはるかに短い期限が法律上定められています。
2.相続登記の義務とは
令和6年4月1日から、相続や遺贈で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負うことになりました。
正当な理由なくこれを怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
この義務は、令和6年4月1日より前に発生した相続にも及びます。
以前から相続していた不動産も、原則として令和9年3月31日までに対応しなければなりません。
遺産分割が長引きそうなときは、「相続人申告登記」という簡易な手続で、とりあえず3年以内の基本的な義務だけは果たしておく、という選択肢もあります。
ただし、これは暫定的な措置です。
遺産分割がまとまったら、その成立日から3年以内に、改めて登記を申請する義務が生じます。
3.「未登記建物」は2種類ある
ひとくちに未登記建物といっても、実務では次の2つを区別する必要があります。
(1)表題部だけある建物(所有者の登記がない)
登記簿は存在し、建物の所在・種類・構造・床面積は記録されているものの、権利部(甲区)がなく、所有者が登記されていない建物です。
権利部甲区がまだない不動産について、初めて所有者を登記する手続を「所有権保存登記」といいます。
この場合、相続人は「表題部所有者の相続人」として、この保存登記を申請することになります。
相続による「移転登記」ではなく「保存登記」で処理する。
つまり、こちらも登記義務化の直接の対象ではありません。
(2)登記記録そのものがない建物(完全未登記)
そもそも登記簿が存在しない建物です。
固定資産税だけは市区町村が課税している、というケースが典型です。
この場合は、いきなり相続登記をすることはできません。
まず建物表題登記を行い、そのうえで所有権保存登記に進む、という2段階になります。
4.完全未登記建物は、まず「建物表題登記」から
不動産登記法47条は、表題登記のない建物の所有権を取得した者は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならない、と定めています。
条文は「売買で取得した場合」に限定していません。
相続によって取得した場合も、この義務の対象になると理解されています。
そして、これを怠った場合も、10万円以下の過料の対象です。
表題登記に必要になるのは、次のような資料です。
・現況調査(所在・種類・構造・床面積の確認、写真)
・建物図面、各階平面図
・所有権を証明する資料
建築確認済証、検査済証、建築計画概要書、固定資産課税台帳の登録事項証明書、
固定資産税の納付証明書、工事の引渡証明書 など
古い建物ほど、建築時の書類が残っていません。
なお、表示に関する登記の専門家は、司法書士ではなく土地家屋調査士です。
未登記建物では、司法書士と土地家屋調査士の両方が関与する分、費用も通常の相続登記より高くなります。
5.まとめ
完全な未登記建物は、相続登記義務の直接の対象ではありません。
表題部だけある建物も、「相続による移転登記」ではなく「所有権保存登記」で処理します。
ただ、未登記建物こそ早く登記すべきです。
理由は3つあります。
(1)表題登記には、もっと短い期限がある
相続登記の3年に対し、建物表題登記は「取得から1か月以内」。
義務化の対象外どころか、より短い期限の義務がかかっています。
(2)時間が経つほど、登記できなくなっていく
未登記建物の最大の壁は、所有権を証明する資料です。
建築確認済証や検査済証は、時間が経つほど散逸します。当時の事情を知る人も、いなくなります。
(3)登記がないと、売ることも、担保に入れることもできない
所有者の登記がない建物は、第三者に対して「自分のものだ」と主張できません。
売却も、融資の担保設定も、建替えも、まず登記からです。
早目に登記するようにしましょう。
2026/09/18
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士