境界が曖昧だとリスク大!起こり得るトラブルとは
昔から土地の境をめぐるトラブルの話はよく耳にします。現代においても、国を超えての領土争い、個人レベルでは隣家との境界線のトラブル…など、土地の境界をめぐるトラブルはさまざまです。
では、自身の所有する土地やこれから購入しようとする土地について、境界トラブルが起きないようにするためには、どのような知識や対策が必要なのでしょうか?
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境界とは
そもそも境界というものについて整理したいと思います。
意外と知らない方が多いかもしれませんが、よくいわれる土地の境界には、「筆界(ひっかい)」と「所有権界」というものがあります。
「筆界」と「所有権界」はもともと一致しており、現在でも一致することが大部分ですが、長年の月日の中で、当事者間で土地の利用範囲の取り決めや交換がなされることがあります。
また、一筆の土地の一部を売買したにもかかわらず、分筆しないままになっているなどして、筆界とずれている場合があります。
「筆界」と「所有権界」が一致し、当事者の主張に食い違いがなければ問題ないのですが、境界についての認識が異なると、トラブルの原因になってしまいます。
境界の確定
では、境界を確定するにはどうしたらよいでしょうか。
筆界の場合
まず、「筆界」ですが、平成18年に、筆界をめぐるトラブルを解決するために「筆界特定制度」が導入されましたのでご紹介します。
「筆界特定制度」とは、土地の所有者などの申請に基づいて、現地において筆界を特定する制度のことです。
新たに筆界を決めるものではなく、調査の上、登記された際に定められたもともとの筆界を筆界特定登記官が明らかにします。
公的な判断として筆界を明らかにできるため、隣人同士で裁判をしなくても、少ない費用で筆界をめぐる問題の解決を図ることができるという特徴があります。
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所有権界の場合
次に、「所有権界」を含む境界問題全般について、土地家屋調査士会のADRというものがあります。
ADRとは「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年12月1日法律第151号)」に基づいて行われる紛争解決手続きのことをいいます。
簡単にいうと、所有権界等に関する紛争について、土地家屋調査士と弁護士が協働して、相談・調停などを行い、当事者間の話合いによる解決を進めるというものです。
通常の裁判とちがい、相談の受付から調停成立までに要する期間が6ヵ月程度と短いということがメリットです。
費用は比較的お手頃ではありますが、手続費用のほか、相談費用、調停申立費用、調査費用、鑑定費用などが必要になる場合があります。
また、ADRの場合、手続きをするためには相手方の同意が必須となりますが、相手方の協力が得られれば、裁判にまで持ち込まなくても、トラブルを解消する手段として有用かと思います。
不動産取引における境界
それでは、不動産取引の実務では境界はどのように考えられているのでしょうか。
当然、それぞれの筆界確定がなされていて、隣地所有者が所有範囲について、同じ認識であれば問題ありません。
また、その証として確定測量図を備えていれば理想的です。
図面にはいろいろありますが、確定測量図は中でも最も信頼のおけるものといえます。
これは隣地所有者(民・官)立会いのもとに土地境界を確定し、境界標を設置して測量したものになります。
その図面にはそれぞれの所有者が押印した「境界確認書」「官民境界証明書」などが添付されています。
土地の売買においては、売主は買主に対して、この確定測量図を提示し、実測面積をベースに契約数量を決定するのが望ましい形です。
確定測量図がない場合
しかし、確定測量図がない場合もあります。新しく作成しようにも、境界確認は所有者全員が行う必要があるため、相続などで土地の所有者が複数いる場合には、その所有者全員の承諾を得るのに大変な場合があります。
また、作成には時間と費用が必要になりますので、素早く売買をしたいというときには、確定測量図がない状態で契約が行われることもあるのが実情です。
特に個人投資家が購入するような物件では、実測面積ではなく、公簿面積(登記簿面積)に記載されている面積を採用して取引することが多々あります。
特に高利回りで成約までに足の速い投資物件においては、細かいことを言わずに素早く購入してくれる買主が好まれる傾向にあるためです。
その場合、仮に後日、正確な測量をして面積に増減が生じたとしても、代金の清算は行わないと約束していることが一般的です。
したがって、当事者は不動産の売買金額の決定には、この不確定な要素を十分リスクとして織り込んで、売買金額を決定しなければなりません。
境界をめぐりトラブルとなる事例
土地の境界が確定されずに取得した場合、後日トラブルになることがあります。
境界は、隣地同士の古くからの経緯があって、多少疑義があっても、曖昧なままに放置されてきたということがよくあります。
そして、所有者が変わった途端、これを良いチャンスといわんばかりに、境界線の位置について自分に有利な主張してくることが考えられます。
この場合、新所有者は、境界が未確定である状態ということを条件に契約しているため、瑕疵担保が免責事項になっていると、売主に責任を問えなくなってしまうことにもなりかねません。
また、ローンを組んで不動産を購入する場合、境界未確定の土地は資産価値が著しく低く、十分な担保として認められず、融資が受けにくいということも考えられます。
さらには次に売却しようと思っても、境界未確定というのがネックになり、新たな買主を見つけにくくなるというデメリットもあります。
したがって、境界未確定の場合には、将来思わぬトラブルが生じることもあるということを十分に認識しておく必要があります。
トラブルにならないために
土地の売買では、売主は引渡しまでに買主に対して境界を明示する義務があるとされています。明示の方法として、典型的な売買契約書では以下のような条文が入っています。
2. 売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、前項の測量図に基づく隣地との境界を現地において明示する。
ポイントは測量士または土地家屋調査士の作成した図面に基づき、境界を現地にて確認するというところです。
契約の条文に入っているにもかかわらず、図面が交付されていなかったり、現地において明示されなかったりする場合は、売主の義務が履行されていないことになりますので、契約の内容と一致しているかチェックが必要です。
契約前に、境界の明示について、どのような取り決めになっているかをよく理解しておくようにしましょう。
また、売主側のトラブル回避の手段として、売買契約書において、境界明示の特約を入れておくという方法があります。
確定測量図がないと買わないという買主に対しては、「引渡時までに隣地所有者の協力が得られない等、やむを得ない事由により売主が確定測量図を買主に交付できなかった場合には本売買契約は自動的に解除となる」というような趣旨の特約を入れておくことです。
確定測量は、隣地所有者の協力が得られない場合、長期に及ぶこともありますので、不履行の場合の損害賠償などの責任を回避するというために有用だと考えられます。
まとめ
土地取引において、境界の問題は最も重要な事項のひとつです。
境界が確定している状態で購入するのが一番ですが、もし、確定されていない場合には、想定されるリスクを十分に考えたうえで意思決定をする必要があります。
また、契約書の条文をよく理解して、後々のトラブルにならないように気を付けましょう。
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