ボルト不足で工事期間の長期化!?高力ボルトとは…
建築物には実に多種多様な部材が使用されております。
柱、梁、基礎、外壁、屋根、電材、サッシ、金物…と大項目をあげていくだけでもたくさんあり、
例えば金物を一つとっても、羽子板ボルト、ホールダウン金物、短冊金物、六角ボルト、筋交い金物と様々です。
某ハウスメーカーのホームページでは住宅の部材・部品数は一棟あたり約1万点で成り立っているとの記述もございますが…
今回はその中の「ボルト」がテーマです。
【1分で分かる!新築一棟投資の魅力とは?】東京圏・駅徒歩10分圏内の物件紹介はこちら
不足している「高力ボルト」とは?
最近インターネットやTVで「高力(ハイテンション)ボルト」の不足に関するニュースを見たことはありませんでしょうか。
「私にはあまり関係ないでしょ?」って、思っていらっしゃる方多いのではないでしょうか。
物件の建築・購入を考えていらっしゃる方、もしそれが鉄骨造なら他人事ではありません!
鉄骨造の接合部のほぼすべてには「高力ボルト」が使われているのです。
そもそも「高力ボルト」とはどんなボルトでしょうか?
「高力ボルト」とは…
建設や土木など幅広い分野で使用されており、構造物の強度の確保が求められるボルトです。
締付力が均一になるよう製造され、ボルト・ナット・座金のセットで規格が定められています。
JIS規格に対応していないものでも、大臣認定を取得している高力ボルトもあります。
また、接合材を締付けた際に生じる摩擦抵抗で応力を伝達する摩擦接合にて接合します。
ちなみに高力ボルト以外には何があるのでしょうか。
一般的には「普通ボルト」や「ボルト」と言われています。
高力ボルトに比べてサイズが小さく、性能が低いボルトとなります。
基本的には仕上げ材の接合等に使われているボルトであり、構造部材の接合部に使用するためには条件があります。
支圧で力を伝達する支圧接合にて接合し、振動・衝撃を繰り返し受ける接合部には使用しません。
ようするに…構造上、非常に大切なボルトが不足しているのです。
国土交通省でも調査を実施。高力ボルトはなぜ足りない?
この「高力ボルト」不足は非常に深刻であり、国土交通省では、2018年10月25日より全国で「高力ボルトの需給動向等に関するアンケート調査」を実施しました。
この調査結果をみると、全国のどのエリアでも3ヵ月先でも需給がひっ迫していることがわかります。
また、全体の53%が建築に、全体の37%が民間工事により使用されていることから考えると、意外と身近な問題である気がしてきませんでしょうか。
要因は様々ではありますが、オリンピックで建築需要が高いことと併せ、自動車・機械産業が好調であるため、鋼材の供給が追い付いていないことが大きな理由でしょう。
実は国内生産量については、リーマンショックの翌年に大きく減少し、その後は縮小傾向であったことも要因の一つかもしれません。
ちなみに調査方法・結果の詳細は以下の通りです。
【調査方法】
調査対象:鋼材関係を取り扱う供給側及び需要側の558社
調査項目:『価格・需給動向』、『納期の状況』、『関連する工事の工期への影響』等
調査期間:平成30年10月25日~11月2日
調査方法:アンケート
【調査結果】
有効回答:305社(回答率:約55%)
高力ボルトの取扱いあり:159社
需給動向:「ひっ迫」※1
価格動向:「やや上昇」※2
※1「緩和」「やや緩和」「均衡」「ややひっ迫」「ひっ迫」を1~5点として回答。全国平均4.76。
※2「下落」「やや下落」「横ばい」「やや上昇」「上昇」を1~5点として回答。全国平均4.28。
要因:
- 東京オリンピック、大型再開発など、ここ数年建築の物件が多く、鉄骨需要が旺盛な状況が続いている
- ボルトの材料となる鋼材の供給が追いつかず、ボルトメーカーの生産がボルトの需要に追いついていない
- ボルトの材料となる鋼材は「自動車」、「機械」、「建設」で使用されているが、「自動車」、「機械」が好調であるため「建設」に回る量がボルトの需要に追いついていない
ひっ迫の状況:工事種類では建築が53% 、土木が34%
納期及び工期への影響:
- 高力ボルト(全般)の納期は、通常時の約1.5か月程度から約6か月程度まで長期化している
- 回答があった社の8割強で工期に影響があると回答
まとめ
高力ボルト(全般)の納期は、通常時の約1.5か月程度から約6か月程度まで長期化しているようです。
施工会社も必要なボルトの早期発注を行う等対応はしているものの、高力ボルト取扱い社の83%が工期に影響ありとの回答もあります。
2018年12月26日、国土交通省は、高力ボルトの需給安定化に向け、建設業団体等需要側、及び供給側に対しても、安定供給に向けた協力を要請しましたが、即時解決となるわけではないでしょう。
この状況で、消費税の増税が実施となれば、請負契約の締結時期、売買契約の引き渡し時期には気を付けなければいけません。
経過措置を適用できるよう請負契約(※3)なら3月末締結、売買ならば9月末決済・引渡が必要となります。
すでに年も明け、1週間以上が過ぎてまいりました。新築、購入をご検討の方は早い動き出しが必要です。
※3 4月1日以降の請負契約でも9月末までに引渡が完了していれば消費税は8%の適用となります。
手間をかけずに将来に備えた資産をつくる…空室リスクが低い不動産投資とは?