不動産投資コラム

投資物件は北向き?南向き?メリットとデメリット

2019/05/24
一級建築士遠田 将徳
投資物件は北向き?南向き?メリットとデメリット

一般的に、家を探している方には「南向き」物件が人気ですが、投資家から見ると、必ずしも「南向き」物件が良いとはいえません。
「北向き」物件の方が効率よく建築できる場合もあるのです。
その理由について建築士ならではの視点から解説していきたいと思います。

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そもそも「南向き」、「北向き」とは?

広告などでは「南向き」、「南面道路」など、似た表現が出てきます。
これらの解釈としては以下のようになるでしょう。

●「南向き」→部屋(窓)が南側へ向いている
●「南面道路」→敷地の南側が道路に接している
●「北向き」→部屋(窓)が北側へ向いている
●「北面道路」→敷地の北側が道路に接している

ちなみに、建築するときはさまざまなパターンが考えられますが、特殊なケースを除くと、以下の5つが住宅街で建てる場合の一般的なパターンになるでしょう。

①北面道路-北向き ②北面道路-南向き
③南面道路-南向き
④東西面道路-南向き ⑤東西面道路-東西向き

要するに、開放感、明るさを求めて道路側か南側に部屋を向けるのです。
※敷地が大きい場合は敷地内の空地へ向ける場合もあります。

このなかであえて言えば、マイホームとしての一戸建ての優等生は③でしょう。
庭もつくりやすく、緑あふれる住宅となります。
では、投資用物件の優等生は何番でしょうか。

その前に、建物を計画する際の法規制を、一部ご説明したいと思います。

建物にかかる3つの斜線制限

北側斜線制限、道路斜線制限、隣地斜線制限とは

斜線制限には、北側斜線制限、道路斜線制限、隣地斜線制限の3つがあります。
※高度地区という高さ制限を定めている地域もあります。

北側斜線制限は、住居系の一部の用途地域で適用があります。北側方向から発生する高さ制限のため、北側は高さが低い建物しか建ちません。基本的には、当該敷地の北側の住戸の日当たりを確保することが目的です。
そのため、高さ制限のなかでも、建物の形態に影響を与える厳しい制限となります。

道路斜線は、すべての地域で道路方向から発生する高さ制限のため、道路側の建物の高さが低くなります。

隣地斜線は、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域を除く用途地域で、隣地境界から発生する高さ制限です。

詳細はこちらの関連記事をご覧ください。

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効率よく建てられるのは北面道路物件

投資物件を建てる場合の、効率性に優れた優等生は①北面道路-北向きになります。
なぜなら、上記図のように、道路が北面にある事で高さ制限が同じ方向に揃うからです。
建物の南側の形態に影響がなくなるのがわかるかと思います。
※ちなみに斜線制限が重なったとしても、制限はおのおの影響します。建物の形態は一番厳しい制限の影響を受ける事となります。

このように土地を有効に使う(=建物を最大限に建築する)ことができるのは、法的な制限が同じ方角に揃うことが条件です。

北側道路物件が効率的な理由

敷地内の規制は斜線制限以外にもいろいろとあります。例えば、
避難通路(有効幅員現厳守)、周囲空地(有効幅員現厳守)、採光 など。

避難通路はアプローチの有効幅員確保
周囲空地は建物周囲の有効幅員確保
採光は窓方向からの一定の距離の確保
です。

そうすると、一戸建てでは優等生だった③南面道路-南向きはどうなるでしょうか。
敷地の北側には北側斜線、隣地斜線、南側には道路斜線、採光、避難通路等が発生します。
法規制のかかる方角がバラバラです。

これをできる限り同じ方向に揃えることができるのは、①北面道路-北向きとなります。
隣地斜線を除き、法規制のかかる方角が北側へ揃うこととなるのです。

point
どちらが大きく建てられる?

A、50坪/建蔽率60%/容積率300%/一種住居地域/北側接道幅員4m
B、50坪/建蔽率60%/容積率200%/一種住居地域/北側接道幅員6m

このような2つの土地があったとします。
一見するとAの方が容積率が高いため、大きいものが建てられそうです。

しかしながら、道路幅が狭いため、実際の容積率はAが160%、Bは200%となります。
また、斜線の制限も、日影規制も道路幅が広いほど有利となります。

「北面道路」+「道路幅の広さ」が効率性をアップさせます。

無理な南面道路プランはコストがかかる

建物コストでみた優等生はどれになるでしょうか。
まずは皆さんの家を想像してみてください。洗面脱衣室、お風呂、トイレはどこあるでしょうか。明るさの欲しい部屋を南に配置するため、どうしても水回りの明るさは後回しになります。
そうすると、どの道路の向きでも道路から一番遠いか、もしくは北側に水回りがくることが多いでしょう。
南面道路物件は、北面道路物件に比べて敷地内の配管は長くなり、コストがかかります。

また、南面道路は日当たりが良いがために、アプローチ部分の劣化も早くなります。
メンテナンスコストにも差が出てくるでしょう。

コスト面からみる優等生は、②北面道路-南向きが優等生になります。

ちなみに、玄関と大きい窓が南側に揃うことは構造的にバランスが悪く負担がかかる場合もあります。

ここまで効率面もコスト面も北面道路が優等生でしたが、ひとつ忘れてはいけません。
事業はあくまでも入居者があって成り立つものです。
北面道路物件がいくら効率よく建築できても、ある程度考慮が必要となります。
北面道路の北向き、南向きのメリットとデメリットを考えてみましょう。

北面道路物件の北向き、南向きのメリットとデメリット

【北向きのメリット】
・壁紙やフローリングが日焼けしにくい。
・投資用物件のターゲットとなる単身者ならば、昼間は外出が多いため影響が少ない(という考え方もあります)。
・窓から直射日光は入らないが、明るさの確保は可能。
 →一時的な直射日光よりも、日中をとおしての明るさ確保はしやすくなります。
・建物規模の最大化がしやすい。
【北向きのデメリット】
・南向きよりも家賃が下がる可能性あり。
【南向きのメリット】
・玄関を道路側へ向けることで南側にすべてのLDKや各居室を配置することが可能。
 →日中に自然の光が差し込む間取りが作りやすくなります。
 ※そのかわり、採光確保のため、南側に距離が必要となります。
・入居者募集の際に、多くの物件検索サイトで「南向き」条件をアピール可能。
【南向きのデメリット】
・日焼けなどにより、クロス等のメンテナンスをするサイクルが短くなる可能性がある。

まとめ

投資物件として北面道路物件は「土地の取得費用」、「建物の効率性(コスト性)」が非常に優秀です。
居室の向きを北向きにするのか、南向きにするのか、これは各土地の立地、入居者層により、最良の選択をして頂きたいと思います。

不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは

遠田 将徳

一級建築士

遠田 将徳

一級建築士

戸建住宅・賃貸住宅の新築、リフォームの見積り、外構工事と幅広く手掛け、許認可業務、実施設計、デザイン、コーディネートまで、建築に関わる様々な目線からの適切なアドバイスを得意とする。

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