不動産投資コラム

設備故障による家賃減額の考え方と計算方法について

2019/04/15
行政書士棚田 健大郎
設備故障による家賃減額の考え方と計算方法について

設備不良の内容によっては、すぐに改善できないことも少なくありません。
では、借主から設備不良を理由に「家賃減額請求」をされた場合、貸主としては応じなければならないのでしょうか。

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家賃の減額請求に応じるかどうかはケースバイケース

借主から設備の一部に不具合が生じていることを理由に家賃の減額請求をされた場合、応じるかどうか、また応じたとしていくら値下げするのかについては、個別のケースに応じて判断することになります。

設備が故障したからといって、必ずしも家賃の減額請求に応じなければならないというわけではありません。法的に家賃減額請求が認められるためには、以下の2つの条件が必要とされています。

受忍限度を超えていること

たとえ設備不良が発生したとしても、通常の生活に大きな影響を及ぼさないような類の内容であれば、そもそも減額に応じる必要はありません

受忍限度を超えているとは、室内が水漏れで水浸しになっていたり、給湯器が故障してお湯が一切出ない、といったような、深刻な状況があてはまると考えられます。

受忍限度

また、改善までにかかる「期間」についてもとても重要です。
確かに貸主には「通常の使用ができる状態」で貸し出す義務はありますが、故障した場合に当日中に何とかする義務まで課すことはあまりに酷でしょう。

例えば、たまたまエアコンが年末に故障して、業者も電気屋も休み中だったため、対応が年明けになったとしても、それはどうにもならないことであり、貸主が最短で手配しているようであれば、貸主としての義務は果たしていると考えられます。

借主に帰責事由がないこと

故障の原因がそもそも借主にあるときについては、家賃減額請求は認められません

  • エアコンフィルターの清掃不足のために、エアコンが故障した
  • 一度にたくさんのものを流して、トイレを詰まらせた
  • 借主の不注意で窓ガラスを割った

このような場合は、借主に故障や不具合の責任があるため、家賃の減額請求はできないことになります。

家賃減額だけが解決方法ではない

もしも設備不良の状況が、上記の条件にあてはまる可能性ある場合でも、家賃の減額だけが解決方法ではありません。

例えば、給湯器が壊れて交換するまでの1週間程度、自宅でお風呂に入れない状態になったとしても、近くの銭湯を利用するための費用を負担することで解決する方法もあります。実際に、お風呂が使えない場合に、「日数×銭湯代」で和解した事例もあるようです。

銭湯代
このような「代替手段」を提供する事により、多少の不便は生じたとしても、通常の使用ができない状態とまでは言えないため、家賃の減額請求を回避することができるのです。

家賃の減額請求を受け入れる場合の「相場」とは?

代替手段での解決が難しく、致し方なく家賃の減額請求に応じなければならない場合、減額する金額については双方の話し合いによって決めることになります。

ここでは、減額する金額の目安となる、日本賃貸住宅管理協会が示した「賃料減額と免責日数の目安」を参考に解説しますので、話し合いの参考にしてください。
(※当該目安はサブリースの場合の目安としていますが、通常の賃貸借契約にも応用できると考えられます。)

状況 減額割合(月額) 免責日数
トイレが使えない 30% 1日
風呂が使えない 10% 3日
水が出ない 30% 2日
エアコンが作動しない 5000円 3日
電気が使えない 30% 2日
テレビ等が使えない 10% 3日
ガスが使えない 10% 3日
雨漏りによる利用制限 5~50% 7日

(公財)日本賃貸住宅管理協会

免責日数については、改善するまで借主も許容すべき日数の目安と考えられます。
例えば、トイレであれば1日、お風呂であれば3日までは修理や交換に時間がかかったとしても、許容すべき範囲という考え方です。

上記一覧表をもとに、減額する金額を算出する方程式を考えると、以下のようになります。

減額する金額=現状の家賃×減額割合×免責期間控除後の日割り

【具体例:家賃10万円の物件で、5日間お風呂が使えなかった場合】

免責日数は3日のため、実質的な日数は5日-3日=2日となります。

現状の家賃10万円×減額割合10%×日割り2/30=666円
(小数点以下は切り捨てて)

よって減額すべき金額は、上記のケースでは666円となります。

ただし、上記基準による金額は、あくまで1つの目安であり必ずしもこの金額が適用されるわけではありません
当該基準によって算出される金額よりも高額な減額を要求された場合に、借主に納得して引き下がってもらうための1つの根拠として考えるとよいでしょう。

次回は家賃減額の判例、また2020年の民法改正後の家賃減額対応について解説いただいます。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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