不動産投資コラム

賃貸経営に行政書士のサポートは必要?役割を解説

行政書士棚田 健大郎
賃貸経営に行政書士のサポートは必要?役割を解説

みなさんは「士業」や「行政書士」という職業について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

また、不動産投資における賃貸経営で行政書士がどのような立ち位置になるか、ご存知ですか?
不動産投資に結びつくイメージをお持ちでない方も多いかもしれませんが、行政書士は賃貸経営を成功させる上で、強い味方となってくれます。

そこで今回は、行政書士の立場から、不動産投資家のみなさんに対して、どのようなポイントで力になれるのかについて、全2回に分けて解説したいと思います。

【1分で分かる!新築一棟投資の魅力とは?】東京圏・駅徒歩10分圏内の物件紹介はこちら

そもそも行政書士とは

例えば、車の運転免許をお持ちの方であれば、運転免許更新センター付近にたくさんの行政書士事務所が、「代書屋」と看板を出して営業しているところを見たことがあることと思います。

一般的には、面倒な書類を代わりに作成してくれる代書屋というイメージがあるかと思いますが、実は行政書士ができる業務は単なる代書屋ではなく、非常に多岐にわたります。

行政書士の仕事内容

行政書士が業務として行うことができる仕事内容には、主に次のようなものがあります。

許認可申請

建設業や宅建業など、行政庁の許可が必要な申請手続きについて依頼することができます。許認可の要件や基準を熟知しているため、自分で申請するよりもスムーズです。

会社設立

会社設立に必要な定款の作成を中心に、会社設立に関する手続き全般を依頼できます。

相続業務

事前対策としての遺言書の作成から、相続発生後の遺産分割協議書の作成、各種名義変更手続きや届出などについて依頼できます。

その他、法的な書面作成全般

内容証明郵便の作成など、相手に対して何らかの請求などを起こす際の書面や合意文書の作成全般について依頼できます。

例えば、離婚する際の慰謝料請求書、離婚協議書、交通事故における示談書や後遺障害認定申請などにも対応できます。

このように、さまざまな仕事内容に対応できる行政書士ですが、賃貸経営においてはどのような面で頼りになるのでしょうか。

賃貸経営においた行政書士の役割

賃貸経営のどのようなシーンにおいて、行政書士にどんな依頼ができるのでしょうか。

家賃滞納と敷金トラブル

賃貸経営をしていく上での紛争リスクとして代表的なのが、「家賃滞納」「敷金トラブル」におけるリスクです。自身の保有する物件で家賃滞納が発生したり、敷金返還請求をされた場合については、行政書士に相談することで、次のようなサポートが受けられます。

賃借人宛の内容証明郵便の作成

家賃滞納が発生した場合は、賃貸管理を管理会社に委託していれば、管理会社から賃借人に対して電話を入れてくれる場合もありますが、回収まで責任を負っているわけではありませんので、最終的には大家自身で回収することを考える必要があります。

家賃滞納が発生した際に、賃借人に対して最も効果があるのが「内容証明郵便」です。

内容証明郵便

内容証明郵便とは、郵便局が指定した様式で作成する文書のことで、送った書面の「内容」と、届けた「日時」を郵便局が証明してくれる送達方法のことで、事案が紛争化する一歩手前で用いることがよくあります。

家賃滞納者の多くは、家賃の支払い期日を甘く考えているケースが多いため、内容証明郵便という、普段は届かない重みのある書面を送付することで、プレッシャーを与えることができるのです。

行政書士は書類作成のプロなので、内容証明郵便による滞納家賃の催告書についても、素早く作成してくれます。

家賃滞納は最悪の場合、建物明け渡し請求訴訟にまで発展する可能性があるため、行政書士に内容証明郵便の作成を依頼しておけば、万が一裁判になった場合にも、有効な証拠になるような適切な文面を作成してくれるでしょう。

ワンポイントアドバイス
自己流の内容証明郵便の落とし穴

実際、当方にご相談をいただいた大家さんの中には、自分自身ですでに内容証明郵便を送った後の方もおられました。
ところが文面を見てみると、記載しておくべきことがたくさん抜け落ちていたため、再度当方で作成した内容証明郵便を送り直すことになってしまいました。

自己流の内容証明で、間違いやすいポイントは以下の通りです。

支払い期日を明確にする

「至急お支払いください」ではなく、「○月○日何時までにお支払いください」と明確に指定することで、万が一支払われなかった場合に、直ちに次の手が打てます。

遅延損害金を請求する

賃貸借契約書に記載のある遅延損害金を、滞納家賃に上乗せして請求することで、より相手にプレッシャーをかけることができるとともに、次回以降の抑制効果を発揮します。
家賃滞納における遅延損害金は、賃貸借契約書に記載することで、最大で年14.6%まで請求することが可能です。

記載がない場合でも、年5%、貸主が事業的規模の場合は年6%の遅延損害金を請求することができます。

支払わなかった場合の予告がない

単に請求するだけでは、電話で督促するのとあまり変わりません。内容証明郵便で請求する際には、期日までに支払わなかった場合どうなるのかについても記載することで、回収率がよくなります。
例えば「期日までに支払いがない場合は、裁判手続きの準備に着手します」または「賃貸借契約を解除します」といった文言を記載することで、回収率がアップするのです。

敷金トラブルの対処

賃借人とのトラブルで、家賃滞納と同じくらい多いのが「敷金精算トラブル」です。関東を中心に、賃借人から敷金という担保を預かる慣習があり、退去時には室内のチェックをした上で返還することになります。

ただ、できるだけ敷金を全額返金してほしい賃借人と、できるだけ敷金から内装費用を差し引きたい大家さんとの間で、主張が食い違いトラブルになるのです。

敷金トラブル
敷金の一部を返還しない場合

なんらかの理由で、敷金から一部を控除して返金した場合において、退去した賃借人から敷金を全額返還するよう書面が届くことがあります。

大家さんの中には、面倒に感じて、要求通りに全額返還してしまうケースもよくあるようですが、行政書士に相談して、敷金を返還しない理由をきちんと記載して内容証明郵便で送ることで、大抵の賃借人は引き下がります。

敷金を超えて請求が必要な場合

室内がひどく荒れていた場合は、敷金だけでは復旧費用が不足する場合があります。その場合も、行政書士に依頼して追加請求分を記載した内容証明郵便を作成することで、賃借人から支払われる確率がグッと上がります。

初期段階の家賃滞納や、敷金トラブルについては、争点となる金額は高くても10~20万円前後と比較的少額であるため、弁護士に依頼すると費用対効果が悪く、かと言って大家自身で対応すれば回収できないというリスクを負います。

そこで、弁護士よりもコストパフォーマンスがよい行政書士を適材適所で活用することで、トラブルを迅速に解決することができるのです。

今回は賃貸経営における行政書士のサポートについて中心に見てきましたが、次回は不動産投資の法人化のサポートや、行政書士の報酬、よい行政書士の見分け方などについて詳しく解説したいと思います。

手間をかけずに将来に備えた資産をつくる…空室リスクが低い不動産投資とは?

棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

記事一覧