不動産投資コラム

大地震発生!事前の対策と発生時に大家がすべきこと

行政書士棚田 健大郎
大地震発生!事前の対策と発生時に大家がすべきこと

第1回目では、不動産投資における地震リスクを知っていただくために、耐震基準を中心に解説しました。

第2回目の今回は、大地震が発生したときに大家としてまず何をしたらよいのか、また、どのような対策が求められているのか、さらには地震によって生じる損害賠償責任などについて解説していきたいと思います。

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大地震が来た際、大家としてすべきこととは?

新耐震基準を満たしている物件でも、倒壊はしないものの、ある程度のダメージは想定されます。
ですから、大地震が発生した場合に、大家としてどのような対処が必要になるのか、事前によく理解して備えておくことがとても重要です。

ここでは、大家として地震に備えて準備しておくべきことのポイントについて解説していきます。

スムーズな安否確認

大規模な地震が発生したら、自身の身の安全の確保はもちろんですが、大家としては居住者の安否確認を取ることが第一段階となります。

管理会社に管理を委託している場合でも、大地震の際には管理会社も営業をストップする可能性があります。

また、大家自身も地震発生で避難している可能性があるため、賃貸契約書や入居申込書を手元で確認しながら居住者に連絡することができません。
念のため自身の携帯電話には緊急時に備えて居住者の携帯電話番号や緊急連絡先を登録しておき、有事の際にはすぐに連絡を取れるようにしておくのもいいでしょう。

被害状況の確認

管理会社には建物全体の、居住者には室内の被害状況を確認します。
この際のポイントは、必ず証拠となる画像や動画を撮影することです。
画像や動画を撮影することで、工事業者の手配をスムーズにするほか、のちの保険請求の際にとても役立ちます。

幸いにも、最近ではスマートフォンが普及しているため、大家自身ですべての部屋を回らなくても、居住者に撮影しておいてもらうことができます。

また、地震発生から1ヵ月間くらいの間は、修理業者に依頼が殺到するため、すぐに修繕や復旧ができない場合もありますので、その辺についても事前に説明して理解と協力を求めましょう。

地震による大家の損害賠償責任

地震自体は大家に故意過失があって生じるものではなく、自然災害なので基本的には大家が賃借人に賠償する必要はありません

ただし、被害を防ぐために必要な措置を怠っていたり、地震後の措置が遅れたような場合については、内容によって居住者から損害賠償請求をされる可能性があるため注意が必要です。

MEMO
阪神淡路大震災で建物が倒壊した事例(H11.9.20神戸地裁 民二部)

地震によって建物が倒壊したことによって4名が死亡し、数名が怪我をした事案において、建物の大家に対して1億円を超える損害賠償が命じられています。
建物が非常に古く、建物が通常有しているべき安全性がない状態だったにもかかわらず、必要な措置を講じなかったことが、大家の落ち度として指摘されました。

このように、建物が危険な状態であるにもかかわらず、事前に耐震改修工事などを怠ると、大家の過失を指摘されて損害賠償責任が生じるリスクがありますので、十分注意が必要です。

外壁が剥がれて通行人が怪我をしたらどうなる?

地震による揺れの影響などで、建物の外壁が剥がれ落ちることがあります。
では、万が一外壁が通行人を直撃して怪我を負わせてしまった場合、大家として責任は生じるのでしょうか。

所有者責任に注意

建物の所有者は、建物の崩落や倒壊などが原因で他人に損害を与えた場合は、それを賠償する責任を負います。

これは「無過失責任」といって、所有者の過失の有無を問わないため、大家に落ち度がない場合でも、基本的には賠償責任が発生するのです。

ただし、地震などの不可抗力による損害の場合は、その建物を建築した当時の建築基準を満たしているような状況であれば、賠償責任は生じないというのが判例の傾向です。

また、建築方法や施工方法に問題があったような場合は、大家から建築業者や設計事務所に損害賠償請求をすることも可能になりますので覚えておきましょう。

まとめ

今回は、地震に対して備えておくべきこと、そして損害賠償責任について解説してきました。

大地震が発生したら、「居住者の安否確認」と「建物内外部の被害状況」を確認する

自身は自然災害なので、地震前の建物が「通常の安全性」を有していたのであれば、損害賠償責任は発生しないという傾向である

第3回目では、これらの知識を踏まえて、地震における火災保険や地震保険の適用範囲の問題などについて解説していきたいと思います。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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