不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

墓地や電車沿いに隣接する土地は相続税の評価が低くなる?

土地の相続税評価について、墓地や電車の線路沿いに隣接している宅地の補正率はありますか?
あるとすればどのような基準や要件がありますか?
その他減額できるものがあれば教えてください。

墓地や線路沿いの土地は条件次第で相続税評価が10%減額可能

相続税を計算する際、墓地に隣接する土地や鉄道線路沿いの土地については、通常の評価額から10%減額できる可能性があります。

これは「利用価値が著しく低下している宅地」という制度によるもので、周辺環境の特殊事情によって市場価値が下がっている土地に適用されます。

ただし、この制度は自動的に適用されるものではありません。
納税者側が具体的な根拠を示して申請する必要があり、税務署の審査も厳格に行われるため、実際に認められるためにはある程度の準備が必要です。

(1)墓地に隣接する土地の評価減

墓地は住宅地における嫌悪施設として扱われ、心理的な抵抗感から周辺土地の価値を下げる要因となることがあります。

しかし、実務上は墓地が隣にあるというだけで評価減が認められることはほとんどありません。

令和3年8月30日の裁決事例でも、道路(里道)を挟んで約2.5メートル離れた墓地について、納税者が10%の評価減を主張しましたが、

「墓地の存在を理由に売買契約の締結に至らなかった事例の有無や土地及び墓地の周辺に存する宅地の売出価格及び売買契約の成約価格の状況、土地及び墓地の周辺に存する賃貸物件の空室率やその推移といった事情は明らかではなく、墓地の存在が宅地の取引金額や賃貸状況に影響していることを具体的に認めるに足りる事情はうかがわれない」

として、10%減の補正は必要でないと判断されました。

(2)線路沿いの土地の評価減

一方、鉄道線路沿いの土地については、墓地の場合よりも客観的な基準で判断されやすい傾向があります。
電車の走行による騒音や振動は測定可能であり、環境基準との比較もできるためです。

平成15年11月4日の東京地裁の裁決例では「線路から20メートル以内で騒音レベルが60デシベルを超えている」という基準が一つの目安として示されています。

住宅地の環境基準は昼間55デシベル以下とされているため、60デシベル超という数値は明らかに基準を上回っていることになります。

ただし、騒音レベルだけでなく、実際の不動産市場での影響も重要です。
例えば、同じ分譲地内で線路側の区画とそうでない区画で10%以上の価格差があるといった具体的なデータがあれば、評価減が認められやすくなります。

また、電車の種類や運行頻度も考慮されます。
新幹線の高架沿いで高速通過による騒音が大きい場合や、貨物列車が深夜早朝に運行する路線などは、より影響が深刻と判断される可能性があります。

(3)評価減のポイント

減額が認められるかどうかは、減価要因が既に路線価に反映されていないかということがポイントです。
路線価は国税庁が毎年定める土地の評価基準ですが、騒音や嫌悪施設などの要因を考慮して、周辺より低めに設定されている場合があります。

つまり、既に織り込み済みの評価減と判断されれば、追加の評価減は認められないことになります。

(4)その他の減額要因

国税庁のホームページでは、次に該当するような利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、
著しく低下していると認められるものの価額は、10%減額できるとされています。

〈1〉道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
〈2〉地盤に甚だしい凹凸のある宅地
〈3〉震動の甚だしい宅地
〈4〉1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

墓地や線路以外にも、日照阻害、臭気、景観の悪さなども評価減の対象となる可能性があります。
例えば、南側に高層マンションが建って一年中日陰になる土地や、畜産施設や食品工場からの恒常的な悪臭がある土地なども、条件を満たせば10%の評価減が認められることがあります。

ただし、いずれの場合も複数の減額要因があったとしても、減額率は原則として10%が上限です。
騒音もあり日照も悪いからといって、20%、30%と重ねて減額することはできません。

具体的には、税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

2025/11/21

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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