不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

本業と賃貸業の会社は別々に分けてやるべきか?

法人で飲食業をやっています。
これから融資を受けて賃貸経営をやろうと思っています。

今の法人で不動産を購入していくのがよいか、新しい法人を設立して、その法人で購入していくのがよいか、迷っています。

どちらがよいのでしょうか?

「融資」「税務」「リスク」3つの観点で法人を分けるべきか判断をしましょう。

1. まず確認すべき現在の事業状況

不動産賃貸業は、他の事業と比べて収益が安定しており、景気変動の影響を受けにくく、本業の業績が悪化した際のリスクヘッジとしても期待できるでしょう。

しかし、重要なのは「不動産投資の融資審査にどう影響するか」という点です。
不動産投資はいかに融資を受けて、よい不動産を購入できるかにかかっているからです。

例えば、黒字経営で自己資本比率が高い場合には、会社の信用力を活かして有利な融資条件を引き出せる可能性がありますが、赤字や債務超過の場合には融資審査でマイナス評価となり、不動産投資の足かせになる恐れがあります。

2. 本業の法人で行うメリット

(1)融資面のメリット

本業の決算内容が良好であれば、その信用力を活かして好条件で融資を受けられます。
また、不動産賃貸収入が加わることで決算書がさらに改善し、将来的な資金調達力も向上します。

(2)税務面のメリット

本業で一時的に赤字が発生した場合でも不動産賃貸の黒字と相殺できるため、法人全体の税負担を軽減できます。例えば、本業で500万円の赤字が出ても、不動産で500万円の黒字があれば課税所得はゼロになります。

(3)管理面のメリット

会社が一つなので、経理処理や税務申告が一つとなって管理コストを抑えられます。
会社が複数あると、会社ごとに法人住民税の均等割などのコストがかかります。

3. 別法人を設立するメリット

(1)融資面のメリット

金融機関は業種によって異なる審査基準を設けています。

景気に左右されやすい業種や在庫リスクのある業種は審査が厳しくなりますが、不動産賃貸専門の法人(資産管理業)なら、審査が比較的緩やかになります。

ある金融機関では「事業目的」が不動産賃貸業のみの会社に融資することがあります。
このような金融機関を利用する場合には、必然的に会社を別にする必要があります。

(2)税務面の優遇活用

法人を分けることで、税制上の優遇措置を二重に活用できます。
中小法人は所得800万円以下の部分について約24%の軽減税率が適用されます。

1社で所得1,600万円の場合:800万円×24%+800万円×36%=480万円
2社で各800万円の場合:800万円×24%×2社=384万円
年間96万円の節税効果が生まれます。

(3)リスク分散効果

事業リスクを完全に分離できるため、万が一本業が不振に陥っても、不動産事業への影響を最小限に抑えられます。

4. 判断基準のまとめ

(1)本業の法人で行うべきケース

・本業が安定的に黒字で、決算書の信用力を活用したい
・不動産投資は本業の補完程度に留める予定
・将来の株価上昇を抑えたい(相続対策)

(2)別法人を設立すべきケース

・本業の業績が不安定、または改善の見込みが薄い
・不動産投資を本格的に拡大し、将来的に主力事業化したい
・税制優遇を最大限活用したい

2025/12/05

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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