なぜ不動産投資の営業マンは自分で物件を買わない?
不動産投資をする際、多くの方が不動産会社の営業マンから物件の紹介を受けます。
熱心な営業トークを受けているうちに湧き上がる
「そんなに良いものなら、なぜ営業マン自身が投資しないの?」という疑問。
もしかしたら、売っている側も買わないくらいのひどい物件を買わされそうになっているのでは…。
不動産営業は高収入だと聞くし、儲かるなら自分でやるに違いないのに…。
そう考えたことがある方も多いのではないでしょうか。
そんな疑問をぶつけるべく、現役の不動産投資営業マンに取材しました。
Aさん 40代・不動産業界歴23年
経歴/売買仲介・用地仕入れ・賃貸管理 転職4回、独立経験あり
Bさん 30代 不動産業界歴17年
経歴/売買仲介・賃貸管理 転職3回
なぜ自分でやらない?の答えは「買えないから」
─お客さんに「自分で不動産投資をやらないんですか?」と聞かれたことはありますか?
A「あります。そしてその答えは、簡単に言ってしまうと不動産営業マンは“買えない・買うのが難しいからやっていない”です」
B「この質問をする人は、まだ不動産投資の融資について分かってない、初心者に多いですね」
─不動産屋さんは、物件が買えないから、不動産投資をしないと。なぜ「自分でやらないの?」と質問をすると初心者に見られてしまうのでしょうか。
A「私はアパート一棟を持っていますので、みんなが絶対に買えないわけじゃないです。ただ、銀行からの見られ方、お金を貸しても回収できる人かどうか(属性評価)が違うということです。
それについて知らないからこそ出てくる質問なので、経験者ではないなあ、と思います」
不動産営業マン=銀行がお金を貸したくない人
─銀行の属性の評価方法を具体的に教えてください
B「ほとんどの場合、不動産を買うには銀行からお金を借りる必要があります。
お客さん側から見た“お金持ってそうだなー”という不動産営業マンの属性と、お金を貸す側の銀行から見た不動産営業マンの属性の、見方が違うんですよ。
極端に言うと、不動産営業マンは銀行から“お金貸したくない人”だと見られますね」
B「銀行は、とにかく“安定”が大好き。上場企業に勤めていて、安定してお給料が高い、お金も持っている、いわゆる“属性が高いサラリーマン” なんかに融資をしたいと考えます。
不動産業界は短期間で転職を繰り返すのも珍しくないし、今は年収が高くても、そのほとんどが歩合で稼いだとしたなら、来年どうなっているか分からない。
不安定な職業だと見られているから、融資のハードルが高いんですよ。
属性が高く評価されないと、お金を貸してもらえないので不動産投資はできません」
不動産営業マンが買うのは市場に出ない高利回り物件
A「不動産投資をする時には以下のように3パターンのローンがあると考えています。
不動産営業マンが使えるのは上の2つ。金利が低いプロパーローンは使えません」
B「さっき、なぜ自分でやらないか、という質問をするのは初心者に多いという話が出ましたが、この質問をする人は、物件を紹介しても買わない人が多いですね(笑)。
なぜなら、上の表で言えばどのローンが使えるのか、もしくはどれも使えないのか、自分がどこのポジションにいるのか分かってないからです。
反対に、自分が銀行から見ても高属性だと自覚がある人は聞いてこないですよ」
─高い金利での融資しか使えないとなると、買うならどんな物件が欲しいですか?
B「それなりに…というか、中古の一棟アパートとかですごい利回りが高い良物件でないと手を出しにくいですね」
A「一般の投資家が買うより3~4%くらい高くないとキャッシュが合わないんじゃないかな」
─やっぱり物件の“川上情報”は入ってくるんですね!
A「そういうかなり高利回りの物件情報はだいたいブローカーが持ってくるんですが、ブローカーだって不安定な商売なので、情報を売ることはできるけど自分では買えない。
さっき言ったように、不動産営業マンも買えない。
でも、不動産会社の社長が物件を買って、会社保有して2~3年回してから売却することはあると思います」
敵か味方か…不動産営業マンを見極めるコツは
─誰しもが投資で損をしたくないと考えます。損をしないためにはどうすれば?
A「知識があって、信頼できる不動産営業マンと出会うことです。
せめて最低限の投資分析ができて、効率性、安全性を把握しお客さんに説明できないとダメです」
B「一棟ものを売る営業マンはスキルがある場合が多いですよ。投資分析のほかに土地の権利関係や周辺調査もしますし。
逆を言えば、区分を売っている営業マンは知識がない人が多いです。
とにかく売れればいいという考えで、お金第一主義。若くて、宅建免許を持ってないことも多い。
ゆくゆくはブローカーになるか、知識がないままずっとその区分の販売会社にいるか、独立しても同じことを始めるパターンが多いのではないでしょうか」
物件を買う前にまず知識を
─物件を購入する際に気を付けることは?
A「買ったその月からマイナスでお金が出ていくばかりの物件を、本当に買っていいのか?持ち続けるとどうなるのか?将来売れるのか?考えたほうがいいですね」
B「不動産投資の知識がないまま、不動産営業マンに熱心にすすめられたから、買えるから買おうはダメです」
─ありがとうございました。
物件の“川上情報”を得ることができる不動産営業マン。
しかし、銀行からは歩合制で収入が安定せず、不安定だと見られることが多いため、実際は物件を買うことができない、難しいというお話でした。
投資家それぞれが、不動産投資の知識を増やし、信頼できる営業マンと信頼関係を築くことが、いい物件情報を手に入れる近道なのかもしれません。
不動産投資の営業マンがおすすめする「土地探しから始める不動産投資法」とは?