毎年110万円ずつ贈与していた親が死亡。亡くなった年の贈与は相続税がかかる?
父が毎年、私(長男)に110万円ずつ贈与してくれていました。
その父が、今年亡くなりました。
今年も、亡くなる前に110万円の贈与を受けています。
亡くなる前7年以内の贈与は相続税の対象に持ち戻される、と聞きました。
そうすると、今年もらった110万円も相続税がかかってしまうのでしょうか。
何とか非課税にする方法はありませんか。
亡くなった年の贈与も事後的に「相続時精算課税」を選択すれば基礎控除110万円が適用され、相続税の持ち戻しを回避できます。
1. 相続税がかからない方法がある
亡くなった年の110万円について、相続時精算課税制度を選択することで、相続税の対象から外すことができます。
暦年課税のままだと、その110万円は満額が相続財産に持ち戻されてしまいますが、相続時精算課税なら、令和6年から新設された年110万円の基礎控除部分は相続財産に加算されません。
こちらは、贈与者が亡くなった後からでも選択できます。
ただし、届出書の提出期限が通常より早まることがありますので、そこはご注意ください。
2.そのままだと、亡くなった年の110万円も相続税の対象になる
亡くなった年に被相続人から受けた贈与は、相続や遺贈で財産を取得する人については、贈与税はかからない代わりに、その全額が相続財産に持ち戻され、相続税の対象になります(生前贈与加算)。
「毎年110万円だから非課税」と思っていても、亡くなった年の分は110万円まるごと相続税の課税対象に取り込まれてしまうのです。
3.相続時精算課税なら、110万円は相続財産に加算されない
一方、相続時精算課税制度には、令和6年から年110万円の基礎控除が新設されました。
この基礎控除部分は、贈与者が亡くなったときの相続財産への加算対象から除外されるのです。
つまり、亡くなった年の110万円の贈与について相続時精算課税を選択すれば、「110万円-基礎控除110万円=0円」となり、相続税の対象になる金額はゼロになります。
暦年課税のままなら110万円が持ち戻されるところ、精算課税に切り替えることで、この110万円をまるごと相続税から外せるわけです。
4.贈与者が亡くなった後でも、相続時精算課税は選べる
相続時精算課税は、通常は「贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで」に届出書を出して選択します。
では、その前に贈与者が亡くなってしまった場合には、提出ができるのか?
贈与者が贈与をした年の中途で亡くなった場合でも、受贈者は「相続時精算課税選択届出書」を提出することで、事後的に相続時精算課税を選択できます(この場合、贈与税の申告書の提出は不要です)。
しかも、通常は「一度精算課税を選ぶと暦年課税に戻せない」という不可逆性が大きなデメリットになりますが、贈与者がすでに亡くなっている以上、今後の贈与はもうありません。
デメリットが実質的に消えるため、迷わず選択してよい場面といえます。
(※相続時精算課税は、贈与を受けた年の1月1日時点で受贈者が18歳以上の推定相続人または孫、贈与者が60歳以上の父母・祖父母、という要件がある点に注意してください。)
5.届出書の期限は、通常と違って「いずれか早い日」まで
贈与者が贈与した年の中途で亡くなった場合、届出書の提出期限と提出先は通常と異なり、次のイ・ロのいずれか早い日までに、贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長に提出します。
イ 贈与税の申告書の提出期限(通常は、贈与を受けた年の翌年3月15日)
ロ 相続税の申告書の提出期限(通常は、亡くなった日の翌日から10か月を経過する日)
亡くなった時期によって、どちらが期限になるかが変わります。
・1月1日〜5月15日ごろに死亡……相続税の申告期限(死亡から10か月)のほうが先に来るため、そちらが期限
・5月16日ごろ以降に死亡……翌年3月15日(贈与税の申告期限)のほうが先に来るため、そちらが期限
なお、ロの日が期限となり相続税の申告書を提出するときは、その申告書に届出書を添付します。
相続税の申告が不要なケースでも、精算課税の適用を受けるには、期限までに届出書だけは必ず提出しなければなりません。
やっかいなのは、年末近くに亡くなったケースです。
この場合、翌年3月15日までという短い期間しか猶予がありません。
相続開始の慌ただしさの中で贈与の事実が共有されず、気づいたときには期限を過ぎていた、ということになりかねません。
毎年コツコツ暦年贈与をしていたご家庭ほど、亡くなった年の贈与にこの一手間を加えるだけで、110万円分の相続税を確実に減らせます。
2026/10/16
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士