不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

賃貸不動産の売却益が出た。新たな不動産を購入すれば節税できる?

法人で所有していた賃貸マンションを売却しました。
売却益がかなり出てしまいます。

新しく不動産を購入すれば、売却益に係る税金を節税できますか?

下記にて回答します。

(1)事業用の買換え特例が適用できるか?

賃貸している不動産を売却し、新たに賃貸不動産を購入した場合、つまり、買い替えた場合には、売却益を繰り延べできる「事業用の買い替え特例」があります。

事業用の買換え特例には、いくつかの種類がありますが、賃貸不動産で買い替える場合には、一般的には「長期保有に係る事業用の買い替え特例」を適用することが多いです。

この特例の要件が年々厳しくなっています。

一部例を挙げるのであれば

  • 取得した日の翌日から譲渡した年の1月1日までの所有期間が10年超であること

    ⇒10年以下の所有であればそもそも特例の適用はできません。

    また購入する不動産にも制限があります。

  • 買換資産が土地の場合は、面積が300㎡以上のものであること

  • 買替資産の土地については、譲渡した土地の面積の5倍以内が対象となり、5倍を超える部分は対象となりません。
  • また、要件を満たして特例を適用した場合であっても、建物に適用された場合には建物の減価償却が少なくなるデメリットがあります。

    買換資産の取得価額が実際の購入額ではなく、譲渡資産の取得費を引き継ぐ形で計算されるためです。

    事業用の買換え特例は、売却時の税金を抑える一方で、将来の減価償却費を通じて徐々に課税を受けるという「課税の繰り延べ」に過ぎないことに注意してください。

    (2)購入不動産の経費が計上できるが

    購入する賃貸不動産の経費が計上でき、法人の場合には、売却の利益とぶつけることは可能です。
    (個人の場合は、不動産の売却は分離課税のため、不動産賃貸の経費と相殺することはできません)

    しかし、購入する賃貸不動産の経費にできるものは、次のものくらいです。

  • 売買契約書に貼る印紙代
  • 購入時の登記費用(登録免許税や司法書士報酬)
  • 不動産取得税
  • 購入時の仲介手数料は、取得価格になるため経費になりません。
    また、建物の減価償却は経費になりますが、購入時から決算時までの月割り計算になるため、期末近くに購入した建物は、減価償却費も少なくなってしまいます。

    (3)まとめ

    以上の通り、買い替えることによって売却益が節税になるケースは限定されています。
    大きく節税をしたいのであれば、別の方法を模索した方がよいかもしれません。

    2024/10/18

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    渡邊 浩滋

    税理士・司法書士

    渡邊 浩滋

    税理士・司法書士

    経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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