バブル崩壊後26年ぶりに上昇 市街地価格指数
一般財団法人 日本不動産研究所はこのほど、2018年3月末現在「市街地価格指数」の調査結果を発表しました。
「市街地価格指数」は、市街地の宅地価格(商業地・住宅地・工業地・最高価格地)の推移を表すため、全国主要198都市、約1700地点の地価を鑑定評価に基づき指数化されたもので、2010年3月末を100とする指数。調査は今回で154回目です。
地価動向は1990年代初頭のバブル崩壊後、全国的に長期にわたり下落が続いていましたが、今期全用途平均が26年ぶりに上昇し、全国的に上昇傾向がみられます。
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バブル崩壊後26年ぶりに上昇 全国の地価動向
今期の全国の地価動向は、全用途平均で前期比プラス0.2%と、上昇に転じました。
近年の都市部での継続的な上昇傾向に加え、長期にわたり下落が続いていた地方においても下げ止まりから上昇へ転じる地点が出てきたことなどが背景にあるようです。
上昇に転じたのはバブル崩壊後初、じつに26年ぶりのことです。
全国の用途別対前回変動率の比較▼
(前期比・%)
全用途平均 | 商業地 | 住宅地 | 工業地 | 最高価格地※ | |
---|---|---|---|---|---|
2016.9 | ▲0.1 | ▲0.1 | ▲0.1 | ▲0.2 | 0.4 |
2017.3 | 0.0 | 0.1 | ▲0.1 | ▲0.1 | 0.5 |
2017.9 | 0.0 | 0.1 | 0.0 | ▲0.1 | 0.6 |
2018.3 | 0.2 | 0.4 | 0.2 | 0.1 | 0.9 |
※最高価格地=各調査都市における最高価格地変動率の平均値
商業地は上昇傾向
商業地は全国的に上昇傾向が続いています。
インバウンド需要や大都市を中心にオフィス需要が好調なことなどを背景に、今期も堅調な推移がみられました。
住宅地は横ばいから上昇に
住宅地は今期、前期の横ばいから上昇に転じました。
全国的に交通利便性や住環境の良い地域などで上昇傾向が続いていましたが、人口減少や高齢化などにより下落傾向が続く地域でも、長期下落による値頃感から下げ止まり、そこから上昇に転じる地点が出てきています。それに加え低金利・減税等を背景に需要の回復もあり、住宅地地価にも回復傾向がみられる状況のようです。
工業地は下落から上昇に
工業地は下落から上昇に転じました。
これはeコマースの拡大により物流施設用地の需要が増加したことや、地域経済の回復にともなう工場用地の需要増加などが背景にあります。
最高価格地
三大都市圏や政令指定都市など都市部を中心に最高価格地も上昇傾向が継続中。今期も堅調な推移が見られました。
地方別の地価動向 各地で回復傾向に
地方別の地価動向は、これまで関東・近畿地方の商業地等を除く多くの地方で長期わたり下落傾向が続いていましたが、下落率は年々縮小し、近年横ばいから上昇へ転じる地方も増えてくるなど、回復傾向にあるようです。
2018年3月末現在 市街地価格指数と前期比▼
日本不動産研究所「市街地価格指数」を参考に作成
今期の地方別地価動向と背景▼
北海道 | 訪日外国人観光客増による旺盛なインバウンド需要により、商業地の上昇率が大きく拡大。 |
---|---|
近畿 | |
九州・沖縄 | |
東北 | 住宅地の上昇傾向が続き、今期は上昇率も拡大。条件の良い住宅地の上昇傾向に加え、下落が続いた地域でも下げ止まり、または上昇に転じる地点もみられること等が影響している。 |
関東 | 全用途で上昇傾向が続いている。とくに工業地は、圏央道や外環道の開通による交通利便性がより向上し、物流施設用地を中心に近年上昇傾向が続いている。 |
中部・東海 | 商業地の上昇傾向が続いている。下落が続いていた地域でも下げ止まり、または上昇に転じる地点が増加。 |
中国 | 商業地・住宅地ともに下落から上昇に転じた。下げ止まり、または上昇に転じる地点が増加している。 |
北陸 | この2地方のみすべての用途で下落傾向が続くも、下落率は縮小傾向に。県庁所在都市等、上昇が見られる地域も。 |
四国 |
すべての都市圏で上昇傾向 三大都市圏の地価動向
三大都市圏は、すべての都市圏で地価上昇傾向が続いています。
三大都市圏・全用途平均の地価変動率の推移▼
日本不動産研究所
東京圏:首都圏整備法による既成市街地および近郊整備地帯を含む都市
大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域および近郊整備区域を含む都市
名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
商業地
オフィス市況の賃貸需要が堅調であり、空室率の低水準が続いています。それに加えて投資需要が引き続き旺盛あること、投資物件の供給は限定的であること等が地価上昇傾向継続の背景となっています。
工業地
eコマースの拡大により物流施設用地の需要が旺盛であること等から地価は堅調に推移。
全用途
商業地・工業地ともに上昇傾向が継続、その結果として三大都市圏すべての全用途平均の上昇傾向が継続となりました。
全用途で堅調に推移 東京区部の地価動向
東京区部の地価動向は、全用途で堅調に推移しています。
東京区部の用途別対前回変動率の比較▼
(前期比・%)
全用途平均 | 商業地 | 住宅地 | 工業地 | 最高価格地 | |
---|---|---|---|---|---|
2016.9 | 1.1 | 1.5 | 0.7 | 1.3 | 4.6 |
2017.3 | 1.1 | 1.4 | 0.6 | 1.8 | 3.1 |
2017.9 | 1.4 | 1.6 | 0.7 | 2.6 | 3.2 |
2018.3 | 1.4 | 2.0 | 0.8 | 1.4 | 3.4 |
東京区部のなかでも比較的上昇率が大きい商業地。
その背景には、GINZA SIXや東京ミッドタウン日比谷など、注目度の高い新たな商業施設の開業による繁華性・回遊性の高まり、またとくに都心部におけるオフィスの賃貸需要は底堅い状況が続いていることなどがあるようです。
工業地でも上昇傾向が継続しています。湾岸エリアをはじめ、こちらでも物流施設用地の需要の底堅さ等が要因となっているようです。
まとめ
全体・地方いずれにおいても上昇傾向が顕著となった今期の市街地価格指数。
全国全用途平均が26年ぶりに上昇に転じるなど、転機ともいえそうな動向結果になりました。
地価動向はこれから半年は今回と同じような傾向が継続するという見方がされています。
一般財団法人 日本不動産研究所第 154 回「市街地価格指数」(2018 年 3 月末現在)の調査結果
手間をかけずに将来に備えた資産をつくる…空室リスクが低い不動産投資とは?