不動産投資のQA

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競売で落札した投資物件。入居者への敷金返還義務は?

先日、競売で投資用の分譲マンションを落札することに成功しました。

当該マンションには、現在賃借人が居住していて、前所有者との間で賃貸借契約を結んでいたことがわかっています。

手続きが終わって賃借人に連絡をしたところ、前所有者に預けている敷金は退去時に返してもらえるのかと質問されました。

私自身は敷金を受け取っていないのですが、返還義務はあるのでしょうか?

入居者が契約し、引き渡しを受けたタイミングによって、敷金の返還義務は変わります。

競売で落札した場合、敷金返還義務など前所有者が賃借人と交わしていた賃貸借契約書の内容を引き継ぐかどうかは、賃借人が当該物件を契約して引き渡しを受けたタイミングによって大きく異なってきます。

抵当権の日付よりも引き渡しが先か後か

競売物件の登記簿謄本を確認すると、金融機関が抵当権を設定した「受付日」が記載されています。

今住んでいる賃借人が、この受付日よりも前に引き渡しを受けている場合については、引き渡し時点で抵当権の存在を知らなかったことになるため、賃借人は保護され、賃貸借契約は競落人(落札した人)に引き継がれます。

ところが、受付日よりも後に引き渡しを受けている場合については、もともと抵当権が付いている物件であることを承知で賃貸借契約を締結していることになるので、賃借人は保護されず、賃貸借契約の内容は引き継がれません。

よって、抵当権の受付日よりも前に引き渡しを受けている賃借人に対しては、たとえ自分が敷金を前所有者からもらっていなくても、賃借人が退去する際には、賃貸借契約書に書いてある敷金を預かっているという前提で精算をしなければならないのです。

再度敷金を預かり直すことも可能

抵当権の受付日よりも後に引き渡しを受けている賃借人については、前所有者との賃貸借契約が引き継がれないため、新たな賃貸借契約を締結して敷金を預かり直すことが可能です。

賃借人から「契約時に前所有者に対して敷金を預けている」と主張される可能性もありますが、それとは関係なく、新たな敷金を賃借人に請求することができます。

2019/09/16

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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