間取りを変えたら資本的支出で、経費にならない?
所有している賃貸マンションの一室が、古い3LDKで最近は入居が決まりにくくなってきました。
そこで、居室を仕切っている壁を撤去して2部屋を1部屋にまとめ、3DK→2LDKの広めの間取りに変えようと思っています。
キッチンはそのまま、設備の入れ替えもしません。
間取り3DKを2LDKに壁を取り壊して変更した場合の工事代は全額経費になりますか?
用途変更や設備新設がない「純粋な間仕切り撤去」なら、原則として全額を修繕費(一括経費)で処理できます。
「用途は住宅用のまま」「キッチン等の設備は新設しない」純粋な間仕切り撤去であれば、原則として修繕費(一括経費)で問題ないと考えます。
1.判定は「取得時に予測される水準を超えたか」
資本的支出か修繕費かの判定基準は、「その建物を取得したときに、通常の維持管理を続けると想定した場合に見込まれる使用可能期間・価額」を、その工事が超えて、延ばした・増やしたかにあります。
この水準を超えなければ、定義上そもそも修繕費です。
2.資本的支出の「3つの例示」に当てはまるか
国税庁が挙げる資本的支出の典型は3つですが、本件はいずれにも該当しません。
(1) 物理的に付け加えた部分
本件は壁を撤去しています。付加ではなく除去なので当たりません。
(2) 用途変更のための模様替え等の改造・改装
資本的支出になるのは「用途変更のための」改装に限られます。
本件は住宅用のまま住宅用。用途は一切変わっていません。
部屋数を変えただけで用途を変えたわけではないので、これにも当たりません。
(3) 高性能なものへの取替えの超過部分
キッチンを変えていない以上、設備の取替えそのものがなく、これも当たりません。
3.耐用年数も延びず、価額も増えない
例示に当たらないだけでなく、本体の要件(使用可能期間の延長・価額の増加)も満たしません。
撤去するのは非耐力の間仕切りで、柱や梁といった躯体には手を触れないため、建物の使用可能期間は延びません。
また、設備の新設も仕上げのグレードアップもなく、床面積も増えていない。
「広いLDKにすれば価値が上がるのでは」という見方もありますが、価値が増えたことを客観的に示す一番の指標は家賃です。
家賃が据え置きであれば、価額が増えたと立証する材料はありません。
古くなった間取りを今の標準に戻す調整は、むしろ賃貸を続けるための通常の維持管理に近い工事です。
4.そもそも「撤去費用」は当期の経費
古い間仕切りを撤去する費用は、撤去した年度の経費(除却損または修繕費)になります。
新しく何かを造るための撤去費用であっても、解体、撤去費用は経費計上で問題ないと過去の裁決事例でも判断されています。
5.まとめ
用途を変えず・設備を新設せず・床面積も増やさない間仕切り撤去は、取得時に想定される水準を超えて価値や寿命を上乗せするものではなく、原則として修繕費です。
大切なのは、工事を「純粋な撤去」に絞り、見積書で撤去・原状回復の内容を明確にしておくことです。
逆に、2LDKを作るための壁の新設や、水回りの移設、仕上げのグレードアップが混じると、その部分は資本的支出の検討が必要になります。
2026/09/11
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士