所有する物件で入居者が病死。どう対処する?
入居者の親族から電話があり、本人と連絡がつかないため安否確認をしたいとの申し出がありました。後日、親族立会いのもと鍵を開けたところ、室内で病死していました。
死後数日経過しており、室内の損傷も見られる状況なのですが、今後大家としてどのような対処が必要でしょうか。
相続人と連帯保証人に対応させる。火災保険が使える場合がある。家賃が下がることも。
所有している物件の室内で入居者が亡くなられた場合、大家として対処しなければならないことは、大きく分けると次の2点です。
1:原状回復費用の請求
死後の発見が早ければよいのですが、数日経過してからの発見ですと、死体が腐乱してしまう可能性が高く、床や壁などに損傷が発生することがあります。そういった場合の復旧費用については、普通に退去した場合の原状回復費用よりも高額になるため注意が必要です。
2:精神的瑕疵による損害賠償請求
賃貸物件の室内で腐乱死体が発見されたり、自殺、他殺などによって死亡した場合については、次の入居者に対して心理的に影響を与えることから、必ず説明した上で契約する必要性があります。
このような物件のことを「心理的瑕疵物件(いわゆる、事故物件)」といい、通常相場よりも割安な価格で貸さざるをえなくなるため、通常相場との差額分を損害として請求できる可能性があります。
ポイント1:請求先は連帯保証人や本人の相続人
上記2点の損害についての請求先は、連帯保証人や本人の相続人となります。
連帯保証人は本人が死亡したとしても、依然として連帯保証人としての地位が残るため、賃貸借契約によって生じた損害について、大家に対して賠償する責任があるからです。
また、本人の遺産を相続する相続人がいる場合は、相続人に対しても損害賠償請求が
可能です。相続人はプラスの財産だけでなく、借金や損害賠償といったマイナスの財産についても相続する義務があるため、上記2点の損害について請求することができます。
ただし、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いなどの理由で、相続人が「相続放棄」した場合は相続人ではなくなってしまうので、請求することができません。
その場合は、連帯保証人にのみ請求が可能です。
ポイント2:火災保険から保険金がおりる場合がある
入居者が加入する火災保険の補償内容によっては、賃貸物件の室内で入居者が亡くなられた場合に、遺品整理費用や死亡見舞金といった名目で一定の保険金がおりる場合があります。
これにより、相続人や連帯保証人の経済的な負担が軽くなり、大家もある程度の補償が受けられることとなります。
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回答者棚田 健大郎
行政書士・マンション管理士・宅地建物取引士・管理業務主任者・敷金診断士・ファイナンシャルプランナー