土地建物区分。売買金額を、土地を路線価で計算。残りを建物に計上してよい?
中古の不動産を購入しました。
土地建物の内訳の記載はありません。
できる限り建物金額を大きくして減価償却費を大きくとりたいです。
土地の路線価評価額を算出し、全体の売買代金から控除した金額を建物金額としてもよいでしょうか?
路線価の差引法は税務署・裁判所に否認される可能性大。原則は固定資産税評価額の「按分法」、または不動産鑑定の活用が必須です。
1.結論
土地の金額を先に計算して、残りを建物とする方法を「差引法」といいます。
この方法は、国税不服審判所でも裁判所でも、ほぼ一貫して否定されてきました。
契約書に内訳の記載がない場合の原則は、土地と建物の固定資産税評価額の比で総額を分ける方法(按分法)です。
そのうえで、固定資産税評価額の比では建物金額が実態より小さくなってしまう物件であれば、不動産鑑定評価書を取得する方法をおすすめします。
2.最新の裁決(令和6年11月14日 国税不服審判所)
審判所の判断は、次のとおりです。
(1)原則は固定資産税評価額の比
土地建物それぞれの購入の対価が契約書で約定されているケースも、約定されているかどうか明らかとはいえないケースも、いずれも固定資産税評価額による按分に比べて偏りがあり、不合理である。
したがって、原則として、一般的な合理性のある固定資産税評価額による按分によるべきである。
(2)適正な鑑定があればそちらが優先
ただし、法定耐用年数を経過した後も現在に至るまで継続的に利用されている物件など、個別事情を考慮した適正な鑑定評価がなされたものについては、固定資産税評価額による按分価額を支持しない。
鑑定評価に基づく按分が合理的である。
購入した物件のうち4件については鑑定評価による按分が認められ、更正処分の一部が取り消されました。
つまり、自分で決めた金額は通らない。固定資産税評価額の比に引き直される。
それが実態に合わないと言うのであれば、鑑定評価を用意しなさい、ということです。
3.なぜ路線価の差引法が認められないのか
理由は3つあります。
(1)売買価格の上乗せ分が、すべて建物に乗ってしまう
収益物件の価格は、土地と建物の評価額を足しただけの金額にはなりません。利回りや立地といった要素が上乗せされて決まります。
土地を先に計算して残りを建物とすると、この上乗せ分が丸ごと建物に集まります。
本来は土地と建物の両方が生んでいる価値なのに、片方だけに寄せる合理的な理由がありません。
平成12年12月28日の裁決は、まさに路線価を0.8で割り戻して土地の金額を出し、差引で建物を計算した納税者の主張を退けています。
マンションは土地と建物が不可分一体である。
差引法では、高く売られても安く売られても、その差額が一方に集まって実態から著しくかけ離れる。
あん分法なら差額は双方に反映される。だからあん分法のほうが合理的である。
(2)路線価を0.8で割り戻せばいい?
路線価は、公示価格の8割と言われています。
0.8で割り戻して届くのは、公示価格までです。
その公示価格も、実際の取引価格とは一致しません。
都市部では、実勢価格が公示価格の1.5倍以上になることもあります。
つまり都心では、割り戻しても実際に払った金額の6割程度しか出てきません。
残りは全部、建物に乗ります。
実際、平成12年の裁決でも、割り戻した土地の金額は、固定資産税評価額で按分した土地の金額を下回っていました。
(3)値引きも上乗せも、建物だけに反映される
路線価で土地を計算すると、通常価額で売られようが値引価額で売られようが、土地の金額は一定になる。だから値引額が建物だけに反映されてしまう。
高く買っても安く買っても、土地は動きません。動くのは建物だけです。
片方だけを計算して残りを押し付ける、その構造が否定されています。
4.鑑定評価を取るときの注意点
鑑定評価であれば何でも通るわけではありません。
過去の裁決事例でも、不動産鑑定士の評価方法に合理性がないとして否認された事例もあります。
根拠をしっかりと作ってもらうことが重要です。
また、鑑定には数十万円の費用がかかります。しかも、鑑定した結果が固定資産税評価額の比とほとんど変わらないことも珍しくありません。
依頼する前に、おおよそどの程度の按分になりそうかを鑑定士に概算してもらい、費用に見合うかを判断してください。
5.まとめ
路線価で土地を出して差し引く方法は、簡単で建物金額も大きく出ますが、否認された事例が多くあります。
すでに契約が終わり、内訳の記載がないのであれば、固定資産税評価額の比で按分するか、不動産鑑定評価書を取得するか。
一番よいのは、契約前の交渉で、売買契約書に土地と建物の内訳を書いてもらうことです。
契約前からの交渉が重要になってきます。
2026/11/06
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士