不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

自宅の購入は個人名義か法人名義かどちらが得になる?

融資を利用して自宅を購入しようと思っています。

法人名義で購入して社宅にして住む方がよいか、個人名義で購入して住宅ローン控除を受けた方がよいか、どちらが得なのでしょうか?

次の通りです。

1.税金上の比較

法人で自宅(社宅)を購入した場合には、次の支出が経費になります。
・借入金利息
・固定資産税
・建物の減価償却費
・火災保険料

など

ただし、法人に社宅家賃(相場家賃の2割~5割程度)を入れる必要があります。
実際の節税額は、法人税の実効税率(所得800万円以下は約24%、800万円超は約36%)をかけた金額です。

節税額 = (社宅の経費 - 社宅家賃収入) ×法人税等の税率(24%or36%)

一方、個人の住宅ローン控除を受ける場合には、固定資産税や減価償却費などの経費は計上できません。
住宅ローンにより、税金から控除される金額は、年末ローン残高の0.7%です。

節税額 = 年末ローン残高(限度額が上限) ×0.7%

こちらの比較になります。
購入金額にもよりますが、一般的には、法人での購入の方が節税額は大きくなる可能性はあります。

ただし、法人で購入する場合のデメリットに注意が必要です。

2.法人で購入する場合のデメリット

1.ローンが組めるか

住宅ローンは、個人のマイホーム取得支援のために、優遇された住宅専用のローンです。
最大35年の長期間で、かつ、低金利で借りられることができます。

法人で社宅購入する場合には、住宅ローンでは借りられず、通常の事業用ローンになります。
期間も短くなり、金利も高くなります。

例えば、5,000万円のローンを返済期間35年、金利1%で借りた場合の月々の返済額は、約14万円です。
5,000万円のローンを返済期間20年、金利2%で借りた場合の月々の返済額は、約25万円です。

返済額の負担が大きくなってしまいます。
そもそもこの返済額になるローンを組めるのか銀行の審査次第です。

というのも、金融機関は、返済原資が明確にならないと融資をしないのです。
社宅は収入を生まないのです。
どうやって返済するのか、その財源はあるのかを厳しく問われるのです。

2.決算書が悪くなる

仮に、別の不動産収入がある等によって、返済原資が作れるとしても、法人の決算書が悪くなってしまいます。

銀行が重要視する決算書分析の指標の一つとして、債務償還年数があります。

債務償還年数=(負債金額-現預金)÷(営業利益+減価償却費)

という計算式になります。

実質存在する借入金を、支払利息を控除する前(営業利益)のキャッシュフロー(本業で稼ぎ出すキャッシュ)で、何年で返済できるかを見る指標です。

この数値が30年を超えているようと融資は難しくなります。
20年以内にすると相当よい決算書になります。

社宅を購入するローンが増えることによって負債金額は大きくなります。
また、社宅に係る支出が経費になることによって、営業利益は小さくなります。

債務償還年数は長くなるのです。

すると、今後の融資に影響が出る可能性があります。
今後、不動産を購入して拡大していきたい方には、法人での購入はおすすめしません。

ある程度、拡大して、これ以上増やさなくても良い方であれば、法人で購入してもよいと考えます。

2024/09/06

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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