準防火地域の建ぺい率10%緩和へ/建築基準法改正
2018年6月27日に公布された「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」により、建築基準法が改正されます。
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2018年7月23日に開催された「改正建築基準法に関する説明会(第1弾)」で、より詳しい概要が発表されました。
この説明会の内容をもとに以下の2点に注目してご紹介します。
●接道規制の強化で重層長屋が建たない場合も?
そもそも、今回の建築基準法改正の背景には、
・建築物・市街地の安全性の確保
・既存建築ストックの活用
・木造建築物の整備の推進
という3本柱があります。
今回注目する建ぺい率の緩和、接道規制はともに「建築物・市街地の安全性の確保」の必要があるという背景から改正に加えられました。
これは、過去の大規模火災の発生を受け、建築物の安全の確保と、延焼を防ぐ建築物への建て替えなどをしやすくするための法律です。
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準防火地域にも「建ぺい率10%緩和」の枠が広がる
これまで「防火地域内の耐火建築物は、建ぺい率を10%緩和する」という緩和措置がとられていました。
しかし、改正後は現行に加えて「準防火地域の耐火建築物、準耐火建築物の建ぺい率を10%緩和する」とされています。
国土交通省「平成30年 建築基準法の一部を改正する法律 概要」
たとえば、準防火地域に準耐火建築物のアパート1棟を建てる場合、これまでよりも建ぺい率が10%増加することになります。
設計プランにも影響するでしょうし、建ぺい率の緩和により、収益性が向上する可能性もあるので、収益物件の土地や住宅用の土地を探している方には明るいニュースとなっています。
また、「防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の性能を総合的に評価する」という改正も行われます。
外壁や窓の防火性能を高めることにより、これまでと同等の安全性を確保するならば、防火・準防火地域であっても内部の柱などに木材を利用できるようになります。
梁の「現し(あらわし)」
つまり、今まで石膏ボードなどで覆わなければならなかった木の柱や梁は、木材をそのまま仕上げとして使用する「現し(あらわし)」設計ができる可能性があるので、意匠の幅が大きく広がることになるのです。
奥まった土地に建つ大規模「重層長屋」に規制
旗竿地や敷地延長と呼ばれる「路地状敷地」や「袋地状敷地」のような、細い敷地や道を通った先にある奥まった場所に、大きな重層長屋が建っているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
「長屋」とは共同住宅と違って廊下や外部階段などの共用部がなく、1階にすべての住居の玄関扉が並んでいる集合住宅のことです。
2階の住居用に個別に階段を設け、住居を縦に重ねることでより多くの居室を作ったのが「重層長屋」です。
長屋形式であれば共同住宅に比べて接道や避難経路の確保などの規制が緩く、「路地状敷地」や「袋地状敷地」のような奥まった土地であっても賃貸経営ができるというメリットがあります。
しかし、今回の建築基準法改正では以下のように接道規制が拡充されたため、これまでのように奥まった土地に大きな重層長屋が建てられなくなることも考えられます。
火災時等に避難が困難な「その敷地が袋地状敷地道路にのみ接する一定規模以上※の長屋等の建築物(一戸建ての住宅を除く。)」について、地方公共団体が条例で接道規制を強化できる制度の拡充を行う。(重層長屋への対応)
※延べ面積が150㎡超のもの。
現行では、旗竿地や敷地延長と呼ばれる「路地状敷地」の路地状部分については地方公共団体が条例で規制を強化できるとされていました。
しかし、今後は「袋地状敷地」、「路地状かつ袋地状敷地」が接する道路についても規制を強化できるようになります。
国土交通省「平成30年 建築基準法の一部を改正する法律 概要」
背景には、1棟あたり10戸以上の大規模な重層長屋が、奥まった土地に建っているケースが増えてきたことにあるようです。
国土交通省「平成30年 建築基準法の一部を改正する法律 概要」より作成
幅が2m~3mほどしかないような狭い接道部分を通らなければ大人数が避難できないため、安全性が危惧されているのです。
こうした接道規制がかかるかどうかは、地方公共団体ごとの条例により決まります。
これから奥まった土地に長屋を建てて不動産投資をしようと考えている方は、行政に問い合わせるなどして、事前にしっかりと調査をしたほうがよいでしょう。
建築基準法改正の施行はいつ?
今回、注目した2つの改正は、それぞれ以下のとおりです。
・「建ぺい率10%緩和」→1年以内施行
・「重層長屋への対応で接道規制を強化」→3月以内施行
2019年の夏前には、建築基準法改正のすべての運用が始まります。
法律や条例が変わると、予定していた賃貸経営ができないということも考えられますので、しっかりとチェックしておきましょう。
今後も、不動産投資に関わる部分の詳細が明らかになり次第、お伝えしていきます。
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