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河川浸水被害対策の改正法案/不動産投資に影響は?

行政書士棚田 健大郎
河川浸水被害対策の改正法案/不動産投資に影響は?

日本の各地で豪雨などによる大規模な水災害が頻発する中、国会では「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案」が2月2日に閣議決定されました。

そこで今回は、当該法律案の概要と実務に与える影響について詳しく解説したいと思います。

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改正法案の概要

水災害から私たちの生活を守るために、次の4つのポイントについて改正されます。

ポイント1:流域水害対策計画

これまで市街化の進展によって河川整備で被害防止が困難な河川について「流域水害対策計画」というものを立てて対策を講じてきましたが、これに「自然的条件により困難な河川」についても計画の対象に追加することとなります。

また、流域水害対策計画の策定にあたっては、国、都道府県、市町村等の関係者が一堂に会して、雨水貯留浸透対策や浸水エリアの土地利用等について協議します。

ポイント2:氾濫をできるだけ防ぐための対策

河川の氾濫を防ぐための対策を強化します。
具体的には、利水ダムの事前放流の拡大の協議、下水道での浸水被害を防止するための目標降雨の計画的位置づけと整備、その他樋門等の操作ルールの策定の義務付けなどを規定します。

また、流域においては貯留機能保全区域を創設や都市部の緑地の保全、認定制度や補助、税制特例を活用した雨水貯留浸透施設の整備支援などが盛り込まれています。

ポイント3:被害対象を減少させるための対策(重要)

不動産投資の実務で最も影響する部分です。
水防災に対応した街づくりを推進するために、「浸水被害防止区域」を創設して住宅や要配慮者施設等の安全性を事前確認できるようにします。

また、防災集団移転促進事業のエリアを拡充することで、危険なエリアからの移転を促進すること、さらには災害時の避難先拠点の整備や浸水対策によって市街地の安全性を強化することなどが盛り込まれています。

簡単にいうと、水災害のリスクの高いエリアを明確にすることで防災意識を高めるとともに、移転を促進していくということです。

ポイント4:被害の軽減や早期復旧復興のための対策

従来の洪水等のハザードマップの作成を中小河川等まで拡大して、幅広い地域のリスク情報を明確にします。
その他、要配慮者利用施設にかかる避難計画・訓練などの実効性の確保などが盛り込まれています。

実務に与える影響

浸水被害防止区域

今回の法改正で今後住宅を建てる際には、その地域が浸水被害防止区域に指定されているかどうかの確認が重要です。
該当する場合は、住宅などの建築が許可制になるので、浸水リスクが高いエリアには今後家が建てにくくなる可能性が考えられます。

ということは、裏を返すと保有している物件が浸水被害防止区域に指定されると、物件価値に影響を与える可能性があるということです。

将来河川が氾濫して浸水被害が発生しそうな場所に関しては、今後建築許可がおりにくくなる可能性があることを考えると、土地としての利用価値は下がりますからそれが価格に反映される可能性は十分にあります。

不動産投資で注意すべき地形とは

浸水リスクの高い土地の資産価値が減少する可能性が出てきたことで、今後不動産投資で物件を探す際にも「水災リスク」を回避するための目線が必要になってきます。

過去の水災被害から、浸水しやすい地形として指摘されているものは以下の通りです。

  • 河川が合流する地域
  • 山を突き抜けている河川
  • 川幅が狭くなっている地域
  • 微高地に囲まれている低地

これらの地域では豪雨などが発生すると水災が発生しやすいので、不動産投資をする際にはこれらの地形に該当する場所は避けた方がいいでしょう。

賃借人にはハザードマップを提供する

浸水被害防止区域に指定されていなくても、過去に床上浸水した場所については今後もそのリスクがつきまといます。
浸水被害から賃借人の命を守るためにも、浸水リスクがわかりやすく記載されているハザードマップの提供は重要になってくるでしょう。

仲介業者が賃借人に重要事項説明の際に説明してくれているはずですが、不動産投資家としても室内にハザードマップを備え付けるなどの対策が求められます。
ハザードマップは役所の防災課で受け取れるほか、ホームページからのダウンロードも可能なケースが多いです。

まとめ

水災被害は気象の変化とともに規模が拡大傾向にあります。
不動産投資家としては、浸水被害防止区域を事前に確認して対象エリア近辺での不動産投資はできるだけ避けた方がよいでしょう。

また、既存賃借人へのハザードマップの提供なども検討することをおすすめします。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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