不動産投資コラム

宿泊施設の約半数が経験/訪日外国人旅行者への医療

行政書士石井くるみ
宿泊施設の約半数が経験/訪日外国人旅行者への医療

旅行中にケガをしてしまった、病気になったという経験をお持ちですか?
普段とは異なる環境、特に不慣れな海外旅行中に、ケガや病気になると不安に感じるものではないでしょうか。

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訪日外国人旅行客への医療対策

訪日外国人旅行者が増加するなか、旅行者の不慮のケガや病気への適切な対応体制を整備することは非常に重要です。

平成30年6月14日に開催された「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」において「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に向けた総合対策」が取りまとめられました。

この総合対策に基づき、観光庁では、訪日外国人旅行者が不慮のケガ・病気になっても安心して日本の医療サービスを享受できる受入環境を整えるために、訪日外国人旅行者や旅行業者・宿泊施設向け等への実態調査を実施しました。

総合対策の取りまとめや調査が行われたのは、令和2年の年明けから感染が拡大しているコロナウイルスの問題が発生する以前となりますが、その段階でこのような訪日外国人旅行者の医療体制に関して検討が行われていることは評価できると感じています。

また、調査時期と現在は状況が異なりますが、本調査結果を踏まえ、引き続き、関係省庁が連携し、訪日外国人旅行者の医療に対する受入れ体制を整備が充実することが望まれます。

実態調査の結果

訪日外国人旅行者と宿泊施設及び旅行業者が回答した実態調査の結果を見ていきましょう。

調査が実施されたのは令和元年8月~令和元年12月の期間です。
訪日外国人旅行者に対する調査を行った場所は成田国際空港・東京国際空港・関西国際空港・新千歳空港で、回答件数は3,115件です。

ケガ・病気は全体の4%、うち約6割が風邪・熱

訪日外国人旅行者を対象に、病気やケガの発生状況や訪日中の不慮のケガや病気の医療費をカバーする保険の加入状況等に関してアンケートを行ったところ、訪日中にケガ・病気になった訪日外国人旅行者は全体の4%で、そのうち約6割が風邪・熱の症状でした。

旅行中は移動が多く、睡眠の環境が変わる上に、スケジュールもハードに組むことが多いので疲れがたまりやすいかもしれません。

訪日外国人の旅行保険加入率は約74%

読者の皆様は、海外旅行中の旅行保険には加入しますか?
私は短い期間であっても、万一に備えて加入するようにしています。

訪日外国人旅行者の場合、約74%が旅行保険に加入していました。

旅行保険の加入方法として、全体、東アジア、東南アジアでは「旅行代理店で購入する」割合が高く、一方、欧米豪では、「クレジットカードに付帯」と回答する割合が高いようです。

旅行保険

旅行保険に加入しなかった人の理由としては、「旅行保険を認知していなかった」が55%で最も高く、次に「加入する必要性を感じなかった」が28%、「加入したい旅行保険がなかった」が11%ということです。

「加入する必要性を感じなかった人」に対してその理由を調査すると、「滞在日数が短いから」「体力・健康に自信があるから」という回答ありました。

保険加入率がやや低いような印象も受けますが、日本は清潔で病気の心配が低いと考える外国人旅行者も多いのかもしれません。

宿泊施設の約半数が訪日客のケガ・病気を経験

あわせて、ツアーなどの旅行業者、ホテルなどの宿泊施設を対象に実施した、訪日外国人旅行者がケガ・病気になった際の対応や課題等に関するアンケートでは、約半数の旅行業者・宿泊施設ではこれまでに旅行中の外国人旅行者がケガ・病気になったことがあるとの回答がありました。

ケガや病気になってしまう旅行者は全体の4%と少数ですが、大勢の旅行者を受け入れる旅行業者やホテル側では、やはりケガや病気の旅行者への対応を行った経験割合が高いことがわかります。

そのうちの多くが、外国人旅行者が医療機関に行くことが必要になったと回答しました。
結果的には風邪や熱の症状だとしても、万一のリスクことを考えると、きちんと医療機関を受診しておくことが安心です。

宿泊施設側に求められる今後の課題

訪日外国人旅行者への対応の課題として、旅行業者、宿泊施設ともに「会話対応・通訳が十分できない」を挙げられています。
通常の日常会話に比べて医療的な専門用語が用いられることとなりますし、本人の病状は、的確な説明や表現力が重要になるためと考えられます。

訪日外国人旅行者がケガ・病気になった際に備えて、実施している取組として旅行業者、宿泊施設ともに「外国語対応ができるスタッフを配置している」の割合が45%と高くなっています。

外国語対応

しかし一方で、何も取り組みを行っていない「特になし」という回答割合も43%となっています。

外国人旅行者のケガや病気に遭遇した場合、現時点では外国語対応以外の効果的な解決方法がなく、そのために外国語対応を行うことができる人材確保に課題があることがうかがえます。

観光立国を目指す日本としては、快適な旅行環境を整備することに加えて、災害やこのようなケガ・病気などのトラブルに対してもいかに適切な対応が可能な医療受け入れ体制を整えていくことが重要と考えられます。

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石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

日本橋くるみ行政書士事務所代表。東京都行政書士会中央支部理事。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。著書「民泊のすべて」(大成出版社、2017年度日本不動産学会著作賞(実務部門)受賞)

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