2020年度版 大家さんのための税制改正
税制によって賃貸経営に大きな影響が与えられます。
どんな改正がされるのか。どのような対応をすればよいのでしょうか。
令和元年12月20日に閣議決定された、令和2年度税制改正大綱から、賃貸経営に影響がありそうな税制改正を、ピックアップして解説していきます。
なお、税制改正は、まだ正式に決定されておりませんので、ご注意ください(例年3月の国会承認で決定されます)。
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1.居住用賃貸建物の消費税還付の規制
ただし、課税期間の初日以後3年以内に、住宅の貸付以外に供した場合、又は譲渡した場合は、仕入税額控除に加算して調整する。
なお、令和2年10月1日以後に引渡しを受ける居住用賃貸建物に適用されます。
また、令和2年3月31日までに契約した場合は、引き渡しが令和2年10月1日以後になっても適用されません。
今回の改正で、住宅用の賃貸建物の還付自体をできなくする規制になりました。
今後は金の売買や、金以外の課税売上を計上しても、還付することはできません。
なお、今回規制の対象は、住宅用賃貸建物のみです。
テナントビルや太陽光発電設備の還付は今まで通り可能です。
店舗併用住宅の建物についても、店舗部分に係る消費税還付は可能です。
2.海外不動産の節税スキームの規制
国外中古建物を譲渡した場合の譲渡所得の計算は、その取得費から控除することとされる償却費累計額からは、「生じなかったもの」とみなされた償却費に相当する部分の金額を除く。
既に海外不動産を持っている人も対象です。
規制されるのは、令和3年以降ですので、令和2年は規制されません。
今回の規制は個人で保有している海外不動産になります。
法人が所有している海外不動産には、規制の対象になっていません。
別の海外不動産の収入と損益通算することは可能です。
3.低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の創設
この特例を使うには、下記の要件を満たす場合に限られます。
- 建物を含めた金額が500万円以下であること
- その個人の配偶者その他一定の関係者に対する譲渡ではないこと
- 土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行の日又は令和2年7月1日のいずれか遅い日から令和4年12月31日までの間の譲渡であること
- 適用を受けようとする低未利用土地等と一筆の土地から分筆された土地について、その年の前年又は前々年において、この適用を受けていないこと
趣旨は、空き家、空き地の売却を促して、不動産の活性化に繋げるというものです。
ボロ物件を再生して、戸建て賃貸、民泊、グループホーム、介護施設などに利用する投資家さんが増えています。
投資家さんにとっては、売り物件が増えることで、購入できるチャンスが増えるのではないかと考えられます。
ただし、100万円の特別控除なので、売り主は20万円くらいの節税効果。
この金額をメリットと感じる売り主がどのくらいいるのでしょうか。
4.延長項目
青色申告者が30万円未満の減価償却資産を全額経費にできる少額減価償却資産の特例の適用期限を、次の見直しを行った上、令和4年3月31日まで1年間延長する。
(1-1)対象法人から連結法人を除外する。
(1-2)常時使用する従業員の数が1,000人以下の要件を500人以下に引き下げる。
(2)居住用財産の買い換え特例の適用期限を令和3年12月31日まで2年延長する。
(3)居住用財産の譲渡損失の特例の適用期限を令和3年12月31日まで2年延長する。
(4)10年超保有の事業用資産の買い替え特例
10年超保有する事業用資産を譲渡し、新たに事業用資産を取得した場合(土地の場合300㎡以上などの要件あり)、譲渡した事業用資産の譲渡益について、最大80%の課税の繰り延べをする制度を、鉄道事業用車両運搬具を除外した上で、令和5年3月31日まで3年間延長する。
(5)登録免許税
下記登記による軽減税率を、令和4年3月31日まで3年間延長する。
- 居住用家屋の所有権の保存登記 0.15%(本則0.4%)
- 居住用家屋の所有権移転登記 0.3%(本則2%)
- 住宅取得資金の抵当権設定登記 0.1%(本則0.4%)
今回の税制改正によって、節税スキームがことごとく塞がれた印象です。
今後も新たな節税スキームを実行しても塞いでくる可能性は大きいと思います。
よりまっとうな賃貸経営をして、税金を取られてもお金が残るくらい収入を増やすことに注力するべきと考えます。
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