不動産投資コラム

「ムスリム旅行者」に対応する際のルールとは

行政書士石井くるみ
「ムスリム旅行者」に対応する際のルールとは

日本には多様な文化や習慣を持つ外国人旅行者が訪れます。
したがって、日本で外国人旅行者が安心して快適に滞在するためには、飲食店やホテルや民泊などの観光にかかわる事業者が、外国人旅行者の受け入に必要な正しい知識を理解し、対応することが大切です。

「前回」 に続き、ムスリムの人々が守るルールや文化、習慣について具体的にお話しします。

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イスラム教と「食」について

食事を提供しないホテルや民泊施設では、かかわりが大きくないので多くは触れませんが、食事は旅行の大きな楽しみの1つ。
ムスリムの旅行者の「食」について知っておきましょう。

ムスリムには、宗教上食べてはいけない食材があるなど、食に関して厳格なルールが存在します。
例えば、豚肉やそれに由来する食物(ハム、ソーセージ、ベーコン等)を食べることは、イスラム教の聖典クルアーン(コーラン)の教義で厳しく禁じられています。

また、豚以外の食肉でも、イスラム法に則って処理されていることや、豚由来成分(ラード等)やアルコール成分などによる調味、口にしてはならない豚肉等を調理した器具や食器に触れていないことなども条件に含まれます。

イスラム法には、「許可された」「合法的」という意味の生活全般に関わる「ハラール(HALAL)」という言葉があります。
「食」において、イスラムの教義に則って食べることが許可された食事を「ハラール食」と呼びます(対義語で「禁じられた」「違法な」という意味を「ハラーム(HALAM)」、そのような食事を「ハラーム食」と呼びます)。

「礼」について

礼拝室

非イスラム国である日本では、「礼拝」についてあまり知られていませんが、ムスリムの人々にとって、最も大切な行為の一つである「礼拝」は、1日に5回、太陽の動きに従った時刻に行われ、多くのムスリム旅行者は、旅行中でも欠かさず「礼拝」を行います
したがって、ホテルや民泊など宿泊施設では、ムスリムの旅行者の礼拝を行う場となる可能性を配慮して客室をしつらえると喜ばれます。

礼拝に関する基礎知識には次の3つがあります。

1.お清め

礼拝の前には、手・口・鼻・顔・腕・髪・足を流水で清めます。
したがって、水場が必要となりますが、通常のホテルや民泊施設では洗面所や浴室があるので問題とはならないでしょう。

2.キブラ

礼拝はキブラ(メッカの方角)に向けて行わなければなりません。
メッカは、アラビア半島のサウジアラビア王国の紅海から80kmほど内陸に入った中西部に位置します。
この地は、預言者ムハンマドの生誕地であり、イスラム教における最高の聖地となっています。
ムスリムの旅行者は、コンパスなどを持参していることが多いのですが、客室に備え付けておくと喜ばれます。

3.絨毯

礼拝では地面に額をつける作法がありますが、額が汚れないよう礼拝の際にはマット(織強)を使用します。
マットには矢印が模様として入っており、キブラの方角に向けてマットを敷き、その上で礼拝を行います。
礼拝場所を配慮すると同時に貸出用のマットを用意しておくと喜ばれるでしょう。

ムスリム礼拝

礼拝の時間は滞在先の日出と日入の時間によって変わり、1回の礼拝に要する時聞は短くても5~10分程度かかります。

「習慣」について

「食事」や「礼拝」のほかにムスリムの人々のマナーや生活する上での習慣を知り、気配りを行うことは大切です。
接遇する時に気を付けたいことを説明します。

左手の意味

イスラム教では右を優先するという考え方があり、握手や食事をする際は、必ず右手を使うようにしています。
逆に左手は不浄の手と考えられているので、握手の際は右手を差し出すようにしましょう。

女性客の接過

ムスリムの女性に対しては、女性による接客が好ましいですが、男性スタッフが案内しなければならない時などは、エレベーターに同乗しない、ドアを聞けておくなどの心遣いが必要です。

接客の服装

男女ともに素肌を見せることは好ましくないとされています。
レストランや宿泊施設などで、特に女性スタッフが接客する際には肌の露出の少ない服装にするなどの心配りが必要です。

挨拶

挨拶は軽い会釈が一般的ですが、相手が手を出しできたら、握手してもかまいません。
ただし、異性の場合はなるべく身体的接触は控えましょう

ムスリム挨拶

お土産やプレゼント

お土産として菓子類は非常に人気がありますが、多くの菓子類には、豚由来の乳化剤やゼラチンなどが使われているため、すすめる際には成分を確認しましょう。
また、イスラム教では、仏教やキリスト教徒異なり、偶像崇拝が禁止されているため、人形や不浄とされている犬のぬいぐるみなどのプレゼン卜は避けましよう。

温泉の利用

人前で素肌をさらすことができないムスリムの大半は、温泉の大浴場を利用することができません
宿泊施設内の貸切風呂や温泉が引かれた客室のある施設などがある場合は案内すると喜ばれます。

Wifi

旅行先でスマートォフンやタブレッ卜など、インターネットで情報を得る人外旅国行者が増えています。
ムスリムの旅行者も礼拝の際のキブラや礼拝の時間、レストランの検索等で活用するため、Wifi環境の整備が重要です。

日本ではあまりなじみのないイスラム教ですが、日本での滞在をより楽しんでもらうために、イスラムのことを正しく理解し、できることからチャレンジしてはいかがでしょうか。

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石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

日本橋くるみ行政書士事務所代表。東京都行政書士会中央支部理事。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。著書「民泊のすべて」(大成出版社、2017年度日本不動産学会著作賞(実務部門)受賞)

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