法人で売却益が多額に出た。節税策はある?
法人で所有している賃貸物件を売却しました。
2,000万円くらいの売却利益になりそうです。
税金対策としては、期首に築古物件(木造の築22年とか)を購入する。
倒産防止共済をする。
車を期首に買う、修繕を行う、消耗品(パソコン等)が考えられますが他にありますでしょうか?
また、気を付けるべき点がありましたら教えてください。
ちなみに法人の決算期はすでに前倒ししております。
下記に述べますので会社にとって、個人にとって、良いものを選択されるとよいでしょう。
800万円を超える部分のみ節税を考えた方がよい
まず、法人の節税を考える場合には、利益のうち800万円を超える部分だけで充分です。
法人税の実効税率は、800万円を超えると超える部分に約34%。800万円以下の部分は、約24%です。
利益を800万円以下に抑えられれば、税率は約24%から大きく下がりません。
2,000万円の利益になるのであれば、800万円を超える1,200万円分の節税を考えればよいことになります。
課税の繰延
①出口を気をつけなければならないもの
- 築古物件を購入する
- 車を購入する
は、減価償却が取れる時期は大きく節税となり、減価償却がなくなる時期や売却すると税金がかかります。
つまり、今回払う税金を先送り(繰り延べ)する効果になります。
この課税の繰り延べで気をつけなければならないのは、購入して価値が下がってしまわないかどうかです。
売却して損になってしまうと、節税はできても、投資としては損することになりますので注意が必要です。
同じような手法として、コインランドリー投資、コンテナ投資、足場レンタルなどがありますが同じ理屈です。
②出口を気にしなくてよいもの
この点、倒産防止共済は、40ヵ月以上掛け金をかければ100%で戻ってくるので(戻ってきた分は課税)、繰り延べではありますが、損はしません。
生命保険も種類によっては、100%以上で戻ってくるものがありますが、最近の規制で100%経費にできなくなっております。
前倒しで経費を使う
- 修繕を行う
- 消耗品費を購入する
は、来年以降に使おうと思っていた経費を前倒しして使って、経費計上するものです。
翌年は利益800万円未満になるのであれば、今年使ったほうが税率が高い分、節税効果が高いです。
この場合、修繕や設備導入など資産価値が上がるもの(翌年以後の収入につながるもの)を積極的に使った方がよいかと考えます。
個人の税率とのバランス
①役員報酬
法人税等の税率よりも、個人の所得税・住民税の税率が低いのであれば、個人の役員報酬を増額して、法人から個人に収入を移転することが考えられます。
ただし、役員報酬を増額することによって社会保険の保険料が増額となる場合には、負担の方が大きくなる可能性があるためご注意ください。
②役員賞与
一時的に役員報酬を増額する以外には、賞与を出すという方法があります。
役員の場合には、賞与を自由に出すことはできず、事前確定届出給与の届出を提出することで、賞与を出すことができます。
この届出は、原則、期首から4ヵ月以内の期限になります。
③給与以外で個人に支払う
役員報酬でも役員賞与でも社会保険料の負担につながる可能性があります。
給与以外に個人に支払う方法として、退職金、借入金利息、地代家賃、保証料などがあります。
こちらは所得税・住民税の課税対象ですが、社会保険には影響はしません。
以上を参考に、会社にとって、個人にとって、良いものを選択されるとよいでしょう。
2021/07/19
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士