不動産投資コラム

消費税増税と不動産投資①影響がある項目と経過措置

2019/09/05
行政書士棚田 健大郎
消費税増税と不動産投資①影響がある項目と経過措置

2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げると安倍首相が表明しました。

前回5%から8%に増税した際にも、不動産投資には一定の影響がありましたが、今回の増税はどのように影響してくるのでしょうか。

そこで今回は、2回に分けて消費税増税が不動産投資に与える影響と、8%増税時の反省に見る、今後できるベストな消費税増税対策について解説したいと思います。

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10%増税で影響を受ける項目

不動産投資において、消費税が10%に増税すると主に次の3つの点について影響が出てきます。

1.物件の売買

不動産投資で物件を売買する際には、消費税が課税される場合があります。

具体的には、土地部分と建物部分のうち、建物については消費税の課税対象財産のため、建物部分の価額に対して消費税が課税されますので、消費税が10%に増税になることで不動産の仕入れ値が割高になることが考えられるでしょう。

ただし、売主が「免税事業者」である場合については、建物部分についても消費税は課税されません

消費税の免税事業者とは?

消費税は基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者に課税され、それ以下の事業者については免除されます。このように、消費税が免除される事業者のことを「免税事業者」といい、あくまで「事業者」としている点がポイントです。

ときどき「法人は課税業者で、個人なら免税」と認識している方がいますが、消費税の課税において個人か法人かは関係ありません

個人の不動産投資家のように、個人事業者の場合であっても、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えている場合については、課税事業者となるため、不動産を売却する際には建物部分に消費税をかけた金額で売却する必要があるのです。

また、法人であっても前々事業年度の課税売上高が1000万円以下であれば、不動産を売却しても消費税は非課税になります。

課税売上高ってなに?

ちなみに、課税売上高とは「消費税の課税対象となる取引(課税取引)」による売上高のことを意味しています。

例えば、不動産投資では家賃や礼金といった収入がありますが、これらについては消費税が非課税(非課税取引)なので、年間で家賃収入1,000万円を超える金額を受け取っていたとしても、それだけで課税事業者となることはないのです。

不動産投資における課税取引とは、不動産を「売却」したことによる売上であると考えるとわかりやすいでしょう。

2.管理費・修繕費

管理費便乗値上げ
不動産投資における維持費である管理費や修繕費については、消費税増税の影響が直撃します。とくに管理費については毎月かかる経費なので、消費税増税によって出費が増えることは間違いありません

修繕費用はすべて課税される

入退去の際に行われる原状回復工事についても、工事費全体に対して消費税が課税されるため、10%に増税されるとその分の出費が増えることとなります。

ですが、入居時に預かることができる敷金については消費税の影響を受けないため、今後は敷金から原状回復費用が控除しきれなくなることもあるかもしれません。

3.共用部の維持費用

建物共用部の維持費用についても、消費税の課税対象となるため増税による影響を受けます。

とくに、築年数が10年以上経過している物件については、屋上防水工事や外壁工事、鉄部塗装など比較的高額な施工が必要になる可能性があり、消費税増税の影響を強く受けるでしょう。

分譲マンションの管理費と修繕積立金は直接関係ない

区分マンションの投資をしている方であれば、毎月修繕積立金が口座から引き落としされているかと思いますが、これについては管理規約などに基づいて管理組合に対して支払っているものであるため、消費税が増税になったとしても、それによって直ちに値上がりはしません

ただし、管理組合が支出する修繕費用が増税によって値上がりするため、長期的に見ると今後値上げになる可能性は考えられるでしょう。

増税時に検討されている経過措置

増税による影響を考慮して、前回の8%への増税の際と同じように、今回の10%への増税についても以下のような経過措置が検討されています。

注文住宅を建てる場合のタイムリミット

注文住宅を建てる場合のタイムリミット
予定通り2019年10月から消費税10%になるとすると、不動産売買における消費税の適用については、2019年9月30日までに引渡しを受けていなければ、8%の税率で取引することができません

ただ、注文住宅については完成時期がずれ込むこともあるため、その点を考慮して請負契約を2019年3月31日までに締結していれば、引渡し日が2019年10月以降にずれ込んだとしても、消費税は8%が適用できる経過措置が講じられる予定です。

不動産投資の場合、アパートをゼネコンに発注して新築する場合などに影響が出るため、経過措置の日程についてはもれなく確認する必要があります。

仮に建物部分の価格が4000万円だった場合、消費税増税によって次のように金額が変わってきます。

消費税8%の場合:4,000万円×8%=4,320万円
消費税10%の場合:4,000万円×10%=4,400万円

このように、同じ物件を購入する場合についても、建物価格の2%に相当する80万円もの差が生じるとともに、不動産会社に支払う仲介手数料についても2%割高になるため、売買契約の締結時期や引渡しの時期については、事前によく確認しておくことが重要です。

ここまでは、消費税10%の増税による影響と、経過措置について解説してきました。

後編(増税と不動産投資②)では、前回2014年4月に実施された5%から8%の増税の際に起きた影響を分析しつつ、10%への増税に向けて不動産投資家としてやるべき対策について解説したいと思います。

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棚田 健大郎

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棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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