不動産投資コラム

不動産投資の売却…失敗事例と注意すべき点[後編]

行政書士棚田 健大郎
不動産投資の売却…失敗事例と注意すべき点[後編]

不動産投資において売却のタイミングがとても需要であることは、前半部分で解説したとおりです。
不動産投資の売却…タイミングと流れ[前編]

後半では、実際に売却する際の注意点や費用、よくある失敗事例について解説します。

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売却のときに気を付けること

物件を適切なタイミングで売却して、不動産投資を成功で終えるためには、売却に踏み切る前にいくつか気をつけなければならないことがあります。

ローン残債の確認

不動産投資ローンの返済中に売却する場合は、事前にもしくは決済と同時に一括返済をして、抵当権の抹消登記をする必要があります。

万が一、売却価格がローン残債に満たない場合、差額については現金で準備しなければなりません。

ローン残債を勘違いしたまま売買手続きを進めてしまうと、あとで取り返しのつかないことになる恐れがあるため、売却に踏み切る際には、ローン残債や繰上返済手数料などで、合計いくら準備しなければならないのか、正確に確認しておきましょう。

短期譲渡による高額な税金負担

不動産を売却して利益が出た場合は、利益(譲渡所得)に対して所得税が課税されます。不動産売却による所得税は、譲渡所得税と呼ばれ、不動産を所有していた期間に応じて、税率が次のように異なります。

短期譲渡所得・・・譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年以下
  所得税30% 復興特別所得税2.1% 住民税9%

長期譲渡所得・・・譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える
  所得税15% 復興特別所得税2.1% 住民税5%

このように、1月1日の時点で所有期間が5年を超えていない場合は、およそ倍の税金が課税されるため、できる限り5年を超えるまで待ってから売却したほうがよいでしょう。

売却時の利回りの重要性

物件が空室の状況で売却をしたい場合、家賃を下げてとにかく客付することを優先させるケースがありますが、実はこれは逆効果です。

投資物件はマイホームとは違い、売却時の「利回り」次第で価格が大きく変わってきます

利回りとは、「年間収益に対する物件価格の割合」のことで、投資物件の買主は、利回りをみて買付価格が妥当かどうかを判断しているのです。

例えば、売却希望価格が2,000万円だとして、家賃が9万円の場合と、8万円の場合でそれぞれ利回りを計算すると、以下のようになります。

  家賃9万円の場合:利回り5.4%
  家賃8万円の場合:利回り4.8%

ワンルーム投資であれば、買主は利回り5%台以上を望む傾向があるため、もしも家賃8万円で決めてしまった場合、売却価格を100万円ほど下げなければ売れない可能性が出てくるのです。

このように、空室だからといって焦って家賃を下げて満室にしても、実際は逆効果になるので注意しましょう。

売却時にかかる費用

売却時にかかる費用
売却するタイミングが来た時にスムーズに売却するためには、あらかじめ必要となる「費用」についても把握しておくことが大切です。

ここでは、不動産売却にかかる主な費用について解説します。

・仲介手数料
・抵当権抹消登記費用
・管理会社との解除費用
・印紙代
・消費税(課税事業者の場合のみ)
・繰上返済手数料
・譲渡所得税
・敷金の引き継ぎ

細かな金額については、個別の案件によってことなるため、事前に不動産会社に確認しておく必要があります。
目安としては、売却価格の5%程度を見込んで、費用を準備しておくようにしましょう。

売却の失敗事例

最後に、不動産投資における売却のよくある失敗例についてご紹介したいと思います。

ケース1:短期譲渡となりせっかくの売却益が税金に…

先ほども注意点として解説したように、短期譲渡か長期譲渡かについては、不動産投資における最終的な利益に、非常に大きな影響があります。

仮に、物件を売却して400万円の譲渡所得とした場合、税金に次のような違いが出てきます。

税金の比較

【短期譲渡所得の場合】
所得税400万円×30%=120万円
復興特別所得税120万円×2.1%=2.52万円
住民税400万円×9%=36万円
 合計158.52万円

【長期譲渡所得の場合】
所得税400万円×15%=60万円
復興特別所得税60万円×2.1%=1.26万円
住民税400万円×5%=20万円
 合計81.26万円

このように、5年を超えない短期譲渡となると、税金がおよそ2倍もかかるため、せっかく出た利益が無駄になってしまうのです。

ケース2:管理会社との契約内容の確認ミス

投資物件を売却する際には、現在管理を委託している管理会社との契約も解除しなければなりません。ただ、管理会社の中には解除するにあたって、高額な違約金や手数料を設定しているケースがあるため、事前に確認をしておかないと予想外の出費となります。

管理会社は管理解約を快く思っていないため、違約金や手数料が家賃の数ヶ月分など高額に設定されていることも少なくないので、事前に必ず確認をしておくことをおすすめします。

ケース3:家賃保証契約の解除ができない

家賃保証契約の解除を条件とする売買契約を締結した後で、管理会社に解除を申し出たところ、解除を拒否されるというケースがあります。
家賃保証契約は、管理会社が所有者から物件を一括で借り上げているため、賃借人と同等の法的地位があり、解除を拒否された場合は、引渡しまでに解除することは事実上難しくなります。

売買契約を締結してからこれらの事実が発覚すると、買主から契約違反による損害賠償請求をされる可能性もありますので、家賃保証契約している場合は、売買契約を締結する前に、管理会社が解除に応じるのかどうか、必ず確認しましょう。

まとめ

今回は、不動産投資において最も重要とも言うべき「売却」にスポットをあてて、解説してきました。

行き当たりばったりで売却のタイミングを判断すると、予期せぬミスや思い違いによって、予想どおりの利益がでない可能性があります。

重要なことは、今回解説した内容をすべて理解したうえで、「物件購入時点」において、できる限り詳細なシミュレーションを実施して、売却時期の目安を決めておくことです。
「綿密な計画性」こそが、必然的に売却を成功させる、一番重要な要素といえるでしょう。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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