法人設立して、個人の現金で不動産購入。貸付か出資どちらがよい?
法人を設立して、個人の手持ち現金で不動産を購入しようと思っています。
この場合、個人の現金を法人に貸し付けて購入した方がよいのでしょうか?
それとも、個人の現金を法人に出資して購入した方がよいのでしょうか?
相続までの期間と法人の規模で最適な方法は変わります。
大きく異なるのは、個人の相続税になります。
1.法人に貸し付けた場合
《相続税のデメリット》
個人に貸し付けた場合には、貸付金が相続税の対象になります。
貸付金は原則、額面での評価になります。
1億円貸し付けていれば、1億円の財産価値として相続税が課税されます。
相続までに貸付金を贈与するなどの対策が必要になります。
《その他のメリット》
資本金にならないため、法人住民税の均等割が高くなりません。
2.法人に出資した場合
《相続税のメリット》
個人が出資した場合には、非上場株式の出資金(株式)が相続税の対象になります。
株式は、法人の財産に応じて評価されます。
一般的には、貸付金や現金などの財産よりも評価は下ることになります。
評価が下がる理由は次の2つです。
(1)不動産の相続税評価が適用される
建物は固定資産税評価額で評価します。賃貸している建物であれば、さらに3割減額がされます。
土地は原則、路線価で評価します。賃貸している土地であれば、(地域によりますが)さらに2割程度減額がされます。
ただし、課税時期前3年以内に取得または新築した土地等・建物等は、課税時期の通常の取引価額(時価)によります。
取得してから3年を経過しないと評価が下がらないことに注意が必要です。
(2)類似業種比準価額が適用できる
非上場株式の出資金(株式)の評価は、所有する財産や負債などの純資産価額から算出する方法と、上場株式の株価と比べて評価する類似業種比準価額をミックスして算出することが可能です。
一般的には類似業種比準価額が低くなることが多いため、純資産価額とミックスされることで評価は大きく下がります。
(ミックスされる割合は会社の規模によって異なります)
注意しなければならないのは、開業して3年以内の場合や土地の比率が高い場合には、類似業種比準価額が適用できない場合があります。適用できるための対策が必要になります。
《その他のデメリット》
資本金が大きくなることで、法人住民税の均等割が高くなる可能性があります。
なお、資本金1億円を超えると、税務上の中小企業ではなくなります。
中小企業でないと、所得800万円以下の軽減税率(法人税15%)や交際費の全額損金算入、欠損金の全額繰り越し控除の対象などの優遇税制が受けられなくなります。
相続税を大きく下げる必要があるか、相続までの期間に余裕があるのかなどで判断されるとよいと考えます。
2025/09/19
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士