不動産投資コラム

10月に火災保険料値上げ!大家が知るべきポイントは

2020/02/16
行政書士棚田 健大郎
10月に火災保険料値上げ!大家が知るべきポイントは

2019年1月から地震保険料が値上がりしたことは記憶に新しいところですが、実はまだ値上げは序章に過ぎないことをご存じでしたでしょうか。

地震保険料の値上げは、2021年にもう一段階値上げが予定されているほか、本体である火災保険料についても2019年10月に値上げがあります。

そこで今回は、保険料改定の詳細や、値上がりしていく理由、そしてそんななかでも保険料を抑えるためのポイントについて全2回に分けて解説したいと思います。

【1分で分かる!新築一棟投資の魅力とは?】東京圏・駅徒歩10分圏内の物件紹介はこちら

火災保険・地震保険について簡単におさらい

保険料の改定について触れる前に、火災保険と地震保険について簡単に解説したいと思います。

火災保険というと、火事による損害に対する保険というイメージがあるかもしれませんが、実は次のように幅広い範囲について補償される保険です。

  • 火災
  • 落雷
  • 破裂、爆発
  • 風災、雪災、雹災
  • 飛来物等の落下
  • 水漏れ
  • 床上浸水

火災保険では「地震」によって発生した火災については補償されません

一方で、地震保険とは火災保険に付帯して加入するオプションのことで、地震に起因する下記損害については、地震保険を付帯させることで補償されます。

  • 地震
  • 地震による火災
  • 地震や噴火による津波

保険料の違いについて

火災保険については、損保会社各社によって保険料や補償内容の設定が異なりますが、地震保険については、政府と連携して被災者を補償する仕組みになっていることから、どこの保険会社を利用しても、保険料や補償内容に違いはありません

火災保険と地震保険の詳細については、下記のコラムで詳しく解説していますので参考にしてください。

何をどこまで補償?投資家が知っておくべき地震保険

火災保険と地震保険は不動産投資にも必要

自分が住んでいるマイホームについては、火災保険や地震保険に加入する人が多いと思いますが、賃貸物件についてはまだ加入していないという人もいるのではないでしょうか。

賃貸物件については、入居者が火災保険に加入しているから必要ない、と思っている大家さんを時々見かけますが、実は入居者が加入する火災保険と大家さんが加入する火災保険では、補償対象や補償内容が異なっていることに注意が必要です。

入居者が加入する火災保険については、入居者の家財補償と、大家さんに対する借家人賠償になるため、火災や地震によって建物自体がダメージを受けても補償されません。

それぞれの違いについては、下記2つのコラムで詳しく解説していますので参考にしてください。

不動産投資に必要?大家さんの火災保険[前編]

注目すべき3点!大家さんの火災保険[後編]

火災保険料の改定について

火災保険料については、地震保険料とは違い、損保会社各社で保険料に違いがあるのですが、今回の改正は保険料を設定する際の基準となる「参考純率」が引き上げられることで、値上げとなります。

参考純率とは、損害保険料率算出機構が算出している「純保険料率」のことで、保険会社各社から収集した大量の情報をもとにして、適正な保険料率を算出しているのです。

そもそも火災保険料の保険料率は、損害が発生した際の保険金に充てる部分にあたる「純保険料率」と、保険会社の必要経費に充てる部分にあたる「付加保険料率」によって決まります

今回の値上げで、純保険料率を算出する際の参考数値となる「参考純率」が、平均5.5%引き上げられたのです。

台風に大雪、保険料が引き上げられる理由とは

保険料の基準となる参考純率が引き上げられた背景には、度重なる災害による膨大な保険金が大きく影響しています。

前回参考純率が改定になった2014年以降、記憶にあるだけでもかなりの大きな自然災害が発生していますが、なかでも影響が大きかったのが、大雪と台風です。

関東の大雪で大打撃

大雪などの雪災による保険金の支出については、損害保険料率算出機構の調べによると、2006年から2009年まで年間で1億円を超えることはなかったのですが、2010年に1.5億円を突破すると、翌年には2.1億円まで膨れ上がりました。

そして、とどめとなったのが、2013年に発生した関東地方での大雪です。

普段から大雪に慣れている北海道や東北地方とは違い、大雪に対する備えが全くされていない関東地方が、東京都心で8cmもの積雪に見舞われたことで、2013年だけで12.9億円もの雪災による保険金が支払われ、参考純率の引き上げにつながったと考えられます。

東京大雪

意外に増えている水漏れ被害

大雪ほどではありませんが、徐々に増加しているのが水漏れによる保険金です。
支払った保険金の推移を見てみると、2006年の0.5億円から徐々に増加をはじめ2015年では年間で2.3億円にまで膨れ上がっています

このように、さまざまな保険金の支払いが増えていることが、保険料値上げの大きな要因なのです。

都道府県と構造で改定率が異なる

火災保険料の改定率は、建物の「構造」と存在する「都道府県」によって次のように異なります。

東京都と大阪府の改定率

例えば、東京都と大阪府の改定率は、構造ごとに次のように異なります。

東京都 大阪府
マンション構造(M構造) +20.4% +12.0%
耐火住宅等(T構造) +6.3% +1.8%
木造住宅等(H構造) +6.2% -2.6%

表で見るとわかる通り、実は必ずしも値上げとは限りません
都道府県によっては災害リスクが低く見られる場所もあるため、地域によっては10%以上下がるところもありますが、ほとんどは値上がりです。

マンションの改定率が高いのは、マンションにおける水漏れ事故の増加が影響しているといわれています。

保険料算出のポイントとなる5つの要素

実際に保険料がいくらに改定されるのかについては、次の5つの要素によって決まります。

  • 保険会社
  • 都道府県
  • 構造
  • 築年数
  • 補償内容

実際の値上げ幅は損保会社各社で異なりますが、大手4社の発表によると、全国平均で5~9%値上げする方針とのことです。
値上げのタイミングは、2019年10月からですので、詳しくは保険会社に確認しましょう。

後半 は、地震保険の改定と、保険料を安く抑えるためのポイントについて解説していきます。

あわせて読みたい

関東圏は地震リスクが高い!?保険料値上げについて

東京に仕事を求めてやってくる単身者増加中…不動産投資は、立地で決まる

棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

記事一覧