不動産を売却した場合、売主は消費税を支払わないとならない?
賃貸アパートを売却しようと思っています。
売買金額は8,000万円(土地5,000万円、建物3,000万円)ですが、買主から建物に消費税を明記して欲しいと言われています。
アパートを売却した場合には、消費税を払うことになるのでしょうか?
建物部分が消費税の対象ですが、課税事業者か免税事業者かによって異なります。
家賃は非課税でも、建物の売却は課税になる
住宅用の賃料は、非課税です。
しかし、住宅用のアパートであっても建物の売却は、消費税の課税取引に該当します。
なお、土地の売却は、非課税です。
ですから、アパートを売却する場合には、建物部分が消費税の対象になるのです。
ただし、消費税の課税対象になっても、実際に消費税を納税するかは別問題です。
つまり、売却した年が課税事業者になっていれば納税することになりますし、免税事業者になっていれば納税する必要はありません。
課税事業者か免税事業者かどうか
個人の場合、課税事業者かどうかの判定は、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円超もしくは、前年の1月~6月までの期間(特定期間)の課税売上高が1,000万円超であれば、その年が消費税の課税事業者になります。
事務所や店舗の賃料や駐車場の賃料があれば、自分が課税事業者になっているかどうかの判定は比較的わかるかと思いますが、気づきにくいものとしては、2年前に1,000万円を超える建物を売却している場合です。
今まで住宅用の賃料収入しかなく、免税事業者になっていたとしても、建物の売却があれば2年後には課税事業者になるのです。
前年1月~6月までの期間(特定期間)に1,000万円を超える建物の売却があれば、翌年に課税事業者になりますが、その特定期間に支払った給与が1,000万円以下なら免税事業者を選択することも可能です。
また、相続で事業を承継した相続人が、相続した年に建物を売却する場合には、納税義務の判定は、被相続人の2年前の課税売上高で判定しますので、注意が必要です。
簡易課税選択届出書が提出されているか
建物を売却した年に課税事業者になっていれば、消費税を納税するしかありませんが、簡易課税制度を適用すれば消費税を少なく抑えることはできます。
簡易課税制度とは、2年前の課税売上高が5,000万円未満の方に消費税の計算を簡単にしてくれる制度です。
消費税の原則は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた金額を納めます。
仕入れに係る消費税(仲介手数料など)が6万円だった場合の納税額
24万円(預かった消費税)-6万円(支払った消費税)=18万円
簡易課税制度では、「みなし仕入率」というパーセンテージを使い、売上にそのパーセンテージをかけたものを仕入れにかかる消費税とみなすということにしています。
売却に係る「みなし仕入率」は60%です。
つまり、建物に係る消費税のうち60%を引いてくれるので、40%を納税することになります。
上記の例では、24万円-24万円×60%=9万6,000円になります。
簡易課税制度は、適用しようとする課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することが必要です。
原則は、売却する年の前年12月31日までに届出を提出しなければなりません。
売却する年に、提出しても、その年に簡易課税制度は適用にはなりません。
しかし、売却する前であれば、課税期間を区切ることで、簡易課税を適用することができます。
「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出することにより課税期間3ヵ月ごと又は1ヵ月ごとに短縮することができます。
例えば、4月に売却するのであれば、3月31日までに「消費税課税期間特例選択・変更届出書」及び「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで、3ヵ月ごとの課税期間となり、4月から簡易課税制度の適用を受けることができます。
なお、課税期間の特例の適用を受けた日から2年間は、課税期間の特例の適用をやめることはできません。
2019/10/29
不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは
回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士