不動産投資コラム

令和2年・地価調査/コロナ禍で地価3年ぶり下落

令和2年・地価調査/コロナ禍で地価3年ぶり下落

今回は、不動産鑑定士として、先日発表された令和2年の地価調査についてお話したいと思います。

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地価調査・地価公示とは

まず、地価調査というのは、国土利用計画法施行令に基づき、各都道府県知事が毎年7月1日における基準地の1㎡当たりの価格を調査し公表するものとされています。

要するに、全国のすべての土地の価格を調べて発表すればよいのですが、それは時間的にも費用的にも厳しいので、その地域における代表的な土地についての価格を公表して、土地取引などの指標にしてもらおうというものです。

また、地価調査と似ているもので、地価公示というものがあります。
地価公示は、地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が、一般の土地の取引価格の指標とするため、都市計画区域等における標準地を選定して、毎年1月1日時点の1㎡当たりの正常な価格を判定し公示するものです。
地価調査はこの地価公示の補完的な役割を果たしているといわれています。

ここで、注意しなければならないのは、いつの時点の価格かということです。
地価調査は毎年7月1日時点、地価公示は毎年1月1日時点の価格であり、半年の時期的なずれがあります。

今年の地価調査はとても注目を集めたのですが、その理由として、今回の調査には新型コロナウイルス感染症の影響が織り込まれているということです。
ちなみに前回の令和2年の地価公示では、この感染症が拡大していく前でしたので、まだほとんど価格に影響していませんでした。

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【調査結果】新型コロナが全国地価に影響

では、今回の地価調査の結果を見ていきましょう。
結論から申し上げますと、皆さんの予想される通りだと思いますが、全般的にいうと地価は下落傾向が鮮明でした。

「住宅地」「商業地」「工業地」などを合わせた全国の地価の平均は、去年を0.6%下回り、3年ぶりに下落に転じました。

用途別では商業地の全国平均が▲0.3%と5年ぶりに下落に転じています。
近年、外国人観光客の増加でホテルや飲食物販店舗が好調で、地価を押し上げていましたが、新型コロナの影響で一変、観光客の壊滅的な減少で売上は悪化しました。
テナント賃料をベースにした収益目的の物件では、賃料減額要請や、今後の先行き不安があり、地価の下落にもつながりました。

住宅地では全国平均で▲0.7%と、去年の▲0.1%から下落幅が拡大しています。
もともと下落していた地点も多かったですが、この新型コロナの影響で、都市圏でも、雇用や給料に対する先行き不安につながり、土地需要が冷え込んだものと思われます。

圏域別・用途別対前年平均変動率

国土交通省HP 令和2年都道府県地価調査「圏域別・用途別対前年平均変動率」

最大下落率9.3% インバウンド蒸発で打撃

次に東京、大阪、名古屋を中心とする三大都市圏の商業地の平均ですが、プラスを維持したものの上昇率は0.7%と鈍化しています。
プラスといっても、これは地価調査の対象となる昨年の7月から12月までのコロナ禍前の半年の地価が大きく上昇していたためです。
その後の1月以降の新型コロナの影響を受けた半年では大きく下げたところがほとんどですので、前半のプラスが若干残ったものにすぎないと考えられます。
一方、三大都市圏の住宅地の平均では、▲0.3%となり下落に転じています。

さらに、三大都市を除く地域を見てみると、商業地は▲0.6%、住宅地は▲0.9%という結果になりました。
外国人観光客が激減により、大きな打撃を受けた岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷の地点(高山5-5)では、▲9.3%と商業地の下落率トップとなりました。

下落率順位表(全国)

国土交通省HP 令和2年都道府県地価調査「下落率順位表(全国)」

1.三大都市圏とは、東京圏、大阪圏、名古屋圏をいう。
2.東京圏とは、首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町村の区域をいう。
3.大阪圏とは、近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域をいう。  
4.名古屋圏とは、中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域をいう。
5.地方圏とは、三大都市圏を除く地域をいう。

今回の地価調査の商業地の最高価格地はというと、東京都中央区銀座二丁目の地点(中央5-13)でした。1㎡あたり4,100万円と前回より5.1%も下がりました
高級ブランドが建ち並ぶ中央通り沿いで、こちらもインバウンド需要の減少が大きなマイナス要因となりました。

基準地価格高順位表(全国)

国土交通省HP 令和2年都道府県地価調査「基準地価格高順位表(全国)」

物流施設がある工業地、外出自粛と巣ごもり需要で上昇

このような状況の中、地価が比較的堅調だったのは、物流施設用地として、需要があるような工業地です。
新型コロナの感染拡大に伴って、人々は外出を自粛するようになる一方、ネット通販は好調であったため、巣ごもり需要が伸びました

物流施設の建設需要はまだまだ高いものがあります。
用地の取得を検討している事業者、投資ファンドはまだまだ多く、都心部に近い千葉県や神奈川県などでは、プラスの上昇率を記録した工業地の地点も多々見られました。

工業地の上昇率順位表(圏域別)

国土交通省HP 令和2年都道府県地価調査「工業地の上昇率順位表(圏域別)」

今回の地価調査の特徴は、何といっても新型コロナの影響が地価に大きく表れたことです。
同じ商業地であっても、一律で下落するわけではなく、飲食店やホテルなど集まるいわゆる繁華街といわれる地域や観光客を相手とする地域においては、外出自粛やインバウンド需要の減少を受けて、大きく地価が下がる傾向となりました。

しかし、商業地であっても、賃貸マンションなどが多い地域では、住居の家賃がすぐに下がるということは少なく、そこまで収益性に対する影響が大きくないと思われるため、下落の幅も小さかったりします。
地域や建物の用途によって、地価に大きな差が生じたというのが、今回の新型コロナの特徴ではないかと思います。

まとめ

状況は刻々と変化しており、新型コロナの第二波、第三波はあるのか、それによって、来年の東京オリンピックの開催はどうなるのかなど見通せない状況にあります。

また、今回の新型コロナによって、人々の考え方も大きく変化しました。
現段階では地価にはまだ大きな影響を及ぼしてはいないと思われますが、大都市においては、テレワークの普及により、オフィスの縮小の動きが一部では出てきています
一方で、会社に毎日通勤する必要のない業種によっては、地方に移住して働くという考え方も珍しくなくなってきています。
このあたりの考え方が一過性のものなのか、大きな潮流となるのか、地価に及ぼす影響について注目して見ていきたいと思います。

You Tube動画:「不動産鑑定士が解説!令和2年地価調査」はこちら

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堀田 直紀
堀田 直紀

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

不動産鑑定士試験合格後、民間最大手の大和不動産鑑定株式会社にて約11年間、収益物件をはじめとした鑑定評価業務に従事。平成29年10月、ミッドポイント不動産鑑定株式会社を設立。

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