財産債務調書は所得がなくても提出するの?
財産債務調書が税制改正によって、所得がなくても提出する必要がある場合があると聞きました。
どのような場合でしょうか?
下記にて説明します。
提出義務者の拡大
ある一定の財産をお持ちの方は、税務署に財産債務調書という書類を提出しなければなりません。
令和4年度までの提出対象者は、合計で3億円以上の財産(有価証券の場合は合計1億円以上)を保有し、かつ、合計所得金額(退職所得を除く)が2,000万円を超える方です。
財産があっても、所得要件を満たさなければ提出義務はありませんでした。
令和5年度以降は、現行の財産債務調書の提出義務者に加えて、その年の12月31日において財産の価額の合計額が10億円以上である居住者も対象になります。
所得要件がありませんので、10億円以上財産があれば、所得がいくら少なくても(申告していない人でも)対象者になるということです。
なお、財産を借入金で取得した場合であっても、提出するかの判定や記載する金額から、借入金元本を差し引くことはできないことになっています。
つまり、不動産10億円、借入金10億円の人であっても(この場合、純資産は0円)、提出の義務があるということです。
令和5年分の提出期限は令和6年6月30日になります。
財産の価格はどうやって調べる?
財産債務調書に記載する財産の価額は、その年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。
①不動産の見積額
例えば、不動産の場合の時価であれば、鑑定評価などになりますが、このために鑑定するのは大変かと思います。
そこで、不動産の場合の見積額は、次の金額が認められます。
- 固定資産税評価額
- 取得価額を基に価格変動を合理的に見積もって算出した金額
- 財産債務調書提出期限までに譲渡した場合の譲渡価額
- 財産評価基本通達で評価した金額(路線価など)
なお、非事業用の建物(自宅など)については、取得価額から、その年12月31日までの減価償却費相当額を控除した金額でもよいとされています。
土地、建物いずれも固定資産税評価額を記載するのが簡単かと思います。
賃貸経営を同族法人でやっている方もいると思います。
この同族法人の株式や出資(非上場株式の株式)も財産として記載が必要です。
②非上場株式の見積額
非上場株式の評価額は、基本的にはその法人の決算書等に基づいて算出します。
具体的には以下の手順で計算すればよいことになります。
- 決算書の確認 その年の12月31日またはその前日に最も近い日に終了する事業年度の決算書を確認します。
- 純資産価額の計算 決算書に基づいてその法人の純資産価額(帳簿価額)を計算します。
- 持株割合の適用 自己の持株割合を純資産価額に乗じて、株式の評価額を算出します。
なお、財産評価基本通達で評価した金額を記載しても問題ありません。
提出しないとどうなる?
提出しないことの直接の罰則はありません。
しかし、期限内に提出しない(記載がない場合や記載が不十分である場合を含む)と、その後の税務調査などで所得税の申告漏れが生じたときは、その財産または債務に係る過少申告加算税等が5パーセント加重されます。
なお、期限内に提出することによって、過少申告加算税等がまたは無申告加算税が5パーセント軽減されます。
対象の方は、忘れずに提出するようにしましょう。
2024/08/09
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士