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教育資金の一括贈与の非課税制度は改正後も相続対策の有効手段?

教育資金一括贈与の非課税措置が延長されたと聞きました。
まだ相続対策として有効な手段でしょうか?

令和5年度税制改正によって、直系尊属から教育資金の贈与を受ける場合の1,500万円の非課税制度が令和8年12月31日まで3年間延長されました。

しかし、以下の条件が付きました。

「贈与者に相続が発生した場合に、相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満であっても、相続時に使いきれなかった残額に対して相続税の課税対象にする」

この制度は金融機関の信託を利用することが前提で、1,500万円まで一括で贈与しても非課税になることが特徴です。

しかし、今回の改正で、相続財産が5億円ある方は、教育資金として使いきれなかった場合には、相続税の課税対象になるのです。

すると、教育資金一括贈与の非課税制度をやる意味がない可能性が高くなります。

そもそも教育費の贈与については、非課税の規定があります。

「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものは、贈与税の課税価格に算入しない」

この場合、教育費の目的として贈与するものが非課税の対象となるため、教育費が必要な都度贈与しなければなりません。

一括贈与は将来の教育費も非課税対象となる点が特徴です。

しかし、一括贈与の場合でも、使いきれなかったものが相続税の対象となるのであれば、都度贈与で非課税にするのと変わりません。

しかし、都度贈与する場合には、贈与時に意思能力が必要になります。
認知症になる可能性がある場合には、一括贈与を使った方がよいかもしれません。

なお、相続財産5億円ない方はについては、相続時に受贈者が23歳以上などに該当する場合に使いきれなかった分に相続税が課税されます。

相続財産、贈与者の認知症の可能性、受贈者の年齢を考慮して、この制度を利用するかどうかを検討するのがよいかと考えます。

2023/08/18

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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