不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

海外旅行の費用。建築物の勉強という目的なら経費に計上はできる?

海外旅行をして、海外の不動産を視察しました。

「海外の建物を見て、建築の構造を勉強してきた」という理由で、海外旅行の費用を経費にすることはできますか?

海外旅行費は原則経費不可。認められるには明確な業務関連性が必要。

経費として認められるためには、事業の遂行上必要であることが条件となります。
経費として計上するのは難しいです。

令5年3月8日の裁決事例で、「マレーシアへの渡航費」が経費として認められなかった事例があります。

納税者は、次の主張をしました。
◯マレーシアへの渡航目的は、不動産投資の対象としてマレーシアの物件が適切かどうかを確認するための不動産投資に係る視察であった。

◯渡航中に現地の物価や経済状況全般を調査することも目的としていた。

◯さらに、現地の食文化を視察することも渡航目的の一部であった。

これに対して審判所は、以下の理由で渡航費を経費として認めませんでした。

具体的な成果が示されていない

納税者が主張する「不動産投資に係る視察」や「経済状況全般の確認」、「食文化の視察」において、渡航による具体的な成果(例えば、購入を検討した物件の情報、視察結果を基にした具体的な業務計画など)が示されていなかった。

業務との直接的な関係性が不明確

渡航費が、納税者の行っている業務(売電業務や不動産貸付業務)と直接的な関係を持つことや、業務遂行上必要な支出であることが明らかではなかった。

証拠資料の不備

出納帳には、渡航費用の支出相手や具体的な支出目的の記載がなく、渡航費が業務に関連する支出であることを証明する資料が不足していた。

家事関連費の可能性

渡航目的が「不動産投資の視察」や「食文化の視察」といった曖昧な内容にとどまっており、業務遂行上必要な経費とは認められず、むしろ個人的な趣味や家事関連費と見なされる可能性が高いと判断された。

今回のケースで経費として認められるためには、最低でも次の準備が必要となります。

(1)業務との直接的な関連性

単に建築構造を学ぶことが、事業収益にどう結びつくのかを具体的に説明する必要があります。
例えば、視察した建築構造が今後の物件設計や賃貸経営にどのように活かされるのかを明確に示す必要があります。

(2)具体的な成果の提示

視察によって得られた具体的な成果(例:新たな物件購入計画、設計変更、ビジネス戦略の変更など)を示す必要があります。
証拠資料として、視察先の写真、訪問記録、現地での打ち合わせ内容、提案書などを準備する必要があります。

(3)証拠資料の整備

渡航費用に関する領収書、旅程表、現地での活動内容を記録したメモや報告書などを用意し、税務署に説明できる準備を整えることが必要です。

上記が難しい場合には、経費計上はおすすめしません。

2025/10/10

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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