旅館業での民泊営業に追い風か【6/25建築基準法改正】
2018年6月に公布された改正建築基準法が、2019年6月25日から全面施行されると国土交通省が発表しました。
なお、すでに一部については、昨年9月25日に施行されています。
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現在、民泊特区・旅館業以外での民泊営業は年180日の日数制限があります。
収益を上げるため、営業日数の制限がない旅館業に転換したいと思っても、これまでは住宅から旅館業への用途変更に伴うコストが高すぎて、現実的ではありませんでした。
しかし、今回の建築基準法改正で、旅館業での民泊・ホテル営業のハードルが下がる可能性があります。
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今回の施行内容の概要
6月25日に施行される改正について、国土交通省が発表した内容は以下のとおりです。
この中から、旅館業でのホテル・民泊営業などをはじめとした宿泊施設への投資に影響があると考えられる(3)について注目します。
改正建築基準法が6月25日から全面施行されます
(1)密集市街地等の整備改善に向けた規制の合理化
防火地域や準防火地域における延焼防止性能の高い建築物について、建蔽率を10%緩和するとともに、技術的基準(※1)を新たに整備する。
(2)既存建築物の維持保全による安全性確保に係る見直し
既存不適格建築物に係る指導・助言の仕組みを導入する。また、維持保全計画の作成が必要となる建築物等の範囲(※1)を拡大する。
(3)戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化
耐火建築物等としなければならない3階建の商業施設、宿泊施設、福祉施設等について、200㎡未満の場合は、必要な措置(※1)を講じることで耐火建築物等とすることを不要とする。また、200㎡以下の建築物の他用途への転用は、建築確認手続きを不要とする。
(4)建築物の用途転用の円滑化に資する制度の創設
既存建築物について二以上の工事に分けて用途の変更に伴う工事を行う場合の全体計画認定制度を導入する。また、建築物を一時的に他の用途に転用する場合に一部の規定(※1)を緩和する制度を導入する。
(5)木材利用の推進に向けた規制の合理化
耐火構造等としなくてよい木造建築物の範囲を拡大するとともに、中層建築物において必要な措置(※1)を講じることで性能の高い準耐火構造とすることを可能とする。また、防火・準防火地域内の2m超の門・塀について一定の範囲(※1)で木材も利用可能とする。
(6)用途制限に係る特例許可手続の簡素化
用途制限に係る特例許可の実績の蓄積がある建築物について、用途制限に係る特例許可の手続において建築審査会の同意を不要(※2)とする。
(7)その他所要の改正
※1:具体的には、関係政令の整備等に関する政令に規定。
※2:対象について、関係政令の整備等に関する政令に規定。具体の基準について、改正法の施行に併せて改正を行う建築基準法施行規則に規定。
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それでは「戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化」について、2つのポイントに分けて見てみましょう。
3階建の戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化
延べ面積200㎡未満、3階建の戸建住宅等「耐火構造は不要」
現在、戸建住宅が空き家の大部分を占めているため、今回の改正で空き家ストックの利用を活性化させたいという狙いがあります。
これまで戸建住宅等を宿泊施設などに用途変更したい場合は、耐火構造にする工事が必要となり、大きなコストがかかっていました。そのため、空き家の活用がなかなか進んでいなかったのです。
この改正により、一定の必要な措置をとれば、延べ面積が200㎡未満の戸建住宅等であれば、旅館・ホテル営業を行う場合でも耐火構造にする必要がなくなるため、木造3階建のような建物についても活用の幅が大きく広がります。
国土交通省/平成30年改正建築基準法に関する説明会(第3弾)補足説明資料より
これまで
(1)3階建の場合、壁・柱等を耐火構造とする改修を実施(石膏ボードを張るなどの大規模な改修)
(2)非常用照明の設置など
改正後
(1)3階建で200㎡未満の場合、壁・柱等を耐火構造とする改修は不要
<必要な措置>
・飲食店等…特段の措置は不要
・就寝用途、医療・福祉施設…自動火災報知設備等の設置、階段の安全措置(階段を間仕切壁+防火設備等で区画する)
(2)非常用照明の設置など(上記と同様)
国土交通省/平成30年改正建築基準法に関する説明会(第3弾)補足説明資料より
戸建住宅から他用途への転用の際の手続き不要の対象を拡大
「建築確認手続きは不要」床面積合計100㎡以下から200㎡以下に
国土交通省/平成30年改正建築基準法に関する説明会(第3弾)補足説明資料より
国土交通省のデータから、戸建住宅ストックの約9割が200㎡未満であるという事実がわかっています。
これまでは、戸建住宅等から、旅館・ホテルなどへ用途変更をする場合、床面積の合計が100㎡以下であれば確認申請手続きが不要でしたが、今回の改正で200㎡以下に拡大されました。
これまで
100㎡以下の他用途への転用は、建築確認手続き不要
※基準への適合は必要
改正後
200㎡以下の他用途への転用は、建築確認手続き不要
※基準への適合は必要
今回の耐火構造の緩和、建築確認手続き不要の要件拡大という築基準法の改正で、これからホテル・旅館業で民泊事業を始めるにあたり、要件をクリアする建物が大きく増えると期待されます。
旅館業での民泊営業、宿泊施設投資を検討している投資家の方は、今回の改正を踏まえて物件探しをしてみてはいかがでしょうか。
国土交通省/建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について
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